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恋鞘当三本勝負・7

「梅之助、さま?」


 頭が追いつかず、固まるお十美の隣に立ったのは、貧乏御家人の見本のような昼行灯男。

 よもや、この男がどんでん返しを? 見物客の期待はいやでも高まる。


「大丈夫。怖くない」


 小さな声で、ほにゃんとお十美に笑いかけ、梅之助は静かに、けれどよく通る声で山三、お千花と相対した。


「そこの御仁、お千花のまことの許嫁は、私にござる。既に床入りも済ませた中。そうでござるな、お千花どの?」

「は?」

「なにィィィ!? いったい、どういうことだァ!」


 お千花の声が一段低くなり、名古屋山三がいかにも意外、といった驚きを叫ぶ。

 お十美が少しだけ傷ついた目をしたのを、一歩前に出ている梅之助は知らない。

 梅之助は悲しげに天を仰ぎ、嘆息した。


「非道いではないか、お千花どの。そなたは私に、お十美を殺せば三ツ葉屋は自分のものだと、贅沢な暮らしができると約束してくれたではないか。それが他にも男がいたとは……。不貞とは、どの口が言うのやら」

「え、ちょっと、なにを」

「貴様ァ! それは、俺がお千花と交わした約定、何故それを貴様が知っておるゥゥ!」


 山三の台詞まわしがちょっとうざい。

 梅之助は横のふたりに目を移す。 


「そちらの証人の方々、殺しを持ちかけた者、知り合いを食った者とは、まことにお十美でありましたか?」


 梅之助が話を振ると、ふたりは揃って考え込む。


「いや、三ツ葉屋の使いというだけで、お十美かどうかははっきりせぬな……」

「俺が聞いたのは、湯島の家で食われたってやつだ」

「湯島、とな? お千花、そなたが追い出されて住んだという家も、湯島ではなかったか?」


 山三がぐるりと首を回し、お千花を見下ろす。

 どんでん返しが始まるぞ。見物客がわくわくと固唾をのんだ。


「ゆ、湯島に何件、家があるのよ。私の家とは限らないでしょ。ねえ山三さま、私は貴方と、来世も誓った仲じゃない。信じて下さらないの?」


 取り巻く空気が変わってきたことを察し、お千花は憐れみを得ようと山三の腕に胸の膨らみを押しつけて、くねくねしだす。


 お十美の許嫁たちは、お十美暗殺の白羽の矢を立てられただけで、懸想のケの字もないと知ったお千花は、母に聞いていた名古屋山三を訪ねた。

 自由気ままな旗本の三男という身分、剣術道場主の引き締まった体躯に、お千花は舌なめずりをして色を仕掛けた。

 寝所でお千花は涙ながらに、腹違いの妹が自分を殺そうとしているのだと、嘘の境遇を吹き込んだ。気の良い男だった山三はすぐに信じた。


(もうすぐ願望が叶う。大店のお嬢さんにふさわしいのは、この私)


 お千花は山三を担ぎ上げ、お十美に醜聞を着せて引きずり落とすことにした。これだけの見物客の前で、恥をかかせてやる、と。

 ひし、と山三がお千花を抱きしめる。


「信じる。信じるとも、お千花! そなたの美しい心も体も、隅々まで知っておるのは俺ひとり!」

「いいえ、私も知っております。そなたのことは、黒子の数まで忘れられぬ」

「俺の知り合いが言ってたぜ。その湯島のあばずれ女は、右太ももに」

「黒子がみっつ」


 男らの声が綺麗に揃う。


「きゃあっ」


 お千花が悲鳴を上げた。

 山三が素早くしゃがみ込み、お千花の裾をがばりと捲り上げたのだ。

 月明かり、むっちりと白い右太ももには、賽の目みたいに黒子がみっつ、並んでいた。

 もう少し、あと少しで秘仏開帳。見物客の雄叫びも飛ぶ。


「ぬおおお! よもや、よもや不貞の証拠がこんなところにィィィ!」


 山三がうざい。

 急いで裾を閉じたお千花は、憎々しげにお十美を睨みつけた。


「ひどいわ、お十美さん! 思い通りにならないからって、私にこんな辱めを!」

「あんた頭おかしいの? やったの私じゃないわ」


 当然ながら、お十美が許容するわけがない。言いがかりをすっぱり撥ねつける。


「あたま……っ!? あ、貴女の脚にも黒子くらいあるわよね! 脚、見せなさいよ!」

「いいわよ、どうぞ」


 一瞬、梅之助は止めようとしたが。お十美はその手で着物の裾をたくし上げる。

 黒子ひとつない、真っ白な太ももであった。

 お十美は片足でくるりと回ると、まっすぐ顔を上げ、見物客に片目をつむる。


「お代は、見ての帰りでねっ」


 「いいぞー」「よっ、千両役者!」客から笑い声と拍手、おひねりが飛んだ。

 せっかく用意した舞台で、自分を憐れまない客の方にお千花の怒りが向かう。


「あんたたち、どっちの味方よ! 私の方が大店を継ぐのにふさわしいのよ。三ツ葉屋のお父つぁんがそう言ってくれたんだから。なのに、この女の始末をモタモタしてるから、私がこんな目にあってるんじゃない!」


 ……ん?

 さすがの見物客も気づきはじめる。

 これ芝居じゃなくて、本当の話なのか?

 ざわめきが広がる前に、


「まあまあまあ、お嬢さん、危のうございますよ!」


 芝居見物の輪の中に、場違いな女の声が割り込んだ。決闘に置いてけぼりをくったお兼である。

 山三に呼び出されて、お十美はひとりで池之端に来たのだ。決闘とは思っていないので、お兼にも知らせずに。

 あわてていたお兼は、お十美にすり寄ると猫なで声で肩を抱く。


「見届けはお兼にお任せ下さいといったでしょう。お転婆がすぎると、旦那さまにいいつけますよ?」

「お兼……」


 味方を得たと思ったお十美だが、対岸の娘がそれを許さない。


「おっ母さん、なんでその女の味方してんのよっ」


 騒ぎの中心にいる顔に、お兼がぎょっとする。何故、お千花がお十美の許嫁と一緒にいるのか。

 しかしお十美を騙しぬくためには、お千花をかばうわけにいかない。


「お、お前は何やってるんだい、こんな人前で! 三ツ葉屋のお嬢さんに危ないことさせてないだろうね?」

「危ないですって? こいつらに金をちらつかせて、お十美を殺させようって言ったの、おっ母さんでしょ! さっさと片づけないから、私、この女に辱められたのよ!」

「この、馬鹿娘っ」

「なによ鬼婆(おにばば)っ」


 手弱女(たおやめ)の仮面がボロボロ剥がれ落ちてゆく。企みが露呈した女ふたりが罵り合う滑稽なさまに、見物客は手を叩いて大笑いである。


「あいや、あいやしばらく!」


 山三が聞こえよがしに叫ぶ。


「上野広小路、薬種問屋三ツ葉屋のォ、娘の命が(あたい)千両。しがねェ恋の情けが仇。さればお千花の首を取り、泣いて懐を肥やすとしようかァ」


 わあっと客が沸いた。


「ちょっと、嘘でしょ……」


 耳を疑う母娘をよそに、


「いやいや待たれよ。その千両、私のものでもあったはず」


 すかさず梅之助が反論する。


「これは失敬!」


 山三がぺしりと額を叩き、すらり、刀を抜く。

 その口元は愉悦を描く。

 が、刀はお千花を向いてはいない。


「どちらがお千花を討ち取るか。まずは、そなたを倒さねばのう!」

「勝てば千両、恨みっこなし」


 お十美を下がらせ、刀を抜いた梅之助の眼は、昼行灯が妖しげな輝きを増す。


「いざ勝負!」


 命がけの猿芝居が始まった。

 正眼に構え、ひと呼吸置いて両者が駆ける。

 (ぎん)、と。月下に火花が散った。

 切り上げ、切り返し。

 足元を払い、払い返し。

 跳び、吠え、薙ぎ、打ち落とす。

 十五夜の灯りが二振りの軌跡を、蛍の飛び交うごとく宙に刻む。

 「ひいっ」と腰を抜かすお兼の鼻先を、山三の切っ先が掠めた。


「退け、馬鹿者っ!」

「どっか行って、お兼さん」


 愉しみを邪魔するな、と言いたげだ。

 見物の輪がどんどん広がる。曲芸を披露していた一座のお囃子が、軽快な三味線と鐘で果たし合いに華を添える。

 音曲が盛り上がり、歓声も沸き、その最高潮で。


「!」


 両者ともに、刀を弾き飛ばした。

 見物客の方へと飛んだ刀は、不破伴左衛門が払い落とし。もう一方は……


「いやああっ」


 お千花の脳天に刺さる直前に梅之助が鞘で叩き落とし、黒子の並ぶ脚の間にざくりと突き立った。

 しん、と静まる見物客。山三が満足気に、にやりと笑う。


「引き分けかな?」

「そのようで」


 梅之助も笑って応じると。


「十手持ちが来るぞっ」


 誰かが叫んだ。往来での真剣の決闘など、ご法度中のご法度である。それを手を叩いて喜んでいる者も、厳しく詮議される。


「それ、逃げろおっ」


 豆をばらまいたように、わあっと見物客は散っていった。ほろ酔い客は屋台の陰に、若い男女は弁天島に。

 お千花とお兼は腰を抜かして動けない。

 もはや客から忘れられた母娘を、梅之助は見下ろし、低く冷たく、呟く。


「お逃げなさい。私の刀は、たとえ女でも外道を斬ることを迷わない」


 金の力も色仕掛けも、この侍には通じない。

 万策尽きた母娘は、お十美を睨むのも忘れて湯島の家の方へと消えた。




 興奮さめやらぬ見物客にまぎれ、名古屋山三は池之端を離れる。

 何とも気持ちよい茶番劇であった。ほくほくと、得をした感さえある。


「うむ、やはり、喧嘩は真剣に限る」

「目黒のサンマか」


 山三に肩を貸し、呆れを滲ませながら歩くのは、不破伴左衛門である。

 致命傷こそないものの、裂傷は山三の総身に及んでいた。加えて疲労である。もう足が上がらなかった。

 共にお十美の許嫁として名を知ってはいたが、対面したのは初めてである。


「よく生きていられたものだ。おぬしら、本気であっただろう」

「茶番に付き合うかわりに、真剣の勝負がしたいと条件を出したのは、俺だからなァ」


 お十美の許嫁に決闘を申し込んだ男の知り合い、という近いんだか遠いんだかの男は、お十美の家をぎゃふんと言わせたい、と助力を願ってきた。

 派手な赤い蛸の着流しを纏うそのチンピラは、


「まあ、あいつには勝てねェと思うぜ。俺らの(うなぎ)がかかってるんでね」


 と、自信たっぷりに言ってのけた。

 鰻の意味は分からんが。

 そうまで言われたら、真剣勝負したくなるというもの。ついでに飲んで語って意気投合した。

 お千花と来世を誓ったが、そういうことならまあいいか。

 山三はからからと笑った。


「いやあ、旨い酒と面白い男と、カモネギ女に、楽しい喧嘩もできた。俺ばかりこんな良い目を見て、罰が当たりそうだのう」

「まったくだ、俺は木刀で我慢したというのに」


 伴左衛門が苦笑する。

 彼への報酬は、梅之助に渡された『本当に効く傷薬』だけだった。


「千住の侠客……じゃなくて医者の、弟子が作ったものです。効きますよ」


 自分のじゃないのか、という言葉は飲み込んで、色々察した。彼らの背後にいる者も。

 とりあえず、もらった薬を使うべき奴がここにいるわけだが。


「薬を塗ってやりたいが、ここでは駄目だな」

「出会い茶屋ばかりだしのう……」


 男と女が忍び合う、それが池之端、恋の町。



「梅之助さま、良かった! 大丈夫?」

「ああ、大丈夫、大丈夫」


 かけ寄るお十美に手を振って応える。

 早いところ場を離れたいが、走れる元気は心もとない。梅之助はその場に尻もちをつき、肩で息をしていた。爽快な疲労ではある。

 山三と同じく、着物の破れも傷も全身に広がる。

 何から聞いたらよいものか、お十美は混乱の中、口をひらいた。


「私、……殺されるところだったの?」


 ぽつりと、声が落ちる。信じられない、信じたくないとその声は震えていた。


「お兼に……」


 その娘と、自分の父親にも、なのだが、それは知らなくともよいことだ。

 梅之助は何も言わない。


「ねえ、梅之助さま……」

「ん?」


 お十美は震えをこらえ、胸の前で手を握りしめてすがるように男の名を呼ぶ。


「梅之助さまは、これからも、私のそばに――」


 必死なその声を、


「梅っ!」


 もうひとつの必死な声が、さえぎった。

 梅之助が顔を上げると、今にも泣きそうな顔で家主と番犬が駆けてくる。

 これは、心配されるな。ほにゃんと、弱々しくほほ笑んで迎えた。


「せっちゃん、汚れるよ」

「そんなことはいい、無事でよかった……!」


 刹那は膝をつき、懐の傷薬を取り出すが。


「薬はあとだ、逃げるぞ……って歩けねェか! そりゃそうだよな!」


 証人その二、こと弥九郎が、急いで屈んで背を向ける。背負って走るつもりだ。

 この人たち、誰?

 お十美は梅之助が連れて行かれる状況に、焦る。いま別れたら、もう会えないかもしれない。


(そんなの嫌。せっかく、お嫁に行きたいと思える人に、会えたのに)


 けれど、そんなお十美の思いを、静かな怒りに染まった声が切り裂く。


「貴女が、梅之助を巻き込んだお十美さんですか?」


 普段の刹那が、初対面の女にかける言葉ではない。人見知りの彼は、患者病人でもない者には、こんなにすらすらと言葉は出てこない。

 お十美は驚いているが、弥九郎も梅之助も、饒舌な刹那を止めはしなかった。


「貴女の置かれた境遇には、同情はします。ですが、貴女のしかけた果たし合いで梅之助が命を落としていたら、貴女は俺たち家族に何と言い訳をするつもりだったんですか?」

「――え……」


 傷だらけの梅之助を見て、お十美は安心していた。「良かった、無事だ」と。

 違った。生きていたことに安心する前に、怪我を心配するべきだった。

 自分が幸せになることしか考えていなかった。

 そもそも自分が巻き込まなければ、梅之助はこの場にいるはずもない。怪我をする理由もない。

 梅之助は、木刀での決闘にこだわった。伴左衛門はその意図を理解し、葛城丹前は真剣を使う理由を絶ち。名古屋山三には条件を出されたため呑まざるを得なかった。

 どちらかの命が果てるまで戦う、勝った方も念願叶ったとして腹を切る。だから果たし『合い』なのだ。

 武士は主君のために死ぬべきであり、私怨での決闘を禁じられている。

 見届け人は、双方が最期まで堂々と戦ったと、卑怯も何もなかったと証明する。それで初めて私怨ではなく、まことの武士のいくさであったと認められる。

 赤の他人のお十美のために、梅之助はそれをすべて背負ってくれたのだ。


「貴女は梅之助と心中する覚悟でもありましたか」

「い、いえ……」

「真剣での決闘なら梅は三回死んでるんだ!」

「せっちゃん、そこまで」


 歯止めが利かなくなっている刹那を、梅之助がたしなめる。

 大切な人を失う恐怖は、刹那を最も苦しめる。避けられる喪失だったなら、なおさら。

 お十美は何の言い訳もできない。自分が心の底では、梅之助を『貧乏御家人の冷や飯食い』と、彼の命を軽く見ていたのだと思い知った。

 申し訳なさ、恥ずかしさがないまぜになり、お十美は目を潤ませる。

 弥九郎が軽々と梅之助を背負い、お十美の望みを静かに断ち切った。


「鰻はご馳走さん。二度と(つら)見せんな」




 十日ほど雲居屋敷で療養するあいだに、梅之助の耳にも三ツ葉屋のことは届いた。

 池之端での三文芝居で名を売った三ツ葉屋又八郎は、店の金を持って姿をくらました。

 お兼母娘の姿も消えた。湯島の家も引き払い、どこかへ逐電したらしい。

 お十美は二十近く齢の離れた番頭と夫婦(めおと)になり、評判の落ちた三ツ葉屋を継いだ。金使いを改め、女将修行に精を出しているとか。


「あの小芝居の噂が広まって、親身になってくれる問屋仲間ができたという話だ」


 と、見舞いにきた伴左衛門が教えてくれる。


「山三さまのご様子は?」


 義姉に床から上がることを止められている梅之助は、布団に身を起こして尋ねた。


「すっかり本調子だ。そなたの言っていた千住の医者に連れて行ったが……治療そっちのけで、果たし合いのことを根掘り葉掘り訊かれて、参った。あれは本当に侠客か?」

「兄弟子たちがすみません」

「佐治どのが一番だった」

「先生もすみません」


 ほにゃん、と苦笑いする。

 床上げしたら一緒に呑もう、と約束を交わし、伴左衛門は去った。去り際に義姉にできたての梅酒を持たされて、いたく感激しながら。

 おそらくもう会うこともないだろうが、お十美は店を守ってゆくだろう。

 放蕩娘の頃から仕えてくれていた奉公人たちがいるのだ。みっちりしごかれて、良い女将になってくれればいい。

 迷惑だったが憎さはない。よい喧嘩友達もできたことだし。


「さてと」


 梅之助はこっそり縁側に出て、塀の外をうろうろする頭に声をかける。


「何かご用なのではないのですか?」


 びくっとした。


 隠れきれていない頭はなおも逡巡したあと、


「俺は、認めぬからな!」


 名乗らぬまま、要件を伝えることにしたらしい。


「何をです?」

「お前が医者になるなど……あ、怪我は無事か? ……無事なんだよな、よかった。……だから、お前が医者になどなったら、俺は医者に剣で負けたことになるではないかっ」


 そう言われても。

 ふふ、と梅之助が笑うと、塀の向こうでは憤慨の様子。


「俺が心配してやってるのに、笑うな!」

「私を殺そうとした人に心配されるとは思わなくて」


 ぐ、と潰れた声がした。

 関わり合いになどなりたくないだろうに、わざわざそんなことを言いに来たのか。誠実なのか嫌みなのか、よく分からない。


「湯島の調べものは大変役立ちました。ありがとうございます。仲間も褒めてましたよ」

「あ、あの程度のこと、お茶の子さいさいよ! いつでも頼ればよい!」

「医者仲間が」

「医者は許さーん!」


 奥野桂馬は、すうっ、と息を整える。


「お前は、俺が認めた、剣術の師なのだ! 果たし合いも見事な手並みであった。医者になるなど認めん。我が雷帝鬼神流の看板を背負い、俺と共に江戸で一番の道場を作ろうではないか!」

「お断りします」

「遠慮するな、お前は俺の心の友だ!」

「お断りします」


 にこやかな中に断固とした拒絶を含むのを、はたして奥野桂馬は感じ取ったのか否か。


「義姉上、一日も早く深川に行かせて下さい。これこの通り、傷も癒えましたので」

「駄目ですよ。まだ包帯が取れないでしょう?」

「耳が病気になりそうです……」


 梅之助が音を上げて深川に逃げるまで、桂馬の勧誘は続いたのであった。


思ったより長くなってしまいました。

やってみたかったんですよね、断罪イベントからの断罪返し(と言っていいのか?)。楽しかったです(笑)

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