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ロックンロールレイズデッド  作者: 和田四季
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イントロ

初投稿です。コメントいただけると嬉しいです。次回から前書きで、キャラ紹介をしようと考えています。

-地竜島 フランクのダンジョン 20層-

 両腕を肘から失った青年は目から涙を流しながら懇願する。

「ルティ…俺も連れてってくれ」

 その願いを叶えるために、装備していた剣を両手で持った。

 「……一緒に行こう、レンド」

 親友の胸に剣を突き立て、体重をかける。刃は骨で(つか)えることなく心臓に達し、施されていた魔法が速やかに命を奪った。



 遥か昔、魔法は願いを叶える力として現れた。

 "願いを叶える"とは言っても、魔力には個人差があり、食欲を満たす程度の者から、不老不死になる者まで様々であった。

 "他者の命を奪う事"これが魔力を強くする方法だと知れ渡ったことで、人類は戦うための魔法を身に着け始めた。"人"と"人"とが争う時代が訪れると思われたそんな時、"竜"と"魔物"が誕生した。

 竜と魔物、ともに姿形は様々で、竜は魔物を生み出し、魔物は人を襲った。魔物は人を殺め、魔力を奪うことで強くなっていったため、人類は"個"の力ではなく、"全"の力を磨くことにした。"人"と"人"と"魔物"が争う時代となり、いくつもの国が誕生と滅亡を繰り返した。



 "ベルズ"は直径約4000kmの円形の島国で、約全長約3000kmの巨大な竜が巻き付くように隣接する、竜が動きを見せることは無かったが、あまりにも大きいその竜は恐怖の象徴であった。生み出される魔物は国に被害を与え、繰り返される戦闘で、ベルズは急速に力をつけていったが、脅威の根本たる巨竜に歯が立たなかった。そこで、ベルズは王に力を集中することにした。私利私欲に目がくらみ暴走してしまうことが無いように王の心を砕く魔法が作られ、跡継ぎのいない者、罪を犯した者、願い出た者、その命を王が奪い魔力を高め、先王は次王へと力を託した。15代目の王にして遂に竜殺しの魔法が完成し、それが放たれた。巨竜を討ち取り、国から脅威が去ったのは束の間であった。

 興奮冷めやらぬベルズに新たに5匹の竜が飛来したからである。それぞれ、1000kmを超える竜の色は"赤"”青””黄””緑”"茶"でベルズを取り囲むように陣取った。対応の遅れるベルズに向けて青き水竜の放つ水流の魔法で津波が起こり、黄の雷竜は放電、赤き炎竜は放火の魔法を放った。凄まじい爆発が大地を穿ち、巨竜の力を得た王の守護の魔法を以てしても守ることができたのは国土の半分程度であった。続けて緑の風竜が嵐を呼び、残る地竜が大地を隆起させることで島の地形を変えてみせた。

 勝ち目の無い相手の襲来に対し、ベルズは遅延、脱出を試みた。王と国民の半分の命を使うことで5匹の竜の動きを封じる魔法を使い、残りの国民を異大陸へ逃がすのだ。命の選別が速やかに行われ、魔法は速やかに放たれる。時を同じくして5匹の竜は人類に呪いをかけた。竜は首を垂れ、活動を停止した。

 かけられた呪いは人類の魔法を変質させるものであった。力は竜に対応した5つの属性に限られ、力の開放に段階が設けられたのである。

 竜は停止したが、その体からは魔物が生まれ、脱出する人々を阻んだ。人々は魔物の発生地を"ダンジョン"と呼び、ベルズ跡地に留まる者と、竜に移り住むものに分かれ、数千の時が流れた。



-地竜島 フランクの村-

 刃の短いナイフを二つ腰にさし、背に盾を装備した背の高い"地竜人(ドワーフ)"の青年レンドは僕の肩に手をのせて、力強く言う。

「ルティ、今日の探索は20層まで行こう!」

「僕たち4人で、まだ18層までしか行ったことないし、急に2層も進めるのは危ないんじゃない? それに、レンドとアミの結婚式、来月だよね? あんまり無理しない方がいいんじゃないかな?」

「だからこそだよ! いろいろ費用がかかるからな、稼げる今の内に稼いどかないと!」

「アミはなんて言ってるの?」

「……まだ話してない」

 レンドは視線を逸らしてボソッと呟く。

「じゃあ、まだ決められないね」

(…確かに式には費用が掛かるって聞くけど…20層が危険なのは間違いないし)

「頼む! めっちゃいい式にしたいんだよ。…ルティ、頼むよ。 20層のレアメタルリザードで資金集めさせてくれ」

「う~ん」

 ルティがレンドが知り合ったのは5年前、姉のリュディと雷竜島から地竜のフランクの村へ逃れてきた時だった。姉と暮らしていた家の近くに住んでいたのがレンドで、種族の違いで浮いていた10歳のルティをよく遊びに連れ出してくれたのだった。

 突然、後ろから声がかかった。

「自分は賛成だよ」

 両腕に盾を装備し、腰に大槌を備え、金属の鎧を身に着けた背が低い"地竜人(ドワーフ)"の男リバウィンだ。

「私は反対、別に派手な式じゃなくていいもの」

 大きな杖を装備し、巫女装束のような装備を纏う赤い髪の"地竜人(ドワーフ)"の女アミは反論する。

「というか、パーティーメンバー全員に相談しなさいよ」

「でも! 絶対いい式にしたくっ「そもそも、いい式って何? お金を掛けたらいい式になるっていうわけ? 見え張るために大怪我なんてしたら元も子もないじゃない」……………」

 アミがレンドの言葉をさえぎって言った。

「ごめんなさい」

レンドは涙目でヘナっとしている。…リバウィンは息を殺して、何も言わなかったことにしようとしている。

「じゃあ、今日は15層までにしよう。まだ1ヶ月以上あるんだし着実に稼ごう。みんな、装備の準備はできてる?」

装備の点検を終えた僕はみんなに呼びかけ、ダンジョンへと向かうことにした。


-地竜島 フランクのダンジョン -

 ダンジョンは竜が魔物を産み出す器官だ。竜の体に点在している地下洞窟で地上には複数の入口がある。魔物は互いに殺し合うことでさらに力を増していくため、出入り口から遠い下層の魔物の方が強い傾向があり、冒険者を束ねるギルドが階層に合わせて適正レベルを設けている。


 前衛担当はリバウィンだ。剛体化の魔法が使えて、防御力が高く、金属の装備は大きな音を立てるので、敵を引き付けてもらう役割がある。中衛はレンドとアミが担当している。レンドは力を強める魔法と加重の魔法が使える、このパーティで唯一の"Lv.2"なので、状況に応じて攻撃と守りのどちらの役割もこなす。アミは特に魔力操作がうまくて、"地竜人(ドワーフ)"特有の地属性の攻撃魔法を使える。足元から杭状の岩を出現させることができるので攻撃と足止めが役割だ。後衛が僕で、パーティの指示と背後の警戒と支援が役割だ。村で唯一の"雷竜人(スピリット)"である僕は雷の魔法が使えるけれど速度支援の魔法なので攻撃には使えない。

「俺たちももう10層までは余裕だな。やっぱり20層まで行ってもいいんじゃないか? 俺、"Lv.2"だし、ギルドも20層の適正はレベルは1~2って言ってるし!」

 レンドはエッジウルフにナイフを突き刺して言う。

「レンド、後ろ!」

 エッジウルフ2匹が背後からレンドに迫っているのを確認し呼びかける。

「調子に乗るな、バカ!」

 岩杭がレンドの真後ろに発生し、エッジウルフを貫通する。

「レンド、気を抜かないで。」

「あたしより先に死ぬの…許さないから///」

「あっうん///」

 すこしむかつく。

 エッジウルフの鋭い牙を剝ぎ取って、袋に詰める。武器やナイフに使われるので換金ができるドロップアイテムだ。

「休憩にしよう」

「賛成」

 3つの道が交わる広間で退路を確保し、2人ずつ休憩をとる。ダンジョン内は竜の魔力の影響でほんのりと明るく。足音が良く響くので、歩行系の魔物の発見が容易だ。特に1~15層の間では飛行系の魔物はほとんど生息しないため15層までがLv.1の適正となる。

 大の字に寝そべったリバウィンがぼやく。

水竜人(ウォーシャ)といえば殺人魔法のイメージがあるけど、どうやら回復の魔法を使うやつもいるみたい。便利だよなぁ回復」

「へぇ、確かに便利ね回復できたらずっとリバウィンが壁役できるものね」

 アミはニヤついて答える。

 確かに、水竜の人たちは人間の水分に直接干渉する殺人魔法が有名で、回復できるのは意外だった。

「まぁ、最強はアレンさんだけどな。なんてったってLv20だし、攻撃も支援も回復できるってんだから。 同じ地竜人(ドワーフ)として誇らしいぜ」

 レンドがドヤ顔で言う。

「確かにすごいよね。アレンさんの回復魔法、千切れた手足も生やせるらしいよ。生きてさえいれば治せるって」

アレンさんは地竜で活躍する冒険者だ。フランクの村出身で、このダンジョンの最高到達記録を持っている人だ。パーティーの平均レベルも18で、間違いなく最強のパーティーだと思う。

「全員Lv.1の時に24層まで行ったらしいぜ」

「……僕たちは、行かないよ」

 釘を刺しておく。

 探索を再開して、順調に15層まで到達する。魔物の鳴き声や足音が10層と比べると明らかに多い。戦闘しているような音も聞こえてくる。

 ダンジョンを進んでいると、突然聞いたことのない鳴き声が背後から聞こえてきた。甲高い複数の鳴き声がすごい勢いでこちらへ迫ってくる。

「後ろから知らない魔物が追ってきてる!相手の方が速い! 囲まれるとまずい! 遮蔽物の多いところまで進もう!」

 未知の敵とは戦わないことが1番だが、逃げられないなら話は別だ。戦闘が避けられないなら、少しでも有利な状況を作らなけらばならない。

「この先だと16層に入ってすぐのところだ!」

 防御力の低いアミを中心に16層を目指す。鳴き声が大きくなり、追手が近づいていることを実感する。

 16層に差し掛かったその時、

「えっ…」

ルティたちは轟音と共に、浮遊感に包まれた。床が抜けたのである。


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