流れ星が消えるまでに
流れ星が消えるまでにね、願いを3回言えたなら、
願いごとは、かなうんだってさ。
「パパに会いたい。」
早口言葉みたいにね、
何度も何度も練習したんだ。
「あっ流れ星!」
だけど……見つけてからじゃ、おそいんだ。
あんなに、あんなに……練習したのに。
2回と半分が限界。
だからかな?
今年も、パパには会えなくて……。
サンタさんが来ることのない、
ぼくの家のまわりにも、
真っ白い雪だけは、同じように降り積もるんだ。
――――
「ママの病気を治してください。」
早口言葉、みたいに――ね、
何度も何度も、練習したんだ。
見つけてからじゃ遅いから、
流星群が来る夜は、見つける前から言い始めるんだ。
間に合うように短くしたよ。
「ママをたすけて。」
100回、200回……それよりきっと、もっともーっと、たくさん。
のどがカラカラして
声が枯れるまでくりかえして。
―――――
流れ星が消えるまでにね、願いを3回言えたなら、
願いごとはかなうんだってさ。
「やった……」
ついに、ぼくはやり遂げたんだ。
―――――
だけど、
ママは夜空の星になった。
サンタさんが来ることのない
ぼくの家の回りにも
真っ白い雪だけは、同じように降り積もるんだ。
ぼくはもう、流れ星をさがすのをやめた。
――――
夢は願えばかなう、って
期待するから、つらくなる。
カタチあるものは、いつかこわれて。
どんなものにも、終わりがくるから。
ゲンジツだけを見るようにして。
そうして、世界は色を失くして
ぼくは
ぼくの星をなくした。
――――
ねぇ、でもね、きみと、手をつないで目をつむるとね、
ポカポカの、陽溜まりのなかにいるみたいに、
あったかくなれるんだ。
やさしい気持ちになれるんだ。
冬枯れの木も芽がふくらんで
やがて花が咲くだろう。
ぼくは星をなくしたけれど
きみを見つけた。
―――――
久かたぶりに夢をみる。
夜空にたくさん星が流れる。
流れ星が消えるまでにね、願いを3回言えたなら、
願いごとは、かなうんだってさ。
たったひとつの願いを、
きみに伝えよう。
「きみ」に伝える、たったひとつの願い。
それは、あえて記載しませんでした。
ひとつの童話としては、その答は
読んでくださったかたの心のなかにそれぞれあるものなのだろうなと思うのです。
人の心の在りようは、十人十色だと思うのですよね。
感性も。おかれた状況によっても違うのかもしれません。(たとえば……順風満帆な状況で未来に進んでいこうとするときと、“命の灯火も残りわずかで、やがてぼくも星になるだろう”というときとでは、相手に願うこと、託したい想いも変わってくるかもしれませんよね?)
人の心は、そんな風にやわらかく揺らぐ要素が残されているものだと思うのです。
もしもあなたが、本当に大切な人に出会ったとき、
その人に望むことはなんでしょう。
たったひとつだけ、願いが叶うとするならば、
あなたはその人に何を望まれますか?
その願いこそが、「きみに伝えようと」いうことの、答になるんじゃないのかな……と、堀田は考えるのです。