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出動!悪行清掃人!   作者: 糸東 甚九郎 (しとう じんくろう)
#4 攻める者たち! 守る者たち!
14/84

~ファイル14 攻める者たち! 守る者たち!~ 

 夕暮れの中、学校帰りの一年生部員、松本、大山、中根の三人が歩いている。

 

「みさき。今日は、オリエンテーションの係、つかれたねー」

「ねー。大山ちゃんも、がんばってたよねー。来年も、がんばろうね!」

「文乃も弥咲も、二人はいいよなー。おれなんか、ずっと美化委員でゴミの見回りだったもんなー。いちおう道着は持ってきたけど、杉山主将と早乙女先輩が部活担当だったし」

 

 松本は、白帯の道着を抱え、女子二人のやや前を早足で歩く。


   ・・・・・・ざざざっ  ざしゅっ  ざしゅっ   ざざざっ


「え? え?」

「「 きゃーっ! 」」


 その時、三人の前に、剃り込みの入った金髪の男たちが突然現れ、進路を阻んだ。


「騒ぐな。おめーら、柏沼の空手部だろ? ・・・・・・来い! 黙って、来いよ!」

「ちょ、ちょっと! やめてください・・・・・・」


   ・・・・・・バキャッ!


「うぐぅ・・・・・・。い、痛い!」


 松本が、建設現場の作業員のような服装をしたマスクの男に、鼻を思い切り殴られた。

 ぽたぽたと鮮血が足下に滴り落ちる。白帯の初心者では、太刀打ちすらできなかった。


「ま、まつもと君! ・・・・・・やめてくださいー・・・・・・。まつもと君は、何もしてません!」

「こ、怖いよー・・・・・・。誰かぁー・・・・・・っ! 助けてーっ!」

「騒ぐなっつってんだろ! おめーらも、女だって言っても、ぶっとばすぜ?」


 中根弥咲と大山文乃は、男たちの迫力で、蛇に睨まれた蛙のようになってしまった。松本は、鼻を押さえ、涙目でうずくまっている。


「・・・・・・おめーら、藤山までついてこい。オラァ、三人ともその車に乗れ!」

「「「 (こ、怖い。助けて、誰か・・・・・・) 」」」


 三人は、男たちの車に乗せられ、藤山公園まで連れていかれてしまった。

 中根は、黒塗りの車の中で、窓越しに外へ何か叫ぶ。しかし、まったく声は外に漏れることがなかった。


「ねぇ、ミオ? さっき、弥咲みたいな声しなかった? 向こうの方からさぁー」

「・・・・・・うん、したね? 何だろう。叫び声だったようにも聞こえたけど・・・・・・」


   ブロオオォォーーーッ!  ヴォンヴォンヴォヴォー


 歩道を歩く水穂と澪。その横を、藤山公園に向かって黒い車とバイクが数台過ぎ去る。

 水穂は、ちらっとその車に目を向けた。そして、はっとした表情に顔が変わる。車内から必死に何かを訴える中根の姿が、一瞬だけ見えたのだ。くりっとした水穂の両目は、それを見落とさなかった。


「ミオ! いまの車! 車の中に、弥咲がいた! やばいよ。普通じゃない感じ!」

「! 水穂っ! あれ!」


 澪は、三十メートルほど先に、三人のバッグが落ちているのを見つけた。


「松本、大山、中根・・・・・・。三人の持ち物だ! どういうこと? 連れ去られたの?」

「どうしよう? 警察にまず、連絡だよね!」

「そうだね! でも、どこへ連れ去られたの? さっき、水穂が見た車のナンバーとかわかる?」

「あー、わっかんないーっ・・・・・・。でもね、間違いなく、さっきの黒い車の中にいたよ!」

「バイクもいたよね? 昼間の暴走族、藤山公園のほうでエンジン音が消えたけど、まさかそこに連れ去られたとか? わたしは、そんな気がする!」

「そうかも! やばいじゃん! でもなんで、一年生たちが・・・・・・。とりあえず、警察だね!」


 街中で焦る、水穂と澪。しかし、澪は生唾をぐっと飲み込み、冷静さを取り戻す。

 澪は制服のポケットから携帯電話を取り出し、アンテナを伸ばして警察に電話をかけた。


   ・・・・・・ざっ  ・・・・・・ざっ  ・・・・・・ぴたり


「なにやってんの、こんなとこで? 二人とも、とっくに帰ったんじゃなかったのー?」

「こ、小紅センパイ! た、大変! やばいかもしんないんですよーっ! ねーっ!」

「ちょ、ちょっと! 何が何だかわかんないって! あたしにきちんと、わかるように説明しなよー?」

 

 澪が警察に電話している間、水穂があたふたしながら、小紅に状況を話した。


「・・・・・・な、なにそれ! 水穂! 他に何か情報はないの?」

「私が一瞬見たのは、それだけでー。でも、方向的に、藤山公園かなぁって・・・・・・」

「澪! 警察の人は、電話で何て言ってた?」

「事件か事故かわからないし、それだけの情報では何とも・・・・・・って返答でしたね」

「昼間のバイクの連中か? 後輩に手を出すなんて・・・・・・。二人は、久保さんや中田巡査にも連絡して! 街中に高校生三人の荷物が落ちてるなんて、それだけでも異常でしょうよ!」

「小紅センパイは? これからどう・・・・・・」


   ダダダダダダダッ!  シュタタタタァーッ!


「「 あっ! 」」


 水穂がまだ話し終えないうちに、小紅は藤山公園の方へ全力で駆けていってしまった。


   ぽて  ぽて  ぽて  ぽて・・・・・・


 そして、数分後、その場に優太が現れた。美化委員会の仕事で遅くなったらしい。


「あれ? 水穂ちゃんに、澪ちゃん? どしたのー? 小紅ちゃん見なかったー?」

「ゆ、優太センパイー・・・・・・。あー、小紅センパイがー。後輩たちがーっ・・・・・・」


 慌てる水穂と渋い表情の澪。それを見て目を丸くする優太。

 三人は夕暮れの中で、立ち尽くしていた。



     * * * * *



「お、おれたちを、どうする気なんですか?」

「帰りたいよ! 怖いよぉー」

「わたしたち、なにもしてません! だから、家に帰して下さい!」


 三人は藤山公園の頂上にある展望広場で、バイクに跨がった男たち十名以上に囲まれていた。

 その中で一人、バイクには跨がらず、大きな岩の上に座って異様な雰囲気を醸し出す者がいる。

 明らかに他の雑兵とは違うオーラを持った男。大柄で、小麦色に焼けた肌。金髪のモヒカン頭で、西部劇のガンマンのような服装だ。


「悪く思うんじゃねぇ。・・・・・・もう、調べはついてんだ。お前ら、柏沼高校の空手部だろ? さぁ、呼べ! こうなったら、呼ぶしかねぇだろ!」


 貫禄のあるリーダー格の男が野太い声で、松本に誰かを呼び出すように促した。


「だ、だれを、呼ぶんですか? け、警察?」

「おい、冗談言っちゃいけねぇな? わざわざ警察を呼べなんて言う暴走族がいるか?」


   ヴォンヴォヴォヴォヴォ!  ヴォヴォンヴォヴォヴォォン!


 手下の男たちが、バイクのエンジンを噴かし、威嚇した。松本はびくっとし、震える。


「さぁ、呼べ! あの、早乙女小紅をだぁ! さぁ、この岩村の前に、呼べぇ!」


 松本は、渋々、携帯電話で小紅に電話をかけた。大山と中根は、ぼろぼろと泣いている。

 岩村というこの男は、人質を取って小紅を迎え撃つ気のようだ。


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