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出動!悪行清掃人!   作者: 糸東 甚九郎 (しとう じんくろう)
#3 矛を止めると書いて、「武」!
12/84

~ファイル12 肘掛け椅子~ 

  ・・・・・・きぃぃ   ・・・・・・きぃぃ   ・・・・・・ぎしっ

 

 暗い漆黒の闇が広がる部屋。

 何かの煙が満ちた部屋。

 紫色と藍色の電球が不気味に瞬く、怪しい部屋。

 その部屋の一番奥には、まるで大会社の社長室にあるかのような高級テーブルがある。

 そしてそのさらに奥で、牛革製の黒い肘掛け椅子が音を立てて、ゆっくりと揺れている。

 椅子の隣にあるものは、青白い灯りで浮かび上がった水槽。

 その中には、それぞれ違う色をした、三匹のカエルが。

 小さな赤いカエル、緑のカエル、そして白いカエル。


   カツッ  カツッ  カツッ・・・・・・

   ギュピッ  ギュピッ  ギュピッ・・・・・・

 

 真っ暗なコンクリートむき出しの廊下で、乾いた足音が響く。

 ひとつは、固い革靴の音。

 ひとつは、重いブーツの音。


   ・・・・・・コンコンッ・・・・・・

 

 重い木製のドアをノックする音が、怪しい部屋に響く。


「・・・・・・どうぞ? お入りなさい?」


 肘掛け椅子が少し揺れ、男性とも女性とも言えない声が、ドアに向けられた。

  

   ガチャリ・・・・・・

 

「・・・・・・失礼します。・・・・・・昨日の件の報告ですが・・・・・・」

「・・・・・・失礼シマス。・・・・・・自分モ、先日ノ件ノ、報告ニ来マシタ」

 

 暗い部屋にまず入ってきたのは、銀髪で右目に黒眼帯をし、燕尾服を纏った長身痩躯の男。

 それに続いて、筋骨隆々の角刈り頭で迷彩服を纏った、サングラスをかけた大柄な軍人風の男。

 その二人が、黒い肘掛け椅子に向かって話す。

 肘掛け椅子も、二人に返事をする。

 

   ・・・・・・きいぃ  ・・・・・・ぎしり  

 

「ほォ・・・・・・。それは、ご苦労様ですねェ。針実(はりみ)さん、ブンさん・・・・・・」


   ・・・・・・きいぃ  ・・・・・・きぃーこ  ・・・・・・ぎしり


「はい。報告ですが、資金が目標より、集まっておりません。昨日、県庁のイベントで捕まった、カスミとマンバですが、いかがいたしましょうか? 他にも、最近、任務遂行できずに捕まる者が増えています・・・・・・」

「コチラモ、元・十両力士ノ、小田島(おだじま)・・・・・・イヤ、違ウナ。柿田(かきた)(のぶ)(よし)カ。ソレノ処分ニツイテ、イカガイタシマショウ? 何度モ捕マリ、失敗ガ多ク・・・・・・」

 

 二人の男は、黒い肘掛け椅子に向かって直立し、頭を下げる。

 肘掛け椅子は、男たちのほうへ振り向くことはなく、ただ、ゆっくりと揺れている。ゆっくりと。音を立てて、ただ、ゆっくりと。


「・・・・・・困りましたねェ。・・・・・・ボクがお仕事を与えても、成果をあげないのはァ・・・・・・」

「はっ。・・・・・・我々幹部の指導が行き届かない責任です・・・・・・。申し訳ございません」

「自分モ、針実ト同ジク、責任ヲ感ジテオリマス・・・・・・。申シ訳ゴザイマセン」

 

 男二人は、背筋を伸ばして直角に頭を下げ、肘掛け椅子に向かって謝罪の言葉を述べた。


   ・・・・・・きいぃ  ・・・・・・きいぃ   ぎしっ!


「まァ、針実さんとブンさんが謝る必要はありません。・・・・・・柿田さんも、カスミさんも、マンバさんも、ポンコツで困りますねェー・・・・・・。ポンコツは、廃棄処分でしょうねェ」


   ・・・・・・きいぃぃー  くるりっ!


 肘掛け椅子が、くるりと向きを変える。

 そこには、真っ赤な髪の坊主頭。両耳には銀のピアス。右目上に二本のナイフ型の刺青。左目上には渦巻き型の刺青。そして、上下、白いスーツに紫色のワイシャツ。エナメルの靴。銀色のネクタイを身に付けた、小柄な怪しい男が足を組んで座っていた。

 その怪しい男の両手には、ルビー、エメラルド、サファイアの指輪が光る。

 唇は、赤紫色の口紅でも塗ったかのような色。そして、真っ青な目をしている。あまりにも異様なその男に、眼帯をした針実という男も、角刈りのブンという男も、戦慄の表情だ。


「最近、どうしたのでしょうねェ? ボクが与えた仕事の成功率が、落ちているなんてェ」


 怪しい男は、妖艶な声と口調で、肘掛け椅子から降りて、二人の男に近づく。


「・・・・・・恐れながら、申し上げます。・・・・・・最近、我々の配下が、ある者たちにやられているとの噂が聞こえてきております。私の配下も、ブンの配下も、その者に・・・・・・」

「柿田信好モ、ソイツラニヤラレ、捕マッタトノコトデス・・・・・・」

「ほォ? ボクの組織と知ってか知らずか、それはそれは。だいぶおバカさんですねェー? その者たちは、警察? それとも、暴力団かなァ? ブンさん、どうなんです?」

 

 怪しい男は、後ろで手を組み、首をくいっと傾けて、角刈りのブンという男へ歩み寄った。

 

「申シ上ゲニクイノデスガ・・・・・・。女子高生トノコトデス。ハイ・・・・・・」

「はい? 女子高生? ・・・・・・ブンさん? 冗談はおやめなさい? 命の灯を消したくないでしょう?」

「それが、この記事をご覧下さい。昨日の件と、柿田が捕まった時の記事です・・・・・・」

 

 針実が、怪しい男に、栃葉新聞の切り抜きを手渡した。

 

「ほォ・・・・・・。これはこれは。ボクの組織の者を、こんな小娘らが? ほっほっほ。早乙女小紅? 常盤優太? 柏沼高校、三年? ・・・・・・なんですか、これは・・・・・・」

 

 怪しい男は、一瞬で、新聞をくしゃっと握りつぶした。そして、にこっと笑っていたかと思うと、一気に鋭く目を見開き、表情と口調を豹変させた。


「このデスアダー総帥、毒島仁英を、なめてますねェ! 針実さん! ブンさん! こんな小娘やガキ、すぐに消してしまいなさい! この国を牛耳る夢の、邪魔なゴミですッ!」

 

 この怪しい男こそ、デスアダー総帥の毒島仁英だ。

 毒島は真横にあった鉄柱を思い切り殴り、拳の形にめり込ませた。


「りょ、了解しました! 毒島様、失礼いたします!」

 

 毒島はまた、肘掛け椅子に座った。

 針実とブンは、冷や汗を絶やすことないまま、慌てて毒島の部屋から出て行った。

 小紅たちを標的にし、動き出した毒島仁英。

 この闇組織相手に、小紅たちは果たしてこの先大丈夫なのだろうか。

 そして、因縁浅からぬデスアダーは、小紅たちにどういう動きを仕掛けてくるのだろうか。


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― 新着の感想 ―
[良い点] いきなり、話のラスボス?的なキャラが現れ、作品に緊張感が生まれましたね。このボスはこれまで現れた敵とは何か違う不気味さがあります。雰囲気や会話の口調は某少年漫画の敵を思わせますが、ボスキャ…
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