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サーよし!2  作者: たらふく
104/413

104 芝居は大成功




「太賀誠と早乙女愛に敗れた高原由紀は姿を消した。そこへ新たな勢力、砂土谷さどや(しゅん)率いる緋桜団ひざくらだんが花園実業を乗っ取る。当然のように砂土谷と誠は対立するが、誠に敗れた砂土谷も姿を消す。そののち、早乙女愛の父親が汚職事件に巻き込まれて逮捕され、早乙女家は、ある意味崩壊する。そんな中、誠は産みの母親との「拘り」にけりをつけ、陰に陽に愛を支え、やがて事件の真犯人に辿り着くが、そこで砂土谷が現れナイフで刺される。こうして数々の紆余曲折を経て、ようやく誠と愛は、互いの気持ちに向き合うことができるようになる。そしてナイフに刺された後、誠は愛の元へ行くのである」


加賀見のナレーションが流れた後、暗転が戻った。

そして波の音が流された。


「ここは、逗子海岸――」


加賀見が言った。

掛井と森上と田沼と中川が、並んで砂浜に座っていた。


「早乙女くん」


田沼が言った。

中川は田沼を見た。


「もうじき、きみのお父さんも釈放されて、帰って来られるよ」


すると中川は、真剣な表情で海、つまり客席を見つめた。


「太賀くんも、戻って来るわ・・」


掛井が言った。


「無事ならよいが・・」

「無事ですとも。太賀くんは不死身だもの」


掛井がそう言うと、中川は袖の方に目を向けた。


「早乙女さん?どうなさったの」


掛井が訊ねるも、中川は茫然としながら立ち上がった。

中川の視線を追った田沼は「太賀っ!」と叫んだ。


するとそこへ、袖から日置が現れた。

腰からは血がポタポタと滴り落ちている。


「きゃあ~~・・」


観客席から声が挙がった。

中川と日置は、互いに駆け寄った。

そして互いの体を抱いた。


「きゃあ~~!」


そこで再び、観客席から黄色い声が挙がった。


「誠さん・・」

「愛・・」


そして二人はキスを交わすフリをした。

その際、二人の唇は、あと数ミリで触れ合うくらい近づいていた。

客席の小島は、思わず目を伏せた。

フリだとわかっていても、やはり直視できなかったのだ。


この時点で館内は「きゃあ~~~~!」と叫びにも似た声が、あちこちから挙がった。


「一度・・こうしたかった・・」

「一度?これからは、ずっと一緒よ」


日置は優しく微笑んだ。


「誠さん。私、とても幸せ。幸せよ!」


二人は、強く抱き合った。

そこで幕が下りた。

観客席からは、大きな拍手が起こった。


「いいぞ~~~!」

「ラストシーン、痺れた~~!」

「死なないでぇ~~誠さん!」

「愛ちゃん~~、綺麗やった~~」


このように、称賛の声も挙がっていた。

幕の後ろでは、『チーム中川』のメンバーらは、達成感に満ちた表情になっていた。


「みんな、ご苦労だった!」


中川が言った。


「ああ~無事に終わってよかったね」


日置も胸をなでおろしていた。

他の者も、互いに声を掛け合っていた。

するとそこへ、工藤が舞台に上がって来た。


「校長、どうされたんですか」


日置が訊いた。


「どうも、お疲れさまでした、と言いたいところなんですが、実はですね――」


そこで工藤は、事の経緯を説明した。


「ええ~~、二回公演?」


日置は唖然としていた。


「もう、大勢の方々が、外でお待ちなんですよ」


日置は、正直、終わったことで気が抜けていた。

それは他の者も同じだった。

特に、卓球部である阿部と森上はそうだった。

けれども中川は違った。


「先生、やろうぜ」

「えぇ・・」

「すぐには無理だ。準備があっからな。三十分もあればいいだろ」

「ほんまにやるん?」


阿部が訊いた。


「このまま終わりとなると・・外でお待ちの方々からの不満が爆発しそうです」


工藤は、とても不安そうにしていた。


「先生、みんなもいいな。同じことやるだけだぜ。もう緊張もしてねぇだろ」

「うん、そやな。やろか」


掛井が言った。

すると同じ三年生である木村は「これで最後の文化祭やし、やろか」と言った。

そして他の者たちも「やろやろ」と賛同した。


「私ぃ・・お腹、空いたなぁ・・」


森上は思わずそう言った。

そこで他の者は、「あはは」と笑った。


「校長」


中川が呼んだ。


「なんですか」

「済まねぇが、人数分のサンドウィッチと飲み物、持って来てくれ」

「え・・」

「みんな、ろくに食わずにやったんだ。このまま続けるとなると、腹の虫が鳴りかねねぇぜ」

「そ・・そうですか・・わかりました」

「よし、やろうか」


日置も、ようやく賛同した。

校長が出て行った後、入れ替わるように加賀見がやって来た。


「加賀見先生」


中川が呼んだ。


「みんな、お疲れさま。大成功やね!」


次もあると知らない加賀見は、ホッとした様子でそう言った。


「三十分後、二回目の公演だ」

「えっ・・」

「外で、大勢の人が待ってるらしい」

「う・・そ・・」

「いいな、先生、頼んだぜ」

「日置先生、ほんまなんですか・・」

「うん。もう決まっちゃったの」



―――その頃、入り口では。



「みなさん、たった今、次の公演が決まりました。入れ替えをしますので、みなさん、出てくる方々の邪魔にならないよう、ここを開けてください」

「おおおお~~~!」


この場にいる者は、急いで場所を譲った。


「約三十分後、開演となります。入れ替えの際は、どうぞ走ったりなさらないようお願いします」


ほどなくして、中にいた観客者がぞろぞろと外へ出てきた。


「よかった~~!」

「誠役と愛役の人らって何者なん?」

「いやあ~~もっかい観たい~~」

「ひおきん、めっちゃかっこよかった~~」


と、このように、感想があちこちから飛び交っていた。

やがて入れ替えも滞りなく済み、二回目の上演が迫っていた。


「みんな、どうする?」


外に出た彼女ら八人は、校庭で立っていた。

そして浅野がそう訊いた。


「彩華、お化け屋敷あるらしいで」


為所が、いたずらな笑みを浮かべた。


「おい、為所」


小島は為所を睨んだ。


「なによ・・」


それでも為所は笑っていた。


「あんた、わざと言うてるやろ」

「あはは、バレましたか」

「彩華~、行こうな~」


蒲内が言った。


「なんでやねん!」

「っんな、高校生のやってるお化け屋敷なんか、大したことあらへんて」


杉裏が言った。


「私は行かへん」

「それにしてもさ・・先生と中川さん?やったっけ。あのキスシーン・・」


井ノ下がそう言った。

すると小島の顔は、少しだけピクッとなった。


「あれ・・まさか、ほんまにしたんとちゃうよな」


外間が訊いた。


「あれは、フリや、フリ」


小島が答えた。


「にしてもさぁ~、かなりきわどかったよな」

「彩華・・なんとも思てへんの?」


岩水が訊いた。


「思てへんよ」


その実、小島は少しだけ妬いていた。

日置には「全力で」と言ったものの、実際、目にすると、やはり複雑な心境になっていたのだ。


「まあまあ、そんなこと、ええがな」


浅野は、小島の心情を察していた。

小島は妬いてはいたが、この気持ちを日置に言うつもりは一切なかった。

なぜなら、日置は嫌がっていたのだ。

そこを責めるとなると、何も悪くない日置にすれば、とんだとばっちりになるからだ。


いずれにせよ、芝居は大成功したのだ。

そして自分も感動した。

日置に会えば、「お疲れさま」と言って、労うつもりでいたのだ。


その後、二回目の公演が行われ、『愛と誠』は大成功に終わったのだった。

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