表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黄金王の花嫁  作者: かや
2/36

1. 商業都市国家コルトシュタイン


この国では代々、商売を原則自由とし、干渉しない方針を執ってきた。

その為『詳細な世界地図が無い』という不思議な事情があっても、黄金と商機の話を聞きつけて、やってくる他所者が多いのだ。

結果的に人口一万人ほどの領土には、国内外の商売人が溢れ返る事態となった。


人が増えれば商売上の争いが起き、お役所の出番も増える。

治安を保たねばならないのに、自衛軍の予算は削られるばかりだった。

削減を迫られる矛盾した状況が悩ましい。


災害があれば、それを防ぐ為の公共工事を怠る訳にもいかず。

その話が持ち上がる度に好き放題、陳情を上げてくる

貴族の話なんか聞き飽きてしまった。

極め付けは酔っ払いのケンカの仲裁まで頼まれる始末。


「でもまぁ、俺にしちゃ頑張ってる方かね」


一年もやってようやく慣れてきた執務を、若き王は自身で労う。

国事から民事まで、民から頼られる多忙さは、この小さな国に生まれてきた王族の運命とも言える。


しかし、それにしても思う。

前王や、その側近達は在任時に愚痴の一つも溢した事が無かった。

前王は国民の信頼に応え続け、剽軽ひょうきんな『放蕩君主』のまま退位まで過ごした。


比べる事では無いと判っているが、アルフレッドとて

父親の跡を引き継ぐべく、今まで教養を受けてきた

生粋の王族である。


出来ないと言えば仕事が半減する訳ではない。

疲れたと喚けば誰かが代わってくれる訳でもない。


渋る議会と頭の固い自衛軍の間に入って防衛予算を通し、商工ギルドに頼んで平穏に商売が出来るよう采配した。

酒場や宿屋には傭兵か冒険者を必ず常駐させるよう周知し、楽しく仲良く飲み食いするよう『王様からのお願い』である要請を発した。

金鉱山の視察も欠かさず行い、労働者と商人、貴族の双方に過不足のない国政を心がけている。


休日には変装して繁華街に繰り出す。

人々の評判はなかなかに良い。

(いわ)く、カネと人脈と容姿を不足なく備えた理想的なプリンスである、と。


ーー彼の実感とは、かけ離れていた。


ここは人間と魔族が互いを認め合って争いを止め

『勇者』が出現しなくなって久しい世界。

各国の君主や都市の長は、誰もが等しく多忙を極めると聞く。

それを知っていて、アルフレッドも覚悟を決めた。

敬愛する前国王ウィルフレドから王冠と権力を引き継いだ以上は、父祖らが築いてきた狭くも豊かな国を守り続ける。



それが彼、アルフレッド・フォン・コルトシュタインの役目なのだ。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ