Sweet×Bitter×Vampire01
ドサッ
「うにゃっ!」
よく跳ねるベッドに押し倒された。どぎまぎしながら一瞬閉じた目を開けると、アイゼンバーグが馬乗りになっていた。
展開が早すぎる! 一旦落ち着いて整理するんだアタシ!
何故かアタシは念仏を唱えるようなつもりで素早くこの数分のことを振り返った。
今、アタシとアイゼンバーグは港近くのホテルのスウィートルームにいる。フェリックスさんの計らいで夜明けになる前にホテルに身を移したのだ。なんとフェリックスさんは各地にホテルを所有しているお金持ちだったのである。運営はそれぞれ別の人間に任せているそうで、自ら携わることはほとんどないらしいのだが、所有者には変わりないのですぐに部屋を用意できるらしい。しかもスウィートルームを。
そういうわけでアタシたちはスウィートルームに来たわけだが、部屋に入った途端、アタシはベッドルームに連れていかれて押し倒されてしまったのである。
「んっ!?」
思考を別のところに飛ばしていたらいつの間にか唇が塞がれていた。
「んんっ」
先程とは違って深く口づけられる。緊張して歯を食いしばっているので、舌は入って来ない。けど、足を持ち上げられて太ももを撫でられている。艶めかしく行き来する手は太ももだけを撫でているのに、全身を撫でられているように体中がぞわぞわする。
これ以上は、耐えられない!
「ふ」
ぺちんと肌を行き来する手の甲を叩いてやった。それから胸を押すと、アイゼンバーグはゆっくりと離れてくれた。
「何だ。嫌なのか?」
真っ青な瞳に真っ直ぐ見つめられている。う、と言葉が少々詰まった。
「い、嫌じゃない、と思うけど、今は無理っていうか、心の準備が……」
顔が熱くなってきた。恥ずかしい。心臓が爆発しそう。
無理だ。ホント、これ以上のことが起こったら心臓が爆発して死んでしまうかもしれない。もしくは血が沸騰して爆発する。いずれにしても爆発する。
「心の準備、か」
アイゼンバーグは呟いてからアタシの隣に寝転がった。
あれ、諦めてくれるのだろうか。アタシは身体を横にしてアイゼンバーグを伺った。
「無理矢理するつもりはない。お前の準備が出来るまで待ってやろう」
アイゼンバーグは肘を立てたところに頭を乗せ、アタシを見つめてきた。
結構あっさりだな。逃がさない、とか、気を失うほど、とか言うから強引にいろいろされちゃうかもと思ったのに。
「……なんだ、案外すぐ食べごろになりそうだな」
にぃっと笑い、アタシの髪を掻き上げるアイゼンバーグ。
ぼっと身体が熱くなった。アタシ、今、ちょっと残念だって思っていた。しかもそれを見破られている。めちゃくちゃ恥ずかしくて悔しい。
「そんなことない」
見栄のようなものを張ってしまった。するとアイゼンバーグは面白そうな顔をした。
「そうか。なら時間をかけて準備しろ。どこが食べごろになったか、一つ一つ確認してやる」
「!」
アイゼンバーグの指先が太ももを撫でた。反射的にその手を掴んでしまう。しかし彼の手は引っ込むことなく、そのままアタシの輪郭をなぞるように上がってきた。太ももから腰、脇をゆっくりと。腰を通った時は思わず握る手に力を込めてしまったけれど、脇から肩にかけて、それから肩から首、顎を通って唇で止まると、手を離してしまった。
「ここはいいのか?」
指先が唇を優しく撫でる。
「さっきもしたでしょ」
答えるとアイゼンバーグは笑った。
「これでまだ準備中なのか」
この、にやり顔。憎たらしくもあるけれど、こうして何度も見ていると可愛らしく見えてきた。恋は盲目ってやつかな。
「ここ以外はダメだからね」
「分かった」
軽く唇が触れた。リップ音がして、彼の空色の瞳が見えたと思ったらまた優しくキスされた。
微笑むアイゼンバーグ。空色の目がとろけて見える。
うう、熱い。たぶんアタシの顔は真っ赤だ。キスを許してしまったけど、もしかしたら許してはいけなかったのかもしれない。キスがこんなにも甘いなんて思わなかった。キス一つで身体が溶けてしまう。
「どうなるのか楽しみだ」
胸がきゅうっとした。
またアイゼンバーグはついばむようにキスをした。アタシの身体はキスされる度に熱くなって、緩んでいった。ちょっとずつ砂糖を加えてアタシを料理しているみたいだ。準備するつもりだったのに、準備されている。これが続いたらアタシ、どうなっちゃうんだろう。
ドキドキする。不安というよりも期待なんだろう。それが分かってしまったから、そう遠くないうちにアタシは食べごろになってしまうんだろう。




