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B×B×Vampire(ビービーヴァンパイア)  作者: あまがみ
第3章 Love×Vampire

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Hero×Villain×Vampire08

 アタシは赤の吸血鬼たちに視線を戻した。


 女吸血鬼たちはサンダーさんを追いかけようとしない。ブランが女の子たちに男を追いかけさせるなんて有り得ないもんね。アタシはここに残るだけで彼女たちを足止め出来て、黄の吸血鬼のみんなの役に立てるのだ。アタシの所為でみんなが傷つけられてしまったのだから、これくらいはしなければならない。


 女の子たちを目で威嚇する。

何人かが武器を構え直したり後退ったりする中で、アンナさんだけがこちらに進み出てきた。


「貴方ってとても逞しいわね。私、逞しい子は嫌いじゃないのよ。女にだって、大切なものを守るために立ち向かわなければならない時があるのだもの。当然私たちも愛するブランのためにここへ来たのよ」


 悠然とドレスの裾のフリルを揺らしながらやってくる。雨の所為で辺りが暗いから、鮮やかな赤が映えている。


 ただ、彼女から漏れ出てくる殺気が凄まじくて、見惚れはしなかった。


「ブランは貴方をお城に迎えるつもりで、私たちに命を下さった。でもね、私は反対したわ。正直に言うと、貴方はいらないの。貴方はどこか私たちと違っていて、ブランはそんな貴方を興味深く思っている。彼の気を引く女が入って来ようとしているのに、私たちの心が穏やかなわけがないでしょう?」


 控えている女吸血鬼たちからの殺気も漂ってくる。嫉妬や憎悪が混じった殺気だ。


 あのお城の底にはもともとこういった負の感情が隠されていた。不満を解消するいろいろな制度や、誰に対しても同じブランの態度が彼女たちを抑えていたのだ。それなのに制度が適用されず、なおかつブランに惚れないアタシがやってきたことで蓋が開いてしまったのだろう。ブランは少しもアタシを特別な目で見ていないけれど、彼女たちから見ると特別扱いをされているように見えるのだ。アタシはブランを愛する女吸血鬼のみんなの逆鱗に触れてしまったようだった。


「アタシが邪魔みたいだね。ここでアタシを殺してしまおうとでも思っているの?」


「そうしたいわ」


 胡乱な目とゾッとするくらい冷たい声に背筋が凍りそうだった。


「本当はそうしたいのだけれど、先にブランにそれはダメだと言われてしまったの。彼にお願いされたら断れないわ。でもね。アタシたちだって黙っていられなかったら、貴方を捉まえたくないと正直にブランに言ったの。そしたら彼は別の提案をしてくれた。それで私たちは時間稼ぎをすることになったのよ」


「時間稼ぎ?」


 ひょっとしてこのまま夜になるまで睨み合いを続けてブランと合流するつもりなのだろうか。

そう訝しんで眉を寄せていると、視界に小さな黒いものがちらついていることに気がついた。

それが無数のコウモリだと気づいた途端、全身から血が下がっていった。


「デイン!? どうしてっ」


 見上げようとして気づく。


 分厚い雨雲で太陽が隠れている。おまけにここは深い森の中だ。完全に太陽の光が無い。強制的に眠るわけではなく、太陽の光が直接当たらなければ動いていられるのなら、昼間でも条件が整えば純系吸血鬼は外に出られるのだ。


 デインがアタシの敵としてやって来たことは考えなくても分かった。彼は親であるブランの命令を断らない。


 アタシは唇を噛んだ。女の子たちなら何とかなると思うが、デインには太刀打ち出来ない。圧倒的な力の差があるからだ。どうしよう。逃げるか? デインに掴まったらもう逃げられない。でも、逃げたら黄の吸血鬼のみんなが……。


 そんなことをぐるぐる考えているうちにコウモリが頭の真上までやってきて、声が落ちてきた。


「ごめんな」


 辛そうな声が一つだけ。


 コウモリたちはアタシを襲うのではなく、頭上を越えて真っ赤なバラの絨毯をも越えていった。


 どうしてそっちに行くの!? デインの目的はアタシじゃないのか。デインの目的は……サンダーさんか!


「ダメ! デイン!」


 元々人間だったサンダーさんはアタシ同様、デインに太刀打ちできない。どうしよう。サンダーさんが危ない。早く加勢に行かないと!


 アタシは足に力を入れようとした。


ドッ


「ぐ!?」


 しかし地面を蹴る前に横から丸太のような物で殴られ、気がついたときには宙を舞っていた。


 視界がぐるりと反転し、背中から地面に打ち付けられる。しっかり着地しようと思ったけれど、巧く身体に力が入らなくて出来なかった。


 バラの匂いがキツイ。


 刺激臭で鼻がもげそうだ。頭も痛い。熱中症のときのように頭がくらくらして意識がもうろうとしてくる。身体が重い。地面に手を突いて首をもたげるだけでやっとだった。


 バラの守りってこんなに有効的なんだ。


 吐きそうになるのを堪えながら、霞む視界を瞬いて晴らせた。


 すると目に青いものが飛び込んで来た。


「あ……」


 青だけじゃない。黒も、ある。


 アタシが落ちた周辺のバラの花びらが青と黒に変わっていた。小刻みに震える手や足には引っかき傷がたくさんできていて、真っ赤な血が滲んでいた。

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