未定
好きなあるゲームをモチーフに自分の読みたい物語を書きました
破壊の傷跡が濃く残る荒野の中で二人は吼える。1人は正義を1人は我儘を。
「お前の住んでいる森を明渡せ!!!国にとって重要な場所だ!人類の希望がかかっているのだ!力ずくでも渡してもらう!!!」
「ふざけるな!!!私の場所だ!!!殺すぞ!!!」
大きく開けた平地には、騎士と魔女との争いで出来たクレーター、凍りついた巨木、燃え盛る大岩が点在していた。交渉ともつかぬ応酬が終わり、2人は次の段階、実力行使に移行する。
騎士が腰の剣に手をかけ引き抜くと神々しい光を放ち、膨大な魔力をあたりに撒き散らした。
魔女の編み出した異様な大きさの術式が、炎と禍々しい闇を生み魔女の体に纏わる。
騎士は懐に入れていた魔力の篭った大きく美しい宝石を砕く、すると溢れ出した魔力が騎士を包む。これは騎士が生まれた時から宝石に少しずつ魔力を貯め、生涯の分水嶺で使うはずだった魔力の貯蔵機だ。そうして持てる限りの魔力を込めた剣に大気が震え空は哭いた。今、魔女を殺す為.愛すべき自国の繁栄の為の強大な一振りがなされ様としていた。その姿はまさに騎士の高みに辿り着いた正義と人民の希望の象徴と言えよう。
「お前を倒して奪いとる!我が国の為死んで貰う!!」
大気を震わせていた膨大な魔力全てを剣に込め、渾身の力で振り抜く、神の裁きを体現したかの様な神々しい光が魔女に向かって放たれる。魔女は光と自分の間に魔力で黒色の防壁を作り出した。だが汚れを許さない光は触れた物全てを消し飛ばし、有無を言わせぬまま魔女の抵抗を打ち崩す。
「だ・か・ら!!なんだよ!!」
そう吼える魔女の体に纏った闇に、一層暗い輝きが宿り、密で暗澹な空間が魔女を中心に展開する。紅い炎がその周りを覆う様に燃え盛り、天を焼かんとする様に轟音猛熱を撒き散らす。天災染みた二つの力が激しく衝突した。
「ウオオオ!!!!!小賢しい真似だ!!!焼き切る!!」
騎士は命を燃やし全身から魔力を剣に流す、祖国の為信念の為に。更に凶悪に光は太く厚くなる、この浄化の力に対して魔女を守る炎の柱は余りに小さい、いや光の力が強すぎると言うべきか。真っ直ぐな力の大流に呑まれてやがて炎柱は轟を鎮める。
「骨も残るまい…これでまた一歩我が国の繁栄が進もう」
騎士の勝利で終わる。残るは塵も残るか残らないかの魔女の死体。の筈だった。
「あー、イッタイ!!ふざけんな!!アンタ!殺す気できたんだから殺される覚悟はあるよね?」
清き光の流れが引くと、禍々しい黒が残される。
「馬鹿な!!!あり得ない!ただの魔女に今の攻撃が耐えられる訳が無い!!魔王ですら恐れる程の威力だった筈だ!!」
「まぁ、普通の魔女じゃ今のはしんだろうね、私は普通の魔女じゃないからね。」
魔女を生かしはしたが当初の大きさから削られ、今では魔女の体を薄く覆っている程になった黒が、今また力を取り戻しうずを成すように、厚く大きく広がりだす。それはやがて魔女を中心に嵐の様になる。
「お前何をした?!どうして生きている?!防げる攻撃じゃなかった筈だ!伝説級の防具でも無ければ防げる訳が無い!!!魔女如きの魔法でどうにか出来る訳が無い!」
「アンタもうすぐ死ぬから教えてあげるけど、私が炎、闇以外の魔法使ってないのおかしいと思わなかった?」
「…闇魔法が得意なだけだろ、だからなんだと言うんだ」
「違う、私には得意な魔法なんて無い。まだ他の属性よりマシな闇魔法だって魔力を過剰に込めてなんとか形にしてるだけ。私にあるのは肉体強化の魔法だけ、自分の体に魔力を込めるだけの魔法と言って良いのかわからない物だけ。闇と炎の加護と、肉体強化の魔法を限界一杯まで行使してアンタの攻撃を耐えたの」
「嘘をつくな!私のマジックアイテムで作った氷気に耐えていた時、今の攻撃を受ける時も強力な炎魔法を使っていただろう!それに肉体強化がなんだと言うんだそんな物の効果は高々知れている付け焼き刃にしかならん!」
「だからそれは、炎の加護を受ける為に魔力を注ぎまくってなんとか形にしてただけ。苦労したよ、闇より適性無い炎魔法使うのは、正直魔力もう底つきそうなんだよね………で、もういいよね」
魔女が一歩踏み出すと地面が軋む、騎士の目には暴虐の塊が近づいて来る様にうつった。威圧感を撒き散らし荒れ狂う闇を従え魔女は騎士に迫る。逃げられない。逃げるつもりも無い。やるべき事は変わらない、自分の護るべき国の為に勝つだけだ。
「舐めるな!一撃で仕留めることはできなかったが魔女相手に魔力を消耗させた時点で私の勝ちだ!」
騎士は魔女の纏う闇を剥ぎ取る為に、念のために国王から預かり受けていた、光の魔法を込めた結晶石を懐から取り出す。とても希少で高価な物で王より預かった事もあり使う気は無かったがそうも言ってはいられないだろう、先の攻撃を防いだカラクリは分からないが肉弾戦に持ち込めればそれが自分の本懐だ、負けるつもりは無い。が、あの闇魔法は厄介だ。視界は遮られるし、様々なデバフ効果、何が起こるか分からない恐ろしさがある。
「喰らえ、光の清浄で闇を払いお前を切り捨ててやろう!!」
結晶石が光を放ち砕ける、溢れた魔力は即座に光魔法を作り闇と相殺する様ぶつかる。辺り一面を照らす程の輝きを持って闇を喰らう光は、自身と引き換えに魔女の周りの闇を全て消し去る。
「やっぱりまだ何か持ってた…」
魔女が呟く。
「どうする、まだやるか?お前の言葉を信じる訳じゃないがもう魔力も残ってないだろう?降参しろ!今なら命は見逃してやる」
騎士は剣に手をかけながらも、自身の勝ちを確信して、勝者の特権である降伏勧告をする
「そっちこそ逃げる気ならこれが最後だよ」
「そうか、なら仕方ない。森さえ奪えれば良かったがお前には死んでもらおう」
空気が変わる。騎士としての強さが活きる場所で負ける事はないだろう、そう言える程の実力がこの騎士にはあった。戦場では一振りで2.3人は殺しどんな猛者であろうと敵は確実に屠ってきた、剣をおり鎧を砕き不倶戴天の敵全てから恐れられた。
本気で自分を殺す事に集中した騎士を前にした魔女は
「それじゃ行くよ」
距離を詰めに駆け出した。一歩一歩が恐ろしくはやい、あっという間に騎士の間合いに入る。
「多少速い動きが出来るようだがそれでどうにかなるとおもっているのか!死ね!!!」
瞬く一閃、魔女の首を摘み取らんと岩をも切り裂く剣技が放たれた。
「なんで苦手な炎、闇の魔法を使ったと思う?一つはアンタの隠してた奥の手が怖かったから。もう一つは肉体強化に込められる魔力上限があって、魔力が余っちゃうから」
「これが今出来る最高の強化状態」
話ながら騎士の剣の切っ先を真正面に捉え拳で叩き折る。
「なっ…⁉︎」
「ドンドン行くよ。」
拳を目の前の敵に叩きこむ、騎士は異常な反射でそれを避ける。だが魔女の拳はミスリルで出来たこの国で作れる最高の鎧ごと避けきれなかった騎士の左肩を抉る。土くれだったかの様に鎧は砕けて、騎士の左肩が露わになる。鎧が無ければ砕けていたのは騎士の体だったろう。
あとは一方的だ。魔女の蹴りは巨岩を易々壊す程、振るう拳は当たれば即死の威力を持って騎士の逃げ筋を潰していった。剣が無いからと言って騎士も反撃をしなかった訳では無い、普通の魔女相手だったなら必殺となる拳での一撃を、向かい合う魔女の隙をつく完璧なタイミングで放った。それに反応される、放った腕を砕かれる。装備していた投擲武器を投げる。魔女がそれを空中で殴りつけ鉄屑に変える。やっとの思いで魔女との距離を稼ぎ爆薬で遠距離から魔女を焼く。だが、炎に焼かれながら魔女は
「もう終わりにしよう」
そう言い自分を焼く炎を意に介さずに大地を踏み抜いた。地面が大きく沈む。重い音が響き空気を揺らして魔女の単純に異常な力の強さを示し、彼我の実力の差を騎士に知らしめる。勝てないと本能で悟るにはじゅうぶんな光景だった。
「…魔女の癖にその戦い方はなんだ…肉体強化は見た事があるがそれ程の魔法じゃ無い、それは魔女の力じゃない…」
騎士は敗北を悟り、力なく呟いた
「私、多分アンタの事嫌いじゃない。なんだかそう思った。だから提案なんだけどそっちの内部情報の提示、こっちの情報の秘匿、協力を約束すれば命は取らない。どうする?」
「断る!殺されようと構わない、守る物の為に死を選ぼう!」
「そう言うと思った…。だったら早く死んだ方が良い。あの子が来たらアンタ死ぬより酷い目にあうからね。」
「アンタ、名前は?」
「ロザリアだ」
「私はアイリス」
魔女の一撃が振り下ろされた。