第六章登場人物紹介(ネタバレ全開)【挿絵】
【アミュウ・カーター】
十八歳くらい。幼少時にセドリックに拾われ、カーター邸の養女となる。しっかり者で冷静、芯が強い。
幼くして魔術の才をメイ・キテラにより見出され、彼女のもとで古の魔術の手ほどきを受ける。メイ・キテラから教わった領域は、儀式魔術や結界、杖による飛行、薬草学にとどまらず、恋のまじないや占い、堕胎の方法に至るまで幅広い。
その豊富な知識を活かしてラ・ブリーズ・ドランジェでは卜占の活動を行うが、調香師ドロテから受けた恋占いの依頼では、結果を吟味せず、なし崩し的に恋のまじないを教えたため、牧師モーリスの人生を大きく変えてしまった。モーリスが教会を去ったことに負い目を感じたアミュウは、彼がカーター・タウンで医院を開く決意をした際、師メイ・キテラの住居を使うよう勧める。
また、フォブールに暮らすダミアンの妻ハリエットのお産を介助した際、アモローソとなり果てたナタリアと再会し、国産みへの協力を得ようと説得するも、物別れとなってしまう。
【御神楽 聖輝】
二十六歳。剣を持つ者パラケルススとともに、この世界ドムスルミニスを生み出した極東ジャポンの魔術師ミカグラの末裔。聖霊の申し子として、パラケルススの魂を受け継ぐ運命の女とともに完全な大地を創世する使命を帯びている。
アミュウとともにカーター・タウンへ向かう際、巨大な毒蛇に肩を咬まれ、出血毒を受けてしまう。カーター・タウンに流れ着いたモーリスが機転を利かせて抗毒血清を投与したが、出血毒の影響が完全に抜けきらないまま、アモローソによって刺されてしまう。
【ジークフリート・ヴィルヘルムス】
十九歳。土砂崩れにより壊滅したヴェレヌタイラ出身。カルミノによって負わされた背中の傷が癒えないまま、消えたナタリアを探そうとソンブルイユの街へ繰り出した結果、傷が開き細菌感染を起こし、教会の施療室へ送り込まれた。
アモローソに刺された聖輝の止血を試みるアミュウに、ナタリアを追えと叱咤する。
【アモローソ・ディ・ロウランド】
ナタリアの変貌した姿。
革命時代に己の罪を悔いて塔から身投げし、月へ召されたというおとぎ話が伝わっているが、実際はパラケルススの魂を受け継ぐ運命の女。時の聖霊の申し子であった御神楽啓を手にかけたことで、月へと昇り、光の家の管理を担っていた。
今は衰弱し力を失って地上に降りているが、その力は計り知れない。国産みへの協力を拒み、滅びた王国の再興を目指すと宣言して姿を消す。
ナタリアとしての記憶も保持している。
【セドリック・カーター】
五十二歳のカーター・タウン町長。ナタリアの実父で、アミュウの養父。
長期的な視点から町の発展を見込み、あえて街壁を設置しない方針をとり、ソフト面による対策を行っていたが、大型獣の町への侵入を防ぐことができず、町南部の農耕地帯は壊滅的な被害を受けた。獣害の責任を問われ、多くの町民から町長の座を退き対立候補ケインズ・カーターへ譲り渡すよう迫られている。
最愛の娘ナタリア失踪の原因のひとつとなった聖輝に対しては非常に複雑な感情を抱いている。
【メイ・キテラ】
大型獣の襲来からカーター・タウンを守るために命を落とす。享年六十八歳。アミュウの第一の師。古の魔術への造詣が深く、また薬草学や医術にも通じていており、教会による施療からは完全に独立しながらも、カーター・タウンの医療の片翼を担っていた。厳しい物言いと態度から誤解を受けることもあるが、一部の住民からは絶大な信頼を寄せられていた。
【モーリス・ベルモン】
三十二歳。ラ・ブリーズ・ドランジェの助祭であったが、ドロテの媚薬により貞潔の誓いを破られて、教会を去る。行くあてもなくカーター・タウンに流れ着き、大型獣の襲来により傷付いた住民たちの手当をしていくうちに、この町で医療に携わる決心を固める。
温厚篤実で、非常に穏やかな人物。
【マッケンジー・オーウェン】
カーター・タウンの一人司祭。カーター・タウン教会を司教座聖堂として、自らが司教となることを目標としているが、その座は聖輝の出世ポストと噂されているため、蛇毒に冒された聖輝の治療を拒んだ。
【ドロテ・モイーズ】
二十六歳。ラ・ブリーズ・ドランジェの調香師で、エミリの娘。牧師モーリスへの盲目的な恋慕により、結果的に彼を聖職から追いやることとなった。
香水作りの腕は確かで、けもの避けの香水を製作し、自らその効果を実証する。
【イアン・タルコット】
十一歳。アミュウの顧客ジョンストンの息子。病気の父親を抱えて畑を守ってきたが、父親の抑うつが改善傾向へと向かった矢先、けもの騒動で自宅が壊滅状態となる。
メイ・キテラの死をアミュウに知らせた方がいいと提案した。どうやら、アミュウに淡い感情を抱いている様子。
【エミリ・マルセル】
カーター・タウンはキャンデレ・スクエアのスナック「カトレヤ」のママ。還暦を過ぎているがまだまだ美しい。お節介焼きで、アミュウを実の娘のようにかわいがるが、実のところ、実の娘はドロテである。
ラ・ブリーズ・ドランジェの噂話によると、妻子持ちの男性と不倫に走り、ラ・ブリーズ・ドランジェから逃げ出したらしい。
【ダミアン・カーター】
二十二歳。カーター・タウン町長選におけるセドリックの対立候補、商工会会頭ケインズ・カーターの一人息子だが、収穫祭当日に行方をくらませた。現在はフォブールで妻ハリエットとともに慎ましやかに暮らしている。人当たりの良い好青年。
【ハリエット・カーター】
二十三歳。ダミアンの妻。ダミアンに対する愛情はあるものの、ケインズに認められずに駆け落ちをしなければならなかったことや、妊娠により自身の体が変化していくことに戸惑いを感じている。
【グレゴリー・エヴァンズ】
七十二歳、スタインウッドの老司祭。家畜の臓物を用いた禁術の結界を村に張り巡らせるが、その責任を後継の牧師フェルナン・マニュエルに全て負わせ、自身がスタインウッドの牧師へと返り咲く。
以前はアミュウたちに痺れ薬を飲ませたこともあったが、養子ジャレッドの将来を案じて隠蔽に走っただけであり、アミュウたちに恨みがあったわけではないらしい。
【ジャレッド・エヴァンズ】
四十歳。既婚者。グレゴリー・エヴァンズの養子で、スタインウッドの牧師職を継ぐことを期待されていたが、知見を広げるためという名目で留学に出たソンブルイユ教会へと籍を移し、人脈を構築し、同教会の助祭となった。
まだスタインウッドにいたころ、スタインウッドの牧場の娘マイラに目を付け、彼女がカーター・タウンのジョンストンと結婚すると因縁をつけた。婚約破棄となったジョンストンの元フィアンセであるルシール・スカーレットをけしかけてマイラに嫌がらせをし、憔悴したマイラが実家に戻りスタインウッド教会で修道の道に入ったところで彼女に禁術の呪法を教え、幼いイアンもろともジョンストンを呪い殺そうとした。
また、近年、カリエール法王の右腕となってからは、ロウランドの斎宮離宮へ足繫く通い、アカシアの記録に精通することとなる。
【御神楽 深輝】
二十九歳。聖輝の姉。アカシアの記録の未来の記述を読み取ることのできる巫女として、長く斎宮の任に就いていたが、表向きは任期満了、その実は妊娠を理由に職を離れる。
未来を見通せる自身の能力により孤独と絶望に苛まれていたところを、ジャレッドに付け込まれ、彼と関係を持つ。
【八栄】
御神楽邸に仕える女中。失踪した姉の息子・ヒコジを育てている。世話好きで心優しく、穏やかな人物。聖輝も深輝も彼女を信頼している。
【カリエール法王】
教会の最高権力者。国王に引けを取らないほどの権力を持つ。
【ウジェーヌ・ドゥ・グレミヨン】
ソンブルイユ大司教にして枢機卿。国王派筆頭。五十二歳。
【リゼット・ドゥ・ベランジェ】
グレミヨンの姪にして秘蔵っ子。十八歳。精細な地の精霊魔術を操る。口が悪い。
【オーギュスト・ドゥ・ベランジェ】
内務大臣。リゼットの父。
【ユーグ・ドゥ・ソンブルイユ】
国王。中央集権体制の強化を図ろうと、ブリランテの自治権を取り上げようと模索している。
【リシャール=アンリ・ドゥ・ディムーザン】
ラ・ブリーズ・ドランジェ司教にして枢機卿。法王派筆頭。四十八歳。成り上がり者で、非常に出世欲が強い。自身の立場の強化のために、娘マリー=ルイーズを御神楽家に嫁がせようとした。最近は聖霊の申し子である聖輝が関心を寄せている、運命の女ナタリアを手中に収めようと躍起になり、カルミノやロサを差し向けていた。
【カルミノ・ザッカリーニ】
リシャール=アンリの傭兵。三十九歳。アミュウたちがソンブルイユ入りした翌日未明、ピッチを連れてさまようナタリアから、奇妙な取引を持ちかけられる。彼女と行動を共にしたのはほんの短い時間だったが、彼の中でアミュウたちに関する受け止め方が変わったようで、わずかに態度が軟化する。
御神楽邸襲撃の件ではリシャール=アンリとマリー=ルイーズからこっぴどく絞られた。
【ロサ・ガリカ】
リシャール=アンリの私設魔術師。三十二歳。職務上、カルミノとは行動を共にすることの多い腐れ縁。マリー=ルイーズよりピノ(ピッチ)捜索を命じられていたが、ナタリアへの懐きようを見て、ナタリア本人をマリーに引き合わせることとした。
ソンブルイユ郊外に大猫が出現した際は、アミュウやアルフォンス、リゼットと成り行きで共闘するに至った。




