第五章登場人物紹介(かなりネタバレ)【挿絵】
【アミュウ・カーター】
十八歳くらい。幼い頃に拾われ、カーター邸の養女となる。しっかり者で冷静、芯が強い。
亡ロウランド王国の姫アモローソに成り代わる夢に悩まされてきたが、フォブールでの夜を最後に、不思議な夢はぱたりとやんだ。
古い魔術に通じており、飛行術や儀式魔術の必須の結界を張ることを得意としているが、四大元素の精霊を操る精霊魔術はまったく使えない。そのため、六年前に精霊魔術が重視される魔術学校からドロップアウトした。失意の彼女は、うだつの上がらない学者アルフォンスと出会い、彼との共同研究で空間制御の魔術の基礎を確立するに至る。
ナタリアとの距離の取り方を見誤り、聞かせるべきではない話を聞かせてしまったと、彼女の失踪に負い目を感じている。
【御神楽 聖輝】
二十六歳。特殊な力を持つ「聖霊の申し子」として、枢機卿の家系である御神楽家に生まれた。一家の――特に父・糺からの期待を一身に背負った彼は、御神楽の重要な手駒として、半ば傀儡のような扱いを受けていたらしい。そのためか、聖輝自身も他者を道具のように見ている節があったが、彼なりに葛藤を抱えている。
アミュウの第二の師アルフォンスとはそりが合わない。
【ナタリア・カーター】
ソンブルイユに到着した日の明け方、フォブールで行方をくらます。
失った記憶を取り戻そうと、縁切りのまじないに使われた小柄と揃いの刀を探して、博物館や教会の武器庫、王城の宝物庫に忍び込む。御神楽の屋敷でついに刀を見つけ出し、まじないを解いてアモローソ王女へと変貌する。
【ジークフリート・ヴィルヘルムス】
十九歳。三年前、土砂崩れにより故郷ヴェレヌタイラを失ってから、自身の腕だけを頼みに傭兵として生き抜いてきた。
ナタリアとは良い雰囲気であっただけに、彼女の失踪が相当堪えていて、以前の開けっぴろげな気さくさはなりを潜め、聖輝に食ってかかるなど、鬱屈している。
カルミノの襲撃により背に傷を負う。
【アルフォンス=レヴィ・コンスタン】
アミュウの第二の師。三十七歳。蚤の市で偶然見つけた御神楽家の古い手記をもとに空間制御術の理論を研究していたが、国王派筆頭・ソンブルイユ大司教枢機卿のウジェーヌ・ドゥ・グレミヨンに目をつけられて以来、グレミヨン卿から研究成果を隠すべく研究を打ち切り、精霊鉄道の機関部の設計に携わっている。風の精霊魔術を操るが、研究職が本分であるためスタミナが続かない。
【御神楽 深輝】
聖輝の姉。二十九歳。弟思いの姉で、優しく気の利く性格。体調のすぐれないことが多い。ジャレッドの言によると、巫女・斎王としてロウランドの斎宮に入っていたが、妊娠により解任となったらしい。
【リゼット・ドゥ・ベランジェ】
国王派筆頭・ソンブルイユ大司教枢機卿ウジェーヌ・ドゥ・グレミヨンの姪で秘蔵っ子。大臣を父に持つ。人形のような見た目にそぐわず、歯に衣着せない物言いで周囲を振り回す。たいへん緻密な地の精霊魔術を扱う。
【ジャレッド・エヴァンズ】
スタインウッドの司祭グレゴリー・エヴァンズの養子で、学問のためにソンブルイユへやってきたまま、故郷に帰らずソンブルイユで助祭になった。狡猾な男で厭味ったらしい。仕事でロウランドの斎宮へ行くことがあるらしく、深輝の妊娠を知っていた。
【御神楽 糺】
聖輝と深輝の父。五十八歳。聖輝とそっくり。ドライな性格で、娘と息子を厳しく育てる一方、手駒として見ている節がある。妻に愛想を尽かされ別居中。御神楽の血を引いているが、自身にアカシアの記録を読む力は殆どない。
【マリー=ルイーズ・ドゥ・ディムーザン】
ラ・ブリーズ・ドランジェ司教枢機卿リシャール=アンリ・ドゥ・ディムーザンの一人娘。二十三歳。世間知らずなお嬢様だが聡明で、情け深い。カーター姉妹を気にかけ、三角貿易事件がカーター・タウンへ及ぼす影響にいち早く気が付き、不自由な身でありながらもお忍びで御神楽邸に駆け付けた。八年前に聖輝との縁談が破談となってからも、父からは聖輝との結婚を望まれている。
【ロサ・ガリカ】
ディムーザン枢機卿の私設魔術師。三十二歳。火と水の精霊魔術の威力は驚異的。精霊魔術を扱うことのできないアミュウをペテン師呼ばわりして何かと喧嘩を売ってきたが、大猫が精霊鉄道の行く手をふさいだとき、なりゆき上アミュウと共闘してからは、少しだけ見方を変えたらしい。
【カルミノ・ザッカリーニ】
ディムーザン枢機卿の雇った傭兵。三十九歳。失踪したナタリアとなぜか行動を共にし、御神楽邸を襲撃した。




