第五章 あとがき【挿絵】
本作を読んでくださりありがとうございます。皆様のお陰で「月下のアトリエ」をここまで書き進めることができました。
第五章「たそ歌うありし日を」では、物語の本筋が大きく動きました。テーマは「喪失」。ナタリアは失踪し、アミュウは最愛の姉を探して王都のあちこちを奔走しますが、街は広く、なかなか見つけることができません。ナタリアがいなくなったことなどものともせず、大都会は慌ただしく年末年始を迎えます。聖輝やジークフリートと街歩きを続けるうち、アミュウはいくつかナタリアの痕跡らしきものを見つけます。そして、糺が啓枢機卿の刀を引っ張り出してから数日後、とうとうナタリアは姿を現します。しかし刀を手にしたナタリアは、アミュウの知るナタリアではなくなってしまいました。
第四章のラストで、ラ・ブリーズ・ドランジェからソンブルイユへの移動手段として用いた精霊鉄道が、第五章ではそのまま大立ち回りの舞台となります。アミュウたちに迫るのは、革命時代にもソンブルイユを襲ったとされる大猫。共闘相手はかつての師であるアルフォンスと、まさかのロサ・ガリカ。なんともちぐはぐな組み合わせですが、三人は見事に大猫からソンブルイユの街を守り抜くことができました。
ナタリアを失ったアミュウですが、実はここソンブルイユでは色々な縁を得ています。アミュウが再び前を向いて歩いてゆけるよう、読者の皆様におかれましては引き続き物語をお見守りください。
さて、次章「きくは我」は、タイトルどおり本章の続編となるお話です。しばらく執筆や読書のためお休みをいただきまして、二〇二一年春の連載再開を予定しております。お待たせしてしまいますが、筆者自身の納得のいく物語を仕上げるために必要な準備期間ということでご理解いただけましたら幸甚です。
なお、「月下のアトリエ」は二〇二〇年二月二十八日に五万プレビュー、同年六月二十一日に六万プレビュー、同年八月二十九日に七万プレビュー、そして同年七月二十六日に二万ユニークユーザーアクセスに到達しました。これらの数字の向こうに見える、読み手の皆様のぬくもりに、いつも励まされております。心から感謝申し上げます。
~ここまでの参考文献~
・「わるい花」レミ・ドゥ・グルモン(Remy de Gourmont)上田敏訳<青空文庫>




