最後まで共に
圧倒的に文章力がないのでガバガバです。
詳しいことはあいにく調べていないので
間違った情報があったらすみません。
ぜひ、短いので最後まで読んでみてください。
どこにでもあるような一般市民の家のリビングでソファーに寝っ転がりながらテレビを見る、これが俺、吉田光の夏休みの暮らしだった。父は単身赴任するという時に、母もついていくとなって2人で父の働く会社の支社がある福井へ引っ越した。だから俺は一人暮らしだ。だからこんなだらしない暮らしでも誰も文句は言いに来ない、はずだった。
「ちょっと光!またそんなだらだらして!」
こう言ってくるのは幼馴染で昔から近くに住んでいる斎藤あかりだ。
両親が引っ越す時に俺のことをしっかり監視してほしいと頼まれたらしく、毎日のように俺の家にやって来て俺にとやかく言う。全くもって迷惑だ。
俺は1人でゆっくりと過ごしたいのにまるで母になったかのように小言を言うのには聞き飽きた。
「光!早く起き上がって!もう、はい」
手を差し伸べてきてさすがに起きるしかなく俺はしぶしぶあかりの手をとって起き上がった。
「ん、もう光時計見てよ。もうお昼の1時だよ?お昼ご飯食べる時間じゃん」
「わかってるよそんなの」
「わかってるのならせめて自分で作りなさいよ」
「そんなのあかりが作ってくれるからいいじゃねえか」
「私に頼ってばっかりじゃ成長しないじゃないの」
そう、あかりは毎日家に来て昼ご飯、さらには晩御飯まで作ってくれる。
これは夏休みだけというわけではなく、普段の学校がある時でも弁当と晩御飯を作ってくれるのだ。これについては少し感謝しているがもちろん口にはしない。
したらもっとうるさくなりそうだしな。
そんなこんなで俺は机に行き、あかりが作った焼きそばに箸をつけた。
うん、やっぱおいしい。
あかりは料理もうまいのだ。絶対に褒めないが。
そうして、2人で焼きそばを食べていると、俺がつけたままにしていたテレビではニュースをしていた。
「来月の9月10日に地球に彗星HAIZIが急接近する見込みです。これは最近見つかった新しい彗星ですし、かなり大きいのでとても楽しみになりますねぇ。各地の天文館、展望台などではこのビッグイベントをたくさんの人に楽しんでもらおうと様々な企画を行う予定だそうです」
「へー、彗星なんて来るんだね。光は知ってた?」
「いや、初めて知った。来月か、楽しみだな。」
「あ、このイベント、今日から実施じゃん。行かない?今画面に映ってる笹陽天文台っていうの。気になる」
「他の友達と行ってこればいいんじゃないか?」
「だめだよそんなの、今日は夏休みの日曜日だよ?みんなデート行ってるもの。」
「マジかよ、ってお前たくさん友達いるだろ?さすがに全員付き合ってるってわけじゃないんじゃないのか?」
「うーん、別にいるんだけどー、なんか付き合ってない子っていい子なんだけど、夏休みに会うと私がいろんな人の告白を断ったりしているのに彼氏とこんな日にデートしなくていいのかってかなり聞かれちゃうんだよね」
「あぁ、なるほどな」
あかりは世間一般的に見ると10人すれ違えば10人すれ違う美人だ。学校でもたくさんの男子に告白されている。しかし彼女は彼氏がいる、というのを理由にその男子達をフってきたのだ。
それはほとんどの生徒が知っており、あかりにはイケメンの彼氏がいるということになっている、が、実際にはあかりにら彼氏なんていない。だからこうして俺の家に世話を焼きに来ているわけだ。
「だから、私と来てくれない?このイベント」
「ちっ、わかったよ」
「というか、来なさいよ、普段のお礼として」
「お前が勝手にしてるだけだろ」
「そんなんずっと言ってたら私何もしないよ?」
「...」
「困るならついてきなさい。いい?命令ね」
こうして、俺はあかりと一緒に笹陽天文館に行くこととなった。
「来月の10日に地球に最接近する彗星HAIZI、これは日本では主にカタカナにしてハイジ彗星と呼ばれています。なぜ彗星とハイジという順番が入れ替わったかはただその方が語呂がいいみたいな感じでなっただけなので気にしないでくださーい。さて、説明する前に何かこれは聞いておきたい!ということがある人は手を挙げてくださーい。はい、そこの黒い服の方!」
「このハイジ彗星というのは最近発見されたというのはどうしてなのでしょうか。」
「ではそこを中心にして、説明していきますね。先程の方が言ったようにこのハイジ彗星というのは最近見つかったかなり新しい彗星なんです。どうして最近になって見つかったかというと、どうやらほかの恒星の周りをまわっていた彗星がこちらの太陽系に来たみたいなんです。その来たというのが最近みたいで。そして、なんといってもこのハイジ彗星の凄さは大きさです。小惑星に匹敵するんじゃないかという大きさなんです。なので地球に接近する時もかなり大きく見えると思われます」
ー数分後ー
「〜ということです。これで説明は終わりなのであとは是非こちらの展示などを見ていってください。質問があれば当館の係員に尋ねてくださいね」
そうして、笹陽天文館の係員の説明は終わった。
「光、こっちの展示見に行こう」
「わかったから手を繋ぐなよ。こんなとこじゃ恥ずかしいじゃねえか」
「そんなこと言わずに!こっちこっち!」
あかりが進んでいく先を見るとそこには、ハイジ彗星を発見した天文学者や、命名の理由などが書かれてあった。
「え!ハイジ彗星見つけたのって日本人だったんだ!」
あかりが指差す先を見ると確かに発見者のところには『岡田智也』と書かれてある。日本人だったのか。すごいな。
「ほんとだな。日本人なんてこれは日本人として誇らしいなぁ」
「なんか日本人が発見したって聞くともっと楽しみになってくるね」
「あぁ、そうだな」
「光一緒に見ようね」
「あぁ」
一緒に花火大会に見に行ったこともあるし、同じような感じだろうと思い俺はあかりの誘いに了承した。まだまだ先のことだしな。他の奴と行きたいと思えば言っても間に合うから大丈夫だろう。
命名の理由はなんだろう?と思い見てみるとそこには一言、「アルプスの少女ハイジが好きでそこから少しあやかりました」
いや少しじゃねえだろ...。
こうして、意外にも笹陽天文館で俺は楽しい時間を過ごした。
それから2週間ほどたって、9月となった。遂に、ハイジ彗星の地球への大接近まで10日と迫り、世界中がはしゃいでいた。まぁ、俺たちもだ。
9月6日、俺とあかりの通う高校の2学期の始業式があった。少し遅めだ。
久しぶりの学校というだけあって、友達の何人かはかなり日焼けしている。
日サロに行ったのか、というレベルだ。
まぁそんな奴らはだいたい彼女がいるやつだからどうせ海にでも2人で行ったのだろう、そんなことを考えていると俺のところにその焼けたやつが来た。
「なぁ、光はあかりと海とかデート行ったりしたのか?」
「んなわけあるかよ...、あいつには俺じゃなくてイケメンの彼氏がいるだろ」
「え、彼氏がいるってお前じゃなかったのか?!てっきりお前だと思ってたんだが...」
「はぁ?ちげーよ。俺じゃねえよ」
あかりに彼氏がいるというのがまさか俺と勘違いされてたとはな...
まぁ実際には彼氏がいないとは言え、イケメンの彼氏がいるというのが俺だとあかりに失礼だな。一応伝えておくか。
「おーい、あかりー」
「ん?何ー?」
「お前さ、彼氏がいるって設定になってるだろ?その彼氏っていうのが俺って認識だったらしいぞ。全くみんな何を見てるんだろうな。」
「...ゎ、私は別にそれで...」
「ん?何か言ったか?」
「い、いや、何でもない!」
「...?」
「それよりも!彗星まであと4日ってほんとワクワクするね」
「あぁ、そうだな」
「一緒に見るって言ったの、覚えてる?」
「そういえばそうだったな」
結局他の友達とも一緒に見る約束してなかったな。
「私がいつも夜ご飯作ってるのをその日は外食して見ない?」
「あぁ、いいぞ」
「ありがとっ!」
そんな会話もあり、夜、あかりとご飯を家で食べながらテレビを見ていると突然テレビにニュース速報が表示された。
「世界宇宙科学研究所発表、10日に接近の彗星HAIZIが地球に衝突する恐れ」
「なっ...」
俺もあかりも声が出なかった。
すぐにそれまでの番組が切り替わりニュースとなった。
「今字幕で表示されている通りつい先程、世界宇宙科学研究所が彗星HAIZIが地球に衝突する恐れがあると発表しました。今より世界宇宙科学研究所の会見へとうつります。」
かなり急いだ様子でアナウンサーが言うと、画面が切り替わって、言っていた世界宇宙科学研究所の会見の映像になった。
「彗星HAIZIというのは、最近見つかったものではありますが、計算通りの軌道を進んでおり何も問題なく接近し、離れていくはずでした。しかし、先程の観測により、恐らく昨日のいつかに何らかの軌道修正があり、このままだと地球に衝突するということが明らかになりました。未だ彗星を形成する物質が不明ですし、どこに衝突するかなど、詳しいことはわかっておりませんので実際に地球に与える被害はまだわかりません。しかし、巨大な面から、地球の大気圏で、燃え尽きてしまうということは考えづらく、何らかの被害が出ることは明確です。また詳細が予想されしだい会見を開きたいと思います」
そうして、会見が終了すると、どのチャンネルでも全番組の放送を急遽取り止め、この彗星に関するニュースを放送することになった。
「え...、彗星が地球に衝突するっていう...の?」
あかりがとても怯えた表情で俺に聞いてくる。そんなこと言われても俺にはわからねぇよ...
「い、いや、まだ衝突する恐れがあるだし...。だ、大丈夫かもしれない」
「...」
くそ、俺だって怖いのに、あかりが怯えている前でそんなこと言えない。本当に地球に来るのか?なぁ、これは夢じゃないのか?
そんなことを思ううちに、あかりは家に帰り、夜も更けていった。
次の日の朝になるとより詳しい情報が発表されていた。
ニュースをつけてみる。
「彗星HAIZIはこのまま軌道が変わることなく進むと、最接近されると言われていた10日ではなく、その翌日の11日の未明に地球に衝突すると見られます。地球へもたらす被害ですが、彗星でありますので、質量が大きいというわけでなく、、たくさんのガスや微粒子なので本来であれば、さほど何もありませんでした。しかし、今日未明になって観測により、全てがガス体ではなく中心に小惑星があることが明らかになりました。このことにより、地球に衝突した場合この中心の小惑星は大気圏で燃え尽きてしまうことなく、地表に達すると見られています。落下地点予想は新潟県沖の日本海で、落下時の衝撃波は約2000キロメートルに広がり、壊滅的被害をもたらすと思われます。また、その小惑星に付着した物質が衝撃により大気中にばらまかれ、汚染が広がり、地球上の生命は...」
ニュースを読み上げるアナウンサーの言葉が繋がらなかった。俺も皆も...地球上の全ての人がこの日、過去最大の絶望を抱いた。
そして、この日、この事実を受け全ての学校が休校、通信、電気、水道、ガスを除く全ての会社が無期限で活動を取りやめることとなった。
そのことにより、交通機関も停止し、俺は離れた父と母に会えることができなくなった。他の人もそうだった。
皆が大切な人ともう会えないという状態になり、ネット上では皆の錯乱した投稿があり溢れていた。
もう11日の未明に地球に衝突することを考えたら今日はもう7日だから、あと実質4日間しかない。もう、地球上の全ての人の命が後4日で失われるのだ。どんなに幼い赤ん坊も、どれだけ今まで長い時間を生きてきたおじいさん、おばあさん達も、皆4日後の未明には存在しない。学校のみんなも...。父も母も、もう会えない。あと4日間しかないのに、会えないんだ...。大切な人が...
「あかり...」
気づくと俺の目から涙が流れていた。
あかりに、あかりに会いたい。
気づくと俺は家を飛び出し、あかりの家へと走っていた。
あかりの家の前についた。俺がずっと悲しんでいる間に既に日は完全に沈み、空は暗闇に包まれていた。
俺はあかりの家のインターホンに指をのせた。そしてさぁボタンを...という所で、不意に上から水がたれてきた。
上を見上げると、そこには2階のベランダに出て泣いている...あかりの姿があった。
「えっ...あかり...?」
「...っ!光?!えっ光?光なの?!光...」
彼女はよりいっそう涙を流し、こちらを見た。そして、俺とはっきりわかるとすぐに1階まで降りてきてドアを開けてくれた。
「入ってもいい?」
「うん!」
「お邪魔します」
家に入るとそこにはあかりの両親の姿がなかった。
「あれ...、お父さんとお母さんは?」
「...今旅行中だったの」
な、なんて...。
「そ、それじゃあ...お前もずっと1人でいたの...か?」
「うんっ...」
あかりがそう言った瞬間俺はあかりに抱きついた。俺の目にもあかりの目にもたくさんの涙が溢れて流れていく。
「俺は...お前が好きだ。今日ずっと1人でいて、お前のことばかり頭に浮かんだんだ。それで気づいたんだ。俺には...お前が、あかりが1番大切な人なんだ。最後の日まで...ずっと、お、俺と一緒にいて欲しい」
俺がそう言うとあかりは涙ばかりの顔で笑って言った。
「私も...ずっと、ずっと前から、光のことが大好き。誰よりも1番光を愛してる。幼稚園の頃も、小学生の頃も、中学生の頃も、今もずっと愛してる。私も...光と一緒にいたい...。」
「俺をずっと好きでいてくれたのか...」
「うん...そうだよ。気づくのが遅すぎるよ馬鹿...」
「すまん...ありがとう」
俺はもっと強くあかりを抱きしめた。俺は本当に今までどうして気づかなかったのだろうか。ずっと俺の横にはあかりがいて、あかりの横には俺がいたのに...、どうして俺は今まで...
「光...どうしてそんな苦しそうにしてるの...私は今嬉しいの、光が私のこと好きでいてくれて。そんな顔しないで...あと...もう時間がないんだから...」
あぁ、本当にどうしてこんなことになるんだ。俺は彗星が来るからこそこの気持ちに気づくことが出来たのかもしれない。でも...どうしてあと4日なんだ...。そう思うとまだまだ涙が止まらない。
そんな俺を見た涙まみれのあかりは...
彼女の唇と俺の唇を重ね合わせた。
「んっ...」
お互いの舌がお互いの口の中を走り回る。2人の唾液が2人を引き離さないように舌と舌を繋げる。いつまでも止めたくない、そんな長い長いキスを俺たちはした。そして、そのまま俺とあかりは体を交わらせた...
明くる日、9月8日の朝、俺もあかりも涙は枯れ果てたが、心は落ち着きを取り戻した。
あかりの家の冷蔵庫にある残り少ない食材であかりは朝ごはんを作ってくれた。
「あと3日間だな...」
「そうだね...」
そこから会話は進まなかった。いつもなら2人でご飯を食べる時、ずっと話しているのに、あと残された時間が限られた今になって、どうして俺は話せないんだ。
それからネット上を見てみるともう誰も投稿していなかった。あんなにたくさんの人が喋っていたのに...。俺も何もすることなくネットを見るのをやめにした。
それからも俺とあかりは会話がもたなかった。ずっと同じ部屋に2人でいて、テレビもつけていない。それなのにあかりは何もしゃべらず、俺が話しかけても俺は会話を続けることができなかった。
そのままその日も、次の日も時間は一瞬のうちに過ぎ去っていき、9月10日をむかえた。
久しぶりにテレビをつけてみると、もうニュースさえ放送されていなかった。画面にはただ「今までありがとうございました」と書いてあるだけ。
本当に地球にハイジ彗星は衝突するのか、なんとかして軌道をそらせないか、そんなことももう考える気になれなかった。もう皆に残された道は「死」ただひとつ。俺もあかりも明日の朝にはこの世にはいない。思えば思うほど悲観的になっていくのが自分でもわかったがそれを止めることはできなかった。ただひとつの救いは死ぬのがあかりと一緒、それだけだろうか。あかりもそう思ってくれているのだろうか。少し不安になったもののもはや俺にはそれを問うことさえする気力がなかった。完全に無気力だった。
もうあかりもご飯を作ることはなくずっと座って下を向いている。また8日と9日のように何もすることなくただ時間だけが過ぎていった。
気づくともう9月10日が終わり、9月11日が始まっていた。俺はあかりのそばに行ってあかりの手を握った。あかりが俺の微笑み、俺も笑った。もう死ぬ恐怖なんてないのかもしれない。空を見上げるとたくさんの星が光輝いていた。こんなに美しい星空の下で死ぬのは嬉しい。そう思っていると、空高くから彗星が見えてきた。それはどんどんと大きくなって...
俺とあかりはみつめあって最後のキスをした。
「今まで俺と一緒にいてくれてありがとう」
「こちらこそっ...」
その時空が真白く光ったと思った時には、もう俺とあかりはそこにいなかった。
最後までお読みいただきありがとうございました。
なろう初心者ですので、誤字や、間違いでも感想をいただけたら嬉しいです。