ヒロイン、リストラされる。
私、前世の記憶があるんだぁ。しかもここじゃない、異世界の記憶。
前の世界でンなこと言った日には、良くて冗談扱い、悪ければ病院送りになると思う。というか、もし私自身が当事者でなかったら、私だって爆笑するか病院を勧める。
でも、本当なんだ。ユーリちゃん、嘘つかない。
私、ユーリーン・ディウスは、この世界に来る前、木下優理って名前でJKやってた。
正直、死因とかは一切覚えていない。本当はこれは夢で、現実の私は死んでなんていないのかも知れないし、あるいは現ユーリーンとしての私が脳内で捏造しただけの過去なのかも知れない。そのレベルで何故私がここに居るのか、私には分かってない。
で、まあ、その元JKがね? 今、ファンタジーの……しかも、ゲームの世界にね、居るんですよ。
今流行りの『異世界転生』ってやつだと思うんだけど、輪廻にも流行り廃りがあるんだなって、ちょっと関心。
簡単に説明すると、ここは剣と魔法の王道ファンタジーRPG、『最果ての記憶』っていうゲームの世界なんだ。
何で分かるのかって? 私の名前と外見が、そのゲームのメインヒロインと完全一致するからですねー。
話を戻そう。
『最果ての記憶』は、記憶喪失の青年が主人公で、自分の記憶を求め、仲間達と旅をする物語。勿論、最終的には色々あって魔王倒すことになるよ!
で、『最果ての記憶』において欠かせないキャラクターのひとりが私。ユーリーン・ディウス。
ユーリーンは地方の田舎貴族のひとり娘なんだけど、まあ、色々あって、主人公の旅に同行することになるのね。……さっきから色々で端折ってるけど、本当に! 色々あるんです!
話戻すよ。結構女の子のキャラが出てくるこのゲームにおいて結構終盤に仲間入りするユーリーンなんだけど、そのユーリーンがメインヒロインとして扱われる理由は、たったひとつ。
ユーリーンは、実は、聖女の卵なのだ。
……なのだっ!
具体的には、聖剣を入手するための鍵のような役割に始まり、魔族の汚染された土地を旅する時のバリアー的な役割。それから大事なことなんだけど、実は正体が半魔族!の、主人公の精神的サポート。これが、物語のメインヒロイン、ユーリーン・ディウスに課せられた大きな役割。
特に最後のが割と重要で、主人公が精神的にこう……暗黒面?に落ちると、最終的に主人公は第二の魔王となって、世界に君臨してしまう。それを謎の聖女ぱうわーで癒すのって、凄く重要なの。
魔王討伐の旅に、ユーリーン・ディウスが居ない。
ここは、たったそれだけの、偶然起こり得てしまう可能性で滅んでしまうような、そんな世界なんだ。
だからね、私、頑張った。
夢かも知れない。妄想かも知れない。でも、たったちっぽけな可能性で、世界が滅んでしまうよりずっといい。
だから、ずっとずっと、もしその時が来たら足手まといにならないようにって、私、すごーく頑張った!
のに、何でこんなことになったのかなぁ?
物語のメインヒロインこと、私、ユーリーン・ディウス。
つい今朝方、その主人公パーティーに、置き去りを食らいました。