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第四章 5


 瓦礫が雨のように降ってくる中を、リロイは駆け抜ける。

 足下で、屋根瓦が次々に砕け散った。


 唸りをあげて飛来し、頭上を掠めていったのは割れた壁面の一部だ。

折れた柱は回転しながら飛んできて、前方の街路に突き刺さった。衝撃で剥がれた木片が、リロイの顔を打ち据える。

 まっすぐ直撃コースを突き進んできたのは、巨大なテーブルだ。足はすべてへし折れ、天板だけが縁を削られながら迫ってくる。


 リロイは、躱さない。

 剣の腹を、無造作に叩きつけた。


 かなりの分厚さだったが、それを凌駕する打撃力で天板は木っ端微塵に弾け飛んだ。大量の破片を全身に浴びながら、リロイは加速する。

 その足下の石畳はヘカトンケイルが動くたびに波打ち、弾みでずれた敷石が散らばって走りにくいことこの上ない。

 リロイには、なんの影響もないようだが。


「初手から、私が行こうか」


 私は、リロイの斜め後方にいた。

立体映像の姿でリロイと併走できるのは、この辺りが限度だ。


「何分だ」

「三分――いや、二分半か」


 あの巨体を、周囲への被害なく消し去るために要する、〝存在意思〟の調整時間だ。

 高出力による広範囲の殲滅が領分だった私は、これを戦術レベルで使用するために、自らプログラムに変更を加えてきた。出力と連鎖反応の範囲を最小にするのは随分と慣れたのだが、ヘカトンケイルほどの質量となると正確を期する必要がある。


「多少なりとも周囲に被害が及んでもいいのなら、一分半ほどでいけるがな」私は一応、付け加えた。実際、あの近辺に生きている人間がいる可能性は低いが、先ほどの姉弟の例もある。

「足だけなら、どうだ」


 リロイは、ちらりとヘカトンケイルの巨躯を見上げた。「片足だけでいい」


「四十秒だ」

「それでいこう」


 リロイはその言葉を置き去りにして、さらに加速した。

 私は、やや速度を落とす。〝存在意思〟の扱いに集中するためだ。


 リロイの黒い背中が、みるみるうちに小さくなっていく。 


ヘカトンケイルは苦悶に身を(よじ)り、手当たり次第に家屋を薙ぎ倒していた。近づけば近づくほど、瓦礫の雨は激しさを増していく。

 普通なら、足が竦む光景だ。

 そこへ躊躇なく突っ込んでいくさまを後ろから見ていると、勇敢という言葉よりも無謀、命知らず、という感想しか湧いてこない。


 頭部にでたらめな位置で配置されているヘカトンケイルの巨大な眼球が、高速で接近するリロイの姿を捉えた。知能は低く知性は確認されていないヘカトンケイルだが、無数の眼球で取得した情報を処理する能力には長けている。

 だが、接近するもの、という情報に対し、愚鈍な脳が出すのは常に攻撃命令だ。


 (とどろ)くような呻き声を吐き出しながら、巨体が意外なほど俊敏にリロイへと拳を撃ち込んできた。

 人間大の生物なら、問答無用で押し潰す一打だ。

 それが街路に激突した瞬間、押し潰された空気が爆風となって周囲の建築物を薙ぎ払った。


 地面は陥没し、石畳は(めく)れ上がる。

 粉塵と土塊が、視界を奪った。

 飛来する破片は家の壁を突き破り、打ち砕き、吹き飛ばした。


 私は石造りの建物の陰に移動していたが、頭上で爆発音がしたかと思うと、大小の石塊が大量に降ってくる。

私は髪に絡まる小さな破片と埃を手で払いながら、移動を開始した。


 しかしすぐに、足を止める。

 前方にあった三階建ての家屋から、嫌な音が聞こえてきたからだ。

 案の定、傾き始めたかと思った次の瞬間には、轟音とともに横倒しになる。木の裂ける悲鳴と外壁の砕ける重い響きが足下を震わせ、血飛沫の如く木片や漆喰の欠片が飛び散った。


 私が人間だったなら、飛んできたそれらの破片が肉を(えぐ)り、骨を砕いたことだろう。

 立体映像の強度なら、これぐらいのエネルギーは無視できる。


 ただ、大質量に押し潰されたりすれば身動きが取れなくなるし、その場合は一度、立体映像を解除するほかなくなってしまうので、倒壊に巻き込まれることは避けなくてはならない。

私は、ヘカトンケイルに目を向けた。

 なにかを振り払うかのように、全身から生えている大小の腕を振り回し、腹に響く咆吼をあげている。


 その巨躯から四散しているのは、剥がれ落ちた皮膚だ。

 リロイはヘカトンケイルの身体の上を駆け上り、掴みかかってくる腕をかいくぐって剣を叩きつけている。鋭い刃とリロイの膂力を持ってしても、頑強な肌は衝撃で砕けはするもののその奥にまで届かない。


 ヘカトンケイルを倒すには、頭部だ。

 両肩の間に小山の如く盛り上がった肉塊、そこに埋め込まれた無数の眼球と、呪詛を垂れ流す口こそが、ヘカトンケイルの唯一の弱点である。かつても、そこへ火力を集中させるのが常套手段だった。


 ただ、それを阻むのが大小百本近くにも及ぶ腕だ。

 視覚情報に高速反応するそれらの腕は、防御において鉄壁の働きをみせる。それをかいくぐって目や口に着弾させるのに、一体どれほどの弾薬が使われたことか。


 リロイはそれを、身ひとつでやり遂げなくてはならない。

 だからこそ、私の支援が必要なのだ。


 それが痛いほどわかっているから、私は舌打ちする。

 倒壊した家屋を迂回して走り出した私の眼前に、異形が立ち現れた。


巨大な犬の姿だが、頭部の形状は蜥蜴などの爬虫類に近い。鱗に覆われ、鋭い牙を持ち、(ねじ)れた角が槍の穂先のように額から突き出ていた。

赤い瞳が、こちらをじっと観察している。

 その爬虫類の頭部が、上半身から七つほど生えていた。私に意識を向けたのは中央のひとつだけで、あとの頭は、食事に夢中だ。

 そう、その大きな口は、人体の一部を咥えて()(しやく)している。血と脂に濡れた大きな牙は濡れ光り、下顎からは鮮血が滴っていた。


〝闇の種族〟の下級眷属、キリム――グールと同じ、食人の眷属だ。


 家屋の倒壊によって舞い上がった塵芥の中から、ゆっくりと、二体め、三体めが現れる。

 それが十体を超えたところで、私は数えるのを止めた。

〝存在意思〟の調整に意識を集中させると、センサーの精度が極端に低下するのは今後の課題だ。


 溜息をひとつ、吐く。

 それから、調整中の〝存在意思〟に手を加えつつ、身構えた。


 キリムたちは、やや戸惑うようにじりじりと包囲網を敷いている。視覚情報として私を人間と認識したが、人間のような血と肉の匂いがしないからだろう。

 とはいえ、やつらが人を喰うのは食欲のためだけではない。

 野生動物とは違い、腹の具合がどうであれ、人と見れば襲いかかるのはほかの〝闇の種族〟と同じだ。


 私を包囲していたキリムたちは、人肉を咀嚼しながら一斉に襲いかかってきた。


 すでに、迎撃の用意は調っている。

 最小出力に調節した〝存在意思〟をできるだけ細く引き延ばし、鞭のようにしてキリムたちに叩きつけた。


〝存在意思〟のエネルギーに干渉されたキリムの肉体は存在が維持できず、音もなく崩れ去っていく。


 頭部が根こそぎ消失した一体は、自分が絶命したことすら理解できないかのようにそのまま走り続けたが、不意に足から力が抜けて横転した。その弾みで、収縮していた血管が開き、大量の鮮血が迸る。

 胸部がごっそりと抉られた別の一体はもんどり打って倒れ込み、開いた穴から赤黒い臓器を街路にぶち撒けた。立ち上がろうというのか、あるいはただ痛みのためか、四肢が激しく宙を蹴る。


 傍らでは、前足を失った一体が頭から街路に突っ込み、前転したが、その上を後ろから別の一体が踏みつけていった。

 そのキリムも、走っているのは下半分だけだ。

 深く〝存在意思〟が届き、身体を真っ二つにしていた。やがて躓いて倒れたその切断面からは、内臓が噴出する血に押されるようにして勢いよく流れ出る。


 最初の攻撃で完全に生命を奪い取ったのは、四体ほどだ。

 行動不能に陥らせたのが、五匹ほど――まだ六体から七体のキリムが、私へと殺到してくる。


 次の〝存在意思〟を調整するのに意識を割きながら、私はこれに素手で応戦した。

 最初に間合いへ突っ込んできたキリムに対し、私は側面に回り込んで躱し、脇腹に拳を撃ち込んだ。やつらの体重は、百キロ近い。打撃に返ってきた手応えは重いが、同時に、内臓が押し潰れる感触も確かにあった。

 私に殴打されたキリムはよろめき、頭のひとつが牙を剥いて威嚇したが、私は無視して踏み込んでいく。


 今度は、蹴りだ。

 キリムがこちらに向き直って逆襲してくるよりも早く、爪先を撥ね上げる。腹を下から突き上げるその一撃は硬い筋肉を貫通し、内臓を守る骨を砕いた。折れた骨が内臓に突き刺さる感覚は、蜥蜴の口腔から悲鳴とも怒号ともつかない雄叫びを迸らせる。


 そこで私は、軸足の踵を回転させ、背後へと肘を送り込んだ。

 間近に迫っていた蜥蜴の顔面、その側頭部に肘が激突する。頬骨を砕く打撃に細長い顔が歪み、眼球が飛び出した。


その肘に、隣の顔が喰らいついてくる。


 たとえ牙が食い込んでも血は出ないし、当然、骨や筋肉にダメージを負うことはない。

 とはいえ五感があるので、人間のように痛みで動けなくなるようなことはないが、強い不快感や衝撃は受ける。

 それが許容量を超えると、人間のように意識を失ったり、あるいは死に至る場合もあるのだが、下級眷属の攻撃でそれはあり得ない。


 それでも私が牙を回避したのは、動きを制限されるのを嫌ったからだ。

 牙同士がぶつかり合う硬い音が、皮膚を掠める。

 肘を引き寄せる動きでそのまま身体を旋回させ、閉じたばかりのその顎の横っ面を掌で強打した。掌に牙の砕ける感触を残し、キリムの身体が吹き飛んでいく。


 その掌を握り込み、撃ち込んだのは左手側面だ。

 跳躍し、飛びかかろうとしていたキリムの鼻面を、捉える。

 突撃してきた勢いに私の身体は押し返されたが、カウンターとなった一打にキリムもよろめいた。


 私は立て続けに、左右の拳で打ち据える。

 そのまま押し切りたいところだったが、センサーが死角より急接近するキリムを捕捉していた。


 眼前の一体は、私の手が一瞬、止まった隙に反撃に移っている。地を蹴り、身を(よじ)りながら喰らいついてきた。

 私は咄嗟に身を屈め、跳躍してくるキリムの身体の下にもぐり込んだ。


 その前足を掴む。

 そして勢いを殺さぬままにその軌道を修正し、死角へ飛び込んできた別の一体に激突させた。


 肉のぶつかり合う音に、複数の喉が悲鳴を上げる。

 仲間の身体と石畳に挟まれた一体は、その声に血の赤が混じった。


私は素早く、挟まれたほうの首のひとつを踏み潰す。さすがに、すべての首を破壊する暇は与えてくれない。ふたつめを潰したところで、別のキリムが襲いかかってきた。

 三体が同時に、大きく開いた口から涎を垂れ流しつつ駆け寄ってくる。


 私は振り向きざまに、腕で振り払った。

 間合いの外だ。


 その腕は無論、当たらなかったが、三体の肉体が音もなく消失していく。

 今度は先ほどよりも範囲を狭めたので、肉体の大部分を素粒子の塵へと変えることができた。


 そしてまだ掴んだままだったキリムの前足を持ち上げ、さらに肉薄してくる別の一体へと投擲する。二回目の激突に、投げられたほうは首が二、三本、折れたようだが、街路に叩きつけられてもすぐに跳ね起きた。

 私がそこで頬を歪めたのは、キリムのしぶとさのせいではない。

 センサーが、新たな敵を捕捉したからだ。


それは、暴風をともなって私の前に降り立った。

辺りに漂っていた粉塵が瞬く間に吹き散らされ、倒れていたキリムの巨躯が風に押されて転がっていく。ローブの裾と髪が激しくはためき、踏ん張ろうとしたが石畳の上を滑って後退してしまう。


 風を起こしたのは、羽毛ではなく飛膜の翼だ。

 その顔はキリムと同じく爬虫類のそれだが、より凶悪で、しかし威厳のようなものが備わっている。私を見つめる赤い瞳には、確固たる知性の煌めきがあった。


〝闇の種族〟中級眷属、ワイバーンだ。


大きく広げられた翼は、十メートル近くある。その猛禽類の足が一歩、踏み出すと、その重みで石畳が割れて(めく)れ上がり、地響きが私の身体を上下に揺すった。

 口腔内には、槍の穂先の如き鋭い牙がずらりと並んでいる。


 だが、真に危険なのは、あらゆるものを噛み砕くその(あぎと)ではない。

 ワイバーンの胸部が、大きく膨らんだ。


 まずい。

 私は地を蹴り、横っ飛びに身を投げ出した。


 同時にワイバーンは、大量のガスを放出する。

炎ではない。


 それは石畳を舐めながら、起き上がろうとしていたキリムの全身を包み込んだ。

 七つの首が、同時に絶叫した。


 皮膚が変色し、沸騰した水のように水疱が至る所で生じる。

 そして、溶解していく。


 皮膚が、脂肪が、筋肉が溶け崩れていった。

 やがて内臓までが剥き出しになり、それもまた、赤黒い液体となって白い骨の間から流れ出ていく。顔の鱗も剥がれ落ち、眼球も眼窩に溜まる液体となっていたが、首が溶けていくと支えを失った頭も傾き、まるで涙のように流れ落ちていった。


腐食性ガスだ。

 ワイバーンの体内にあるガス生成器官では、特殊な真菌類が繁殖している。通常の数千倍、という尋常でない増殖力と、無機物すら分解する強力な酵素を分泌する菌だ。


 その威力はご覧のとおり――キリムは一分と立たずに液体と化し、同じく溶けた石畳と混じり合う。


 私の立体映像ですら、この分解能力から逃れることはできない。

 ガスに触れた右足とローブの裾が、崩れ落ちていく。


 私は慌てず、ガスの影響下にない部分から立体映像を解除し、それからふたたび欠けた部分を構成した。

 一部分だったからまだしも、これを全身に浴びた場合はこう簡単にはいかない。


 即座に立体映像が分解され、データ自体は本体にフィードバックされるが、正式な手法ではなく緊急避難的措置なので、どんな影響――データの一部破損、消失など――が起こるかわからない。

 最悪の場合は、データそのものが破壊され、私という人格が失われてしまう。


 人間でいうところの、死だ。


 さすがに、中級に分類されるような眷属は油断がならない。

 私はワイバーンから距離を取るべく駆け出しながら、新たな〝存在意思〟の調整に入った。腐食性ガスを撒き散らす巨大な竜と肉弾戦など、正気の沙汰じゃない。


 まあ、リロイならやりかねないが。


 駆け出した私を、ワイバーンは走って追いかけてきた。飛行性能が高い眷属だが、地上を走ることにかけても遜色はない。むしろ、ワイバーンより速く走れる人類のほうが確実に少ないだろう。

 その自重で街路を踏み砕きながら、二足歩行の竜が私の背に追い縋る。


 間合いが詰まれば、背後から腐食性ガスを浴びせかけられるのは必至だ。

 そうなると開けた場所は危険なので、私の視線は自然と周囲の建築物に向けられる。ワイバーンのガスは鋼をも腐食させるので、屋内が安全とは言い切れない。


 それでもガスの直撃を避けるには、遮蔽物の多い場所を選ぶほかになかった。

 私は全速力で疾走しながら、手近の建物へと飛び込んでいく。開け放たれたままだったドアから中へ飛び込み、さらに廊下を駆け抜け、奥の部屋を目指す。


 追ってくるのは、家が破壊される音だ。

 ワイバーンの巨体がドアを通るはずもなく、壁ごと粉砕して飛び込んでくる。走るのに邪魔な翼はたたんではいるものの、 通路の幅を大きくはみ出していた。そのまま突っ込んでくれば当然、壁を打ち壊す。


 頭部も、一階部分には収まらない。

 胸から上は二階に飛び出し、天井を壊しながら進んでくる。


速度は、殆ど変わらない。

 家の悲鳴を全身に浴びながら、私はそのまま裏口まで駆け抜け、外へと飛び出した。木造家屋では、どうやら遮蔽物にすらならないようだ。


 もっと巨大で頑丈な建築物となると、なんだろうか。

 私は周囲を一瞥する。


 視界に飛び込んできたのは、ヘカトンケイルの巨躯だ。

 悲壮な雄叫びは変わらず、その周囲を舞い散る剥がれ落ちた皮膚が彩っている。リロイはただひたすらに掴みかかる腕を躱し、打ち据え、蹴りつけながら、頭部へ近づこうとしていた。


 半分ほど千切れて、動かなくなっている腕がある。

 指が何本か、切断されている腕もあった。


 確かに関節部分などは、ほかの部位に比べて比較的、硬くはないだろうが、それでも一度で切り裂けるようなものではない。何度も同じ部分へ正確に刃を叩きつけなければ、不可能だ。

 私は(じく)()たるものを感じながら、本体を通してリロイに伝える。


「とっくに四十秒は過ぎたな。すまん」


 それに対する反応は、小さな笑い声だった。


「一応、時間はちゃんと数えられるんだな」

「――おまえの腹時計よりは、ずっと正確にな」


 人の真摯な謝罪を茶化すとは、まったくもって失礼な男だ。


 私は、振り返る。

 ワイバーンは、入ったときと同様に出るときもドアを壁ごと蹴散らしていた。そしてその巨体の背後で、家が内側へ沈み込むように崩壊する。さすがに壁と天井をあれだけ削られると、構造を維持できなかったようだ。


 爆風のように押し寄せる粉塵と破片に背中を押されながら、私は苦し紛れに路地へと駆け込んでいた。


 まさに、苦し紛れだ。

悪手でもある。


 ワイバーンは躊躇なく、両脇の建造物を粉砕しながら路地へと突撃してきた。 

 そしてその胸が、大きく膨らむ。


 私は自ら、逃げ場のない場所へ入り込んでしまったらしい。


 狭い路地に巨体をねじ込んでくるワイバーンを見上げ、私は意を決した。

 まだ微調整が終わってないが、このままここで分解されてしまうよりはいい。

竜の口腔内から腐食性ガスが吐き出されるより先に、右手をワイバーンへ向ける。


 そして、〝存在意思〟を銃弾の如く撃ち込んだ。

 

 

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