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第三章 3

 その腕が、なにもない空間を薙ぎ払うかの如く振り抜かれる。


 大気が、震えた。


 足下が、激しく揺れる。


 視界が歪んだ、と思ったのは、広範囲にわたって重力波が上空から叩きつけられたからだ。

 あの雑貨店を中心に、街の一角が陥没した。瓦解する建築物の悲鳴が、爆風に乗って私たちに叩きつけられる。


 まるで見えない巨大な拳で打たれたかの如く、建ち並んでいた店舗がその体積を一瞬にして失った。壁も床も天井も、頭上からの圧力に抗うこともできないままに、無数の商品や店員、客や住民ごと――マーニの宣言どおり――磨り潰されてしまう。


 石畳が衝撃に波打ちながら剥がれ、街路樹は薙ぎ倒され、粉々になって舞い上がった破片が雨のように降りそそいだ。


 津波の如く押し寄せる粉塵が、辺り一面を覆い尽くす。


 まさにその瞬間、老婆のシルクが躍った。


 狙いはもちろん、マリーナだ。木片や石礫の混じる塵芥を刺し貫いて、シルクが滑る。私が人間ならば、視界がほぼゼロといっていいこの状況では為す術もなかっただろう。


 だが私は、人間の形をして五感も備えているが、厳密には人間のように世界を認識しているわけではない。


 光が遮られて視界が確保できなくとも、他の各種センサー類が周囲すべての状況を余さず伝えてくれるのだ。


 彼女もある程度は、それを承知の上だろう。


 そしてその上で、仕掛けてきた。正面切って私を退け、マリーナを奪い取れると踏んだのである。


 それを私は、不敵だとも傲慢だとも断じるつもりはない。


 この老婆の姿をした〝闇の種族〟には、彼女自身がそう判断するに値する能力が間違いなく備わっているからだ。


 鋼を断ち切るリロイの斬撃をただの布で捌いているのも驚くべき事実だが、真に驚嘆すべきは、リロイの攻撃を悉く先読みした高い洞察力だ。それはもはや、予見などといった域を超えて予知といっていいレベルに到達している。


 だが、完全なる予知ならば、この襲撃をリロイに阻まれるはずもない。


 そしてもし、ここからの一挙手一投足をすべて見透かされていたとしても、リロイの相棒たる私がたかがそんなことで諦めるわけにもいかなかった。


四方八方から肉薄してくるシルクの動きを感知しつつ、私はためらうことなくアングルボザに背を向ける。そして、背後で倒れたままだったギニースとマリーナを引っ掴み、振り返ることなく脱兎の如く逃げ出した。


 おそらくアングルボザは、〝闇の種族〟を殲滅するために造られた兵器である私が、まさかその仇敵を前に逃走するなどとは考えていなかったに違いない。


 使命と存在意義への葛藤が皆無であった、といえば嘘になる。


 だが、あの局面でリロイがマリーナの側を離れる決断をしたのは、私への信頼の証だ。


 それを裏切ることだけはできない。


私の役目はマリーナを守ることであり、その為なら怨敵に背を向けもしよう。


 そしてそれが、彼女の予知能力にどんな影響をもたらしたのかは定かではないが、私の背中へ肉薄するシルクの動きがわずかに鈍った。


 この瞬間こそが、私にどうしても必要な時間だった。


 マリーナを小脇に抱え、ギニースを肩に担ぎ上げていた私は、疾走しながら半身を捩る。


 肩越しに、アングルボザのいる方向へと掌を突き出した。


 その開かれた五指の周辺が、揺らめいている。


 莫大なエネルギーが生成され、放射される熱が空気を灼いているのだ。


 立体映像の姿になったときからすでに、プログラム〝ディース〟を起動させ、周囲のあらゆる物質から〝存在意思(ノルン)〟を抽出し始めていた。


〝存在意思〟とは、物質を構成する最小単位である素粒子に宿る、物質の構造と性質を維持しようとする意思のことだ。


 世界そのものの意思、と言っても過言ではない。


 世界の根源たる意思が内包するエネルギーは、膨大かつ無尽蔵――それを物質から抽出し、純粋なエネルギーとして扱うためのプログラムが〝ディース〟であり、これこそがまさに、我々ラグナロクにとってのアイデンティティーとも言えた。


 なぜなら、〝存在意思〟の秘めたるエネルギーこそが、〝闇の種族〟に絶大な効果を及ぼすからだ。


 通常の熱エネルギーは物質を単純に破壊するだけで、人知を超えた再生能力を誇る眷属には通用しなかった。


 だが、〝存在意思〟から生み出されるエネルギーは違う。


 破壊ではなく、干渉だ。


 対象とする物の〝存在意思〟に干渉し、その存在を維持しようとする強固な意思を逆の意味に書き換える。


 つまり、構造と性質を維持しなくなり、その結果として対象物が極小の素粒子へと分解されてしまうのだ。


 いかに強力な再生能力を持つ眷属でも、これに抗う術はない。


 ただひとつ問題があるとすれば、私が製造された時期は大量に押し寄せる〝闇の種族〟を薙ぎ払うことがなにより肝要で、精緻さよりも効果範囲に特化していることか。


 一個体に対して使用するには、あまりに規模が大きすぎる。


 なにも考えずに使えば、巨大な王都の半分以上が素粒子の塵と化して消滅するだろう。


これを個人レベルにまで範囲を限定したのが後期ロットに搭載されたプログラム〝ダインスレイヴ〟だが、最初期ロットである私には望むべくもない。


 そして望めないから、と諦観することもできない。


 私は、あの男の相棒なのだから。


 人間のような潜在能力もなく成長の可能性がない、与えられたスペックがすべての私だが、それでも独自にプログラムを書き換え、長い時間、研鑽を続けてきた。


 成長はできずとも、改良はできるはず――祈りにも似たその思いは、やがてひとつの結果に結実する。

 アングルボザのすべてを見抜く眼差しには、私がなにをしようとしているか映っていただろうか。


 すでに、周囲は壊滅状態だ。 


 建築物はマーニの重力波で瓦礫となり、人の姿などもうどこにもない。生き残っていたブリジンガーメンたちは、爆風で吹き飛ばされて散り散りになっていた。それでも動ける者は、護衛対象であるマリーナを私が抱えて走り出した時点で追従してくる。


 効果範囲を極小にまで狭めた〝存在意思〟は、目標とする個体に直接ぶつけたほうが周りへの被害が少なくてすむが、この状況ならそこに配慮する必要はなさそうだ。


 私は、純粋なエネルギーとなった〝存在意思〟をセンサーが探知したアングルボザの小柄な影へと放った。


速度は、銃弾に匹敵する。


 その軌道上にあるあらゆるもの――私の背中めがけて宙を奔っていたシルク、視界を覆い尽くしていた建築物の破片と砕けた石畳、土埃、塵芥、そのすべてが〝存在意思〟に触れた途端に微細な粒子となって消失した。


 物質の消滅は、放射状に広がる。


 まさに一瞬にして、視界が開けた。


〝存在意思〟による物質の崩壊は、連鎖反応(チェーン・リアクシヨン)を起こす。抽出したエネルギーの総量と激突した物体の質量、そして接触点からの距離によって減衰するのだが、この一撃は目標から半径にして二十メートルほどを消し飛ばすだろう。


 アングルボザに直撃しなくとも、なんらかのダメージを与え得るはずだ。


 彼女と思しき影に猛進した〝存在意思〟は、しかし、彼女を捉えられない。


 一瞬前には存在しなかった、無数のシルクが絡み合う壁に阻まれた。


〝存在意思〟が直撃した布の壁は、瞬く間に消失する。それは足下の街路に及び、視認できない塵となって石畳を抉り取った。


火薬による爆発のように閃光や炎、音、爆風などもなく、世界の一部が見えない獣に食らわれたかの如く見える現象に、小脇に抱えていたギニースが息を呑む。


〝存在意思〟が消滅させた空間には、凄まじい勢いで周囲の空気が粉塵とともに流れ込んだ。風が唸り、身体ごとそちらへ吸い寄せられる。マリーナのもとへ駆け寄ろうとしていたブリジンガーメンの数人が、足を取られて転倒していた。


 開けた視界は、瞬く間に閉ざされる。 


烈風が渦を巻き、風の削れる音が肌を擦った。


 私は、老婆から一歩でも遠くへ進まんと加速しながら、プログラム〝ディース〟を再び起動させる。


 だが、間に合わないことは明白だ。


 逆巻く暴風の中を突き進むシルクの槍は、十本を超える。あれをすべて防ぐことも躱すことも、私にはできない。


 できないが、諦観も絶望もなかった。


 背中越しに、超高速で接近する黒い影をセンサーが捉えていたからだ。


 荒れ狂う旋風をものともせずに突き破り、シルクの穂先と私の間に飛び込んでくる。


 風を断ち切るような斬撃が、閃いた。


 高質化していたシルクが、甲高い音とともに弾き返される。跳ね上げられ、打ち下ろされ、薙ぎ払われた。剣風が、粉塵を吹き払う。四方へ広がるシルクは、まるで花弁のようだ。


 リロイの足下には、数名の男女が投げ出され、転がっている。ここに到達するまでの道程で、熱線と重力波による崩壊の中、手当たり次第に引っ掴んできたのだろう。


 七人だ。


 小脇に抱え、肩に担ぎ、残りは手で掴んだのではなく指先で引っかけて強引に運んできたに違いない。


 七人も救ったと考えるか、七人しか救えなかったと考えるか。


 その指先が届かなかった命も、あったはずだ。


リロイの表情に、悔恨はない。


 すでにその意識は、次の一手、そしてその次へと進んでいた。


アングルボザの攻撃を防ぐために剣を抜かなければならなかったため、リロイは彼らを些か乱暴に放り投げた。殆どが気を失っているらしく、ぴくりとも動かない。自分で安全圏まで走って逃げるのは無理だろう。


 弾き返されたアングルボザのシルクは、しかしながらほぼ停滞することなく、急カーブを描きながらリロイへと奔った。


 さすがに、我が相棒を排除せずにはマリーナに届かない、と判断したらしい。


 横手から突き進んでくるシルクを、リロイは上体をわずかに反らして躱した。鋭い刃と化した布が、耐刃賜仕様のジャケットを易々と切り裂いていく。


 撥ね上げた刃は、それと交差するかのように逆方向から落ちてきた一枚を弾くのではなく受け流した。鋼と噛み合って火花を散らせる異常な硬度のシルクは、そのまま足下の石畳に突き刺さる。


 そして振り切った剣はそのまま弧を描き、低い軌道から飛来した一撃に対して雷撃の如く打ち下ろされた。布ごと街路を叩き割り、その衝撃にシルクが激しく波打つ。


 リロイはそのまま、姿勢を低くした。


 頭上を、鋭い一閃が薙いでいく。


 風圧に髪をかき乱されながら、リロイは街路を砕いた剣で正面から突き込まれた一打を打ち払った。


 同時に、足下に倒れていた若い男のベルトを掴む。


 マリーナとギニースを抱えて疾走していた私は、その行動の意図を察知して「無茶な」と小さく呻いた。


 いやまあ、基本的に無茶苦茶な男なので、今更か。


 リロイはさらに袈裟斬りの一撃を薙ぎ払い、死角から撃ち込まれた刺突を身体を旋回させて躱すと、その勢いのまま掴んでいた若者を低い弾道で投擲した。


 私は急停止し、マリーナとギニースを可能な限りそっと下ろすと、飛んできた若者を受け止める。


 凄まじい衝撃に、思わずよろめいた。


 その速度は、まったく安全性を考慮していない。人体ではない私だからこそ、その衝撃の大半を吸収して受け止めることができだが、そうでなければ両者共々大怪我を負うところだ。


 受け止めるのが私だからこそ、こんな無茶をしているとも言えるが。


 とはいえ、受け止めた若者を下ろす暇もあらばこそ、中年女性が宙を舞っているのは無茶が過ぎる。


私は少々、乱暴に若者を放り出すと、慌てて女性を抱き留めた。


 その私の視界に飛び込んできたのは、初老の男性と若い女だ。心の裡だけで罵倒しつつ、私は必死でふたりの身体が街路に叩きつけられることのないよう掴み取った。


 リロイは、鞭のように撓りながら打ちかかってくるシルクを紙一重で避けつつ槍のように突き込まれる刺突を打ち払い、四人目の中年男性を拾い上げたところだ。


 頭上から矢のように降り注ぐシルクの連続攻撃を飛び退ってやり過ごすと、その男を投擲しつつ、――あろうことか――剣を手放した。


 そして両手で、足下に横たわっていた若い男女を引っ掴む。


 ここぞとばかりに、シルクが剣のように振り下ろされた。防ぐ手立てのないリロイは躱すしかなく、しかしそれを予測して別のシルクが数枚、別方向から忍び寄っている。


 だが、リロイは躱さなかった。


 ふたりを両手で掴んだまま上体を反らし、蹴りを放つ。鉄板で補強された頑丈なブーツとはいえ、あのシルクの切れ味の前では紙同然だ。


 追い詰められた挙げ句、咄嗟に――というわけではない。


 リロイの蹴りが捉えたのは、シルクではなく――あろうことか――空中にあった剣の束頭だった。


 投擲はまだしも、足蹴だと!?


 一度じっくりと話し合わねばならないようだが、いまはそのときではない。


 蹴りつけられた剣は、猛烈な勢いで回転しつつ振り下ろされるシルクに激突した。両者は甲高い響きとともに噛み合い、弾かれ、吹き飛んでいく。


 リロイは、別のシルクによる追撃が届くまでの間隙を縫い、右手で掴んでいた女を投擲した。


 そしてその手は、瞬時にふところの銃を引き抜いている。  


六発の弾丸が、ひとつの銃声に押されて放たれた。


すべてが一直線に、アングルボザへと突き進む。殆ど狙いなどつけていないように見える早撃ちだったが、六発すべてが老婆の顔面へと集中していた。


 シルクが、動く。


 動いていた、といったほうが正確か。


 リロイが引き金を引き始めるのとほぼ同時に、弾丸を受け止めるべくシルクは幾重にも重なって防御壁を形作った。


 銃弾は、音もエネルギーもシルクに吸収される。


 やはり銃如きでは、彼女の鉄壁の守りは崩せない。


 だがしかし、それこそがリロイの狙いだった。


 顔を狙ったのは、アングルボザを守るためのシルクで彼女自身の視界を塞ぐためだ。


 それだけでシルクの動きが完全に鈍るはずもないが、追撃のタイミングをわずかにずらすことができる。


 左手で掴んでいた男を投擲するには、十分な時間だ。


 男を手放した手で、次弾を装填する余裕すらあった。


 しかしそれを放つより、シルクの鋭い穂先が突き込んでくるほうがわずかに速い。横手から脇を狙って飛んできた刺突を身を捩って回避し、倒れ込みながら引き金を引く。銃口を飛び出した鉛の弾は、視界の端から滑るように切り込んできたシルクに激突した。


 斜めに火花が爆ぜ、弾丸が跳ねる。ほんのわずかにシルクの刃は軌道を変え、リロイの肩口を抉った。


 血飛沫が、焼け爛れた頬に散る。


そのまま肩から横倒しに倒れ込んだのは、受け身が取れなかったわけではなく、その間にも銃の再装填を行っていたからだ。


 回転して頭上から降ってくるシルクを転がって躱しつつ、アングルボザのいるほうへと鉛の弾を送り込む。最初の三発は老婆へ照準したが、残りの三発は銃口を横滑りさせて死角――右側へと叩き込んだ。


 いまにもリロイの頸部を切り裂こうとしていたシルクに銃弾が喰らいつき、軌道を修正する。


 その鋭い刃が削り取ったのは、こめかみの肉と骨だ。


 脳を直接殴りつけるような衝撃が、リロイの動きを瞬間、鈍くさせる。隙、ともいえないそのわずかな時間を、アングルボザのシルクは見逃さない。


 怒濤の如く、硬質化した切っ先が撃ち込まれた。


 立ち上がる暇さえ与えられず、リロイはそのまま石畳の上を回転して躱す。


 しかしさすがに、その状態で凌ぎきれるほどアングルボザの攻勢は甘くなかった。


 ついに、鋭い切っ先がリロイの大腿部を串刺しにする。細く捻れて槍のようになったシルクが、左太股を貫通して街路に突き刺さった。


辛うじて大腿骨を破壊されることは避けものの、大腿四頭筋と大腿二頭筋が破損している。動きを大幅に制限される損傷だ。


 だが、動きを止めれば致命傷を避けられない。


 そして、シルクを引き抜く時間もない。


 リロイは躊躇なく、石畳に縫いつけられていた足を横に引き抜いた。


 肉が裂け、血が噴出するが、大腿動脈のある内側でなかったのは幸いか。それでも少なくない鮮血をまき散らしながら、追撃を回避していく。


 激しく転がり回るそのさなかにも、リロイは再び銃を再装填していた。


 だが、その銃口が向けられたのはアングルボザではない。


 ――まさか。


 リロイが蹴りつけた剣は、シルクと激突したあと高々と宙を舞い、いままさに石畳に落下して跳ねたところだ。


 轟音とともに低い軌道で飛びだした弾丸は、剣の束を直撃する。


 さらに二発、三発、と立て続けに剣を打ち据える弾丸に、私はもはや言葉も出ない。


 リロイが錯乱したわけでないことは、わかっている。


 着弾の衝撃で、リロイから少し離れたところに落ちた剣をたぐり寄せているのだ。


 絶え間ないシルクの攻撃を躱しながらの、精密射撃である。


 尋常でない技術であるのはわかるし、鉛の弾程度では剣に傷ひとつつかないのも当然、わかっている。


 だからといって、この暴挙が許されるわけではない。


 いい加減にしろよ、おまえは。


 ――まあ、そんな私の憤激など届くはずもなかろうし、こいつは気にもとめないだろう。


 まったくもって腹立たしいが、弾丸との衝突で火花を散らせる剣は、踊るようにしてリロイとの距離を詰めた。


 そうはさせじ、とアングルボザのシルクが弾む剣を絡め取るべく宙を滑る。


 同時にリロイが、跳ね起きた。


絶え間なく突き込まれる連続攻撃に生じた、綻びだ。アングルボザがリロイのわずかな隙を突いたように、リロイもまた、彼女の隙を見逃さない。


 起き上がるや否や、低い姿勢で獣のように疾走する。その身体をシルクの刃が刻んでいくが、一顧だにしない。


 そして、剣には手も伸ばさずに駆け抜けた。


 これはさすがにアングルボザすら予測できなかったのか、シルクの動きがリロイを捕捉できなくなる。


 リロイはシルクの包囲から抜け出すと、最後のひとり、ウェイトレス姿の女性を抱き上げた。


 そして彼女を素早く投擲すると、ふたたびシルクの中へと飛び込んでいく。


 その手が今度こそ、剣の束に伸びた。





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