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第二章 1

 ドアを開けたカレンの表情は、(いわ)く言い難いものだった。

 夜明け前という時間帯の非常識さに加え、素っ裸の男と少女を両肩に担いだ私の姿はさぞや異様に映ったことだろう。


 それでも彼女は、「すまない」開口一番、謝罪した私に、「まったくね」と悪態をつきながら、中へ招き入れてくれた。

 ブラウスに皺が入っていないところを見ると、睡眠中ではなかったらしい。


 未明だというのに、街は大変な騒ぎになっていた。


 街の一角が崩落した上に、正体不明の咆吼が轟き渡ったのだからそれも当然だ。警官や消防隊が駆け回り、そこに野次馬と火事場泥棒が入り交じって収拾がつかなくなっていた。崩落現場に近いわけではないこのホテルにも、そのざわめきが届いている。


カレンもまた、叩き起こされたひとりだろう。


 おそらくこの時間に熟睡しているのは、その元凶たる我が相棒ぐらいではなかろうか。

スウェインとシェスタも、眠そうな顔をしてキッチンで暖かい飲み物を啜っていた。


「あら」シェスタは私に気がついたが、その一言だけで続く言葉が出てこない。目蓋は半分ほど、閉じている。完全に起ききっていない頭では、どこから突っ込んでいいかわからなかったのだろう。

「あ、あんた──」スウェインは、私を見て声を上げた。そしてすぐに、「なんで裸?」と、全裸のリロイを見て目を丸くする。


 私は肩を竦めようとしたが、リロイとリリーを担いでいたので「大人にはいろいろあるものだ」と言っておいた。少年は目を(しばたた)かせたあと、「追い剥ぎ?」と呟く。

 リロイを追い剥ぎできるとなると、それは相当の手練れだな。


「こっちに寝かせて」


 カレンが、寝室のドアを開ける。部屋の中には、ダブルのベッドがひとつだ。私は迷うことなくリリーをベッドに寝かせると、リロイを壁際に転がした。


「聞く迄もないけど」カレンは、リリーの状態を確認しながら私を一瞥する。「あれはあななたちね?」あれがなにかを聞き返す必要はない。

「そうだ」私が頷くと、彼女は呆れたように息を吐いた。

「“紅の淑女”にしろ領主の館にしろ、とにかくなにかを壊さないと駄目な呪いにでもかかってるの?」

「呪いとは言い得て妙だな」


 思わず感心する。するとカレンは、じろりと私を睨みつけた。「人ごとみたいになに言ってるの。あなたも、よ」


「私は――」こいつほど滅茶苦茶ではないし遙かに理知的だ、と主張しようとして、思い出した。この部屋の天井を踏み破ったことを。

 押し黙った私を見て、カレンは鼻を鳴らす。なるほど、やはり私の心証はあまりよくないようだ。

 というよりも、許されたと勝手に思い込むのがおこがましいか。


「いろいろあって遅くなったが、天井の件はすまなかった」私は彼女に頭を下げた。「それに、相棒が世話になった。感謝している」

「へえ」カレンはなぜか、妙な声を出して眉を持ち上げた。「あなた、ちゃんと謝罪できるのね。高飛車で尊大な感じだから、意外だわ」

「失敬な」


 私は眉根を寄せたが、カレンはくつくつと笑う。

 からかわれているような気もするが、だからといって軽率に受け答えするとしっぺ返しを喰らったりするので油断ならない。


「とりあえず、この娘を着替えさせるから」カレンがそう言ったので、私は頷く。「よろしく頼む」そう言ったのだが、彼女はなぜか私をじっと見据えたまま動かない。

「着替えさせないのか?」

 私が促すと、彼女はじろりと私を睨みつけた。

「なぜそこにいるの?」


 その質問の意味がわからなかったが、彼女の表情と口調から私がやらかしたらしい、ということは理解できた。


「ここにいないほうがいいのか」

「当たり前でしょ」


 カレンは手を振って、私に出て行けと指示する。この部屋に留まる理由は特にないので、ここは彼女に大人しく従ったほうが良さそうだ。


「これはどうする」私は、全裸で転がっているリロイを指さした。以前に獣化したときは、一週間近く眠り続けていた。今回も同様とは限らないが、あれだけのエネルギーを消費して数時間で覚醒するとも思えない。


「置いておいていいわよ」カレンは、ぴくりとも動かないリロイを横目にして言った。「もしも起きたら、もう一回、眠って貰うだけだから」

「お手柔らかにな」


 寝室を出た私は、キッチンへ向かう。スウェインはまだお茶を飲んでいたが、シェスタはテーブルに突っ伏して寝息を立てていた。


「あれ、あんたたちだったんだね」スウェインは、キッチンの窓から見える崩落現場のほうへ顔を向けている。寝室での、カレンとの会話が聞こえていたらしい。

「まあな」

「本当に〝深紅の絶望クリムゾン・ディスペアー〟を潰しちゃったの?」


 そう改めて訊かれると、どうなのだろうか。()の組織が拠点としていた地下街は完全に壊滅した、といってもいいが、組織そのものだとどうなのだろうか。


「まあ、九割方は」私の返答は歯切れの悪いものだったが、スウェインの瞳から眠気が吹っ飛んでいくのが見て取れた。

「カルテイルはどうなった?」


 当然、そうくるだろう。そして改めてそう訊かれ、私は、カルテイルの生死をはっきりと確認していないことに思い至った。

 獣化したリロイに叩きのめされたあと、彼はどうなった?

 アシュガンとレディ・メーヴェの登場で、すっかり失念してしまっていた。リロイとアシュガンの戦いで起きた波に、攫われてしまったのだろうか。少なくとも私が地底湖から脱出するまで、あの巨漢を見た記憶はない。


「──九割方、死んでいるはずだ」


 やはり曖昧にしか、答えられない。それでもスウェインは、感嘆の吐息を漏らした。


「あんたたち、本当の本当に凄い傭兵なんだな!」


 歓声はことさら大きかったわけではないが、隣のシェスタががばっと飛び起きた。


「本当の話!?」


 夢うつつで話を聞いていたようだ。そう言ってから慌てて、寝癖の付いた髪を整える。


「九割方な」


 私が一応、念を押すと、彼女は両手を高々と挙げた。押さえていた髪がピンと跳ねる。


「自由だわ!!」

「良かったね」


 スウェインが笑うと、シェスタはもう一度、寝癖を掌で押さえつけた。「あなたのおかげですわ、スウェイン」彼女は、あらぬ方向に跳ねている前髪を手で隠したまま、頭を下げる。「ありがとうございました」

「あ、いや……」


 少年は、後ろめたい表情を浮かべる。シェスタがどう言ったところで、スウェイン自身が、彼女を救ったとは思えないのだろう。

 直接的に助けたのはリロイだが、スウェインがいなければリロイがシェスタの存在に気づかなかっただろうことを鑑みれば、もう少し自負してもいいとは思うのだが。


「ところで」シェスタは唐突に、私に向き直った。「あなたはいったいどこのどちらさまでしょうか?」なぜか問い詰めるような口調のシェスタは、前髪の寝癖を気にもしていない。

 そういえば、彼女の前にこの姿で現れたのは初めてだったか。


「リロイの相棒だ」


 私がそう答えると、彼女の大きな目が細められる。警戒の表情が、険悪の顔つきに変わった。「どうりで服の趣味が悪いわけですわね」口の中だけで、悪態をつく。

 どおりで、とはどういう意味か問いただしたい気持ちもあったが、さすがに大人げないのでぐっと我慢する。リロイと同じレベルのセンスだと思われるのは非常に腹立たしいが、相手は子供だ、仕方ない。


「お名前は?」

「あ、そういえばまだ訊いてないね」


 シェスタの問いかけに、スウェインが反応する。思わず少年のほうへ顔を向けた少女は、きっちりと寝癖を押さえつけていた。


「ラグナロクだ」


 名乗ると、シェスタが眉根を寄せる。「それは人名ですの?」いや、もちろん私は人ではないので人名ではない。しかし馬鹿正直にそう答えても、ふたりを混乱させるだけだろう。

 私は少し考えてから、応えた。


「傭兵のふたつ名のようなものと思えばいい」

「思えばいい、ってどうしてそんなに居丈高なのですか」


 シェスタは、実に不快げな顔をする。

 そう言われると、返す言葉もない。

 カレンにも言われたが、私は自分でも気がつかないうちに増長していたのだろうか。

 ――増長、とはまるで人間だな。


「なにがおかしいんです?」


 無意識に、自嘲の笑みが浮かんでいたらしい。それを見たシェスタが、すかさず噛みついてくる。私は笑みをかき消し、軽く手を振った。


「なんでもない、気にするな」

「またもや上から目線……!」


 ぎりり、とシェスタは歯噛みする。

 もはやなにを言っても、こうなのだろう。リロイの相棒だというだけでこの仕打ちとは、理不尽も甚だしい。

 なるほど、リロイはこれをすべて受け流していたのか。

 そこだけは感心する。

 むしろ、なにが原因でこんな仕打ちを受けているかわからないリロイは、どうやって心の整理をつけていたのだろうか。


「それはともかくさ」


 不穏な空気を払拭するかのように、スウェインが明るく言った。


「これでようやく、外に出られるね」


 ヴァイデンを裏から支配する “深紅の絶望”が健在である限り、シェスタが大っぴらに街を出歩くこともできず、彼女を捜しているという姉とコンタクトを取る方法もなかった。

 だが、“深紅の絶望”がほぼ壊滅状態にある今なら、堂々と街を歩くことができる。


「僕も手伝うからさ、お姉さん捜そうよ」

「ありがとう、スウェイン」


 シェスタは、上品に微笑んだ。

 とはいえ、子供ふたりで人捜しとなると、それなりに危険もある。“深紅の絶望”が組織として息をしていなくとも、その構成員が全員死んだわけではないし、崩落のせいで街は普段と状況が違う。

 ここは、私の出番だ。


「保護者として付き添おう」

「いりません」


 私の提案を、シェスタが即座に却下した。

 なぜだ。


「どこの馬の骨とも知らない人間に保護してもらうほど、わたくし落ちぶれてはいませんので」


 なにがどう落ちぶれるのか知らないが、彼女は傲然と言い放つ。


「でも、凄く頼りになるよ」


 スウェインが、私をフォローする。本当によくできた少年だ。

 だが、シェスタは首を横に振った。「スウェイン、あなたこの人とわたくし、どちらを選ぶつもりですか?」

「ええっ?」


 悲しいほどにうろたえるスウェインを見ながら、私は、少年の前途が多難であることを予感して心の裡だけでエールを送る。

 むしろ、この傍若無人な少女と一時的な関係でしかないことに、私は感謝していた。


「もし姉と合流できたら」私は、特に興味があったわけではないが、スウェインに助け船を出すつもりで言った。「家に帰るのか? ヴァイデンではないのだろう?」

「そう簡単に個人情報を漏らすとでも?」


 まあ、そうか。

 訊いた私が馬鹿だった。


「そっか」スウェインが、呟く。「僕は施設だから、そうなると暫く会えないね」

「施設はヴァナード王国でしたわよね」シェスタは、詳しい場所がわかればいいのですけれど、と付け加えてから、言った。「王国にもいくつか家がありますので、決して疎遠になるわけではありませんよ」

「え」


 スウェインが、少し固まる。シェスタが身につけていたものはいずれも仕立ての良い高級品だったので、それなりに資産のある家の娘だろうことは予想できた。

 ただ、王国にもいくつか、ということは、他にもまだ不動産を所有していることは想像に難くない。

 スウェインの脳裏に、身分違い、という言葉が浮かんだとしてもおかしくはなかった。

 ただシェスタ自身にはそういった感覚がないようで、固まってしまったスウェインを、小首を傾げて不思議そうに見ている。


「朝一で病院に連れて行ったほうがいいわね」


 そこでカレンが、寝室から出てくる。腕には、リリーが着ていた生乾きの服を抱えていた。彼女はそれを風呂場の洗濯籠に放り込んでから、キッチンに戻ってくる。


「なんとなく察しはつくけど」カレンは、私の目をひたと見据えた。「あの娘は?」

「〝深紅の絶望〟の構成員だ」


 隠す必要はないと判断して、私は言った。


「最初にリロイを騙して拉致したひとりでもある」

「はー」


 カレンの吐息は、なんとも気が抜けたものだった。

 事実、気が抜けているのだろう。

リロイにつきあっていると、困惑や憤りがいつしか感心に変わり、最終的にはこうなる。こうなればあとは、リロイという事実を淡々と受け入れられるようになるのだ。

 まあ、嬉しくもなんともないが。


「これも察しがつくけど、彼女も施設にってことかしら」

「非常に申しわけない」


 相棒の代わりに、私が謝罪の言葉を口にする。「ただ、今度は寄付金か、あるいは別のなにかで相棒にも負担させよう」

「間違いなく利用されるけれど、いいのかしら」


 カレンは、気の抜けた表情を引き締めて言った。


「ヴァルハラは営利企業だから、リロイ・シュヴァルツァーが関わったとあれば放っては置かないわよ」

「せいぜい、こき使ってやればいい」


 私は、肩を竦める。カレンはことの重大性を私が理解していないとでも思ったのか、双眸を細めた。


「汚れ仕事でも?」

「そこは、安心してもらっていい」私は、言った。「いざとなれば、関係者を皆殺しにしてリリーを施設から連れ出すだけだ」

「なにがどう安心できるのよ」


 突然、頭痛に襲われたのか、カレンは指先で額を押さえる。そんなものを自社に取り入れていいのか、不安になったのだろう。

 リロイは猛毒を持った獣だ。上手く操ればあらゆる障害を取り除く能力がある反面、下手をすればその毒に自らが冒されてしまう。

 少なくともこれまで、リロイを上手く操れた組織は存在しない。


「諸刃の剣、とはよく言ったものだな」

「あなたの相棒でしょうが」


 カレンは腹立ち紛れに、私の肩を平手打ちした。

 いつもリロイに突っ込んでいるので、突っ込まれるのは新鮮だ。

 ただ彼女は、リロイとの戦いでもわかっていたが、単純に腕力がある。叩かれた衝撃で私はよろめき、それを見たシェスタが鼻を鳴らした。


「あれのどこが、頼りになるんですの」

「いや、でもさ──」


 スウェインは抗弁しようとしたが、そろそろそれが無駄なのだと察知し始めたようだ。


「カレンさん、僕とシェスタで街に出ても大丈夫かな」


 ある意味、ここで一番の権力者に話を振った。正しい判断だ。


「なにしに?」

「シェスタのお姉さんを捜しに」

「ああ」


 カレンは、得心がいったように頷いた。

 そしてすぐに、首を横に振る。「ふたりじゃ駄目よ」それは有無を言わさぬ口調だった。「ただ、わたしも今日は忙しくなりそうなのよね」彼女はそう言って、私を横目にした。


「暇そうなこの人に、ついて行ってもらいなさい」

「えー」


 シェスタは抗議の声を上げたが、私に対するときとは別人のように弱腰だ。

 というよりも、私とリロイにだけきつく当たっている、といったほうが正確か。


「お願いできる?」カレンに訊かれたが、否も応もない。世話になりっぱなしでなにひとつ恩を返せていないのだから、大抵のことはやらせてもらう所存だ。

 私が了承すると、シェスタが恨みがましい目で私を睨めつけたが、知ったことではない。


「あと、あなたの相棒はあれ、寝てるだけみたいに見えるんだけど、どうしたらいいのかしら」

「放置で構わない」


 実際に寝てるだけなので、特にできることはない。そこら辺に転がしておけば、そのうち勝手に目覚めるだろう。


「じゃあ外に出るついでに、彼の服を買ってきて着せといてくれる?」

「私が?!」


 思わず、自分でも驚くぐらいの声が出た。

 買うのはまあ、百歩譲ってよしとしよう。

 だが、着せるというのは如何なものか。


「相棒でしょ」

「うむ……」


 ぐうの音も出ない。

 確かに、スウェインやシェスタにさせるわけにもいかず、またこれ以上、カレンに負担を強いるのもお門違いとなると、私以外にはいないという結論になる。

 理知的であることを、恨む日が来ようとは。

 そういえば前に獣化したときは、一体誰がリロイに服を着せたのだろう。

 レディ・メーヴェ、ということはないだろうが……。


「まあ、それはそれとして」カレンは、私の葛藤などあっという間に横へ追いやった。「捜すって、どう捜すつもりなの?」

「それはもちろん、街を歩きますわ」


 すでに計画があるのか、シェスタは迷うことなく言った。「ゆっくりとメインストリートを歩いたあとは、カフェでお茶にしましょう。もちろん、姉さんの目に留まるようテラス席のあるお店でないと駄目ですわよ」彼女はそこで言葉を切ると、少し残念そうに首を横に振った。「できれば美術館や博物館を巡りたいところですが、こんな辺境ではそれもあまり望めそうにありませんわね」

 ちなみにここヴァイデンにも、美術館はある。ただし小規模で、高名な作家の作品が展示されているわけではない。


「劇場ぐらいはあるのかしら? 演目にもよりますが、それでも構いませんわ」


 大衆劇場ならあったはずだが、演目はお世辞にも上品なものではなかったはずだ。

 傍らでカレンが、笑いをこらえている。


「ディナーはレストランもいいですが、屋台でも構いません。高ければいいというものではありませんからね」


 それは人捜しのプランではなく、デートの予定ではなかろうか。

 まあそうなると、確かに私は邪魔だな。

 私にだって空気は読める。


「遠巻きに見守ろう」笑いをこらえるのに必死で変な顔になっているカレンに、私は耳打ちする。彼女は黙って頷いた。口を開けば笑ってしまうからだろう。

ただ、遠巻きに、といっても難易度は高い。


 私の美貌は、どうしても人目を引くからだ。


 剣をスウェインが背負うなりして所持してくれれば万事解決なのだが、それはあまりに不自然だし、そもそもなぜ彼が剣を持たなくてはならないのか、上手く納得させる自信もなかった。


「でもあなた、目立つわね」笑いの発作をどうにか呑み込んだカレンが、そう言った。


 よくわかっている。


「地味な服とか着てみたらどうかしら?」


 なにもわかってないようだ。

 どうして私が、周りに合わせなくてはならないのか。

 そしていかに地味な服を着たとしても、目立つという問題点が解決されるとは思えない。


「別に強制はしないけど」カレンは、私の表情から内心を推し量ったのか、そんなふうに付け加えた。「お嬢様のご機嫌を損なわないようにね」


 私は、スウェインと予定について話し合っているシェスタを見た。

 上機嫌で、実に楽しそうだ。

 これに水を差せばどんな反応が返ってくるか――考えるだけで、うんざりしてきた。


「検討しよう」


 私は溜息交じりに、そう言った。





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