少女
目が醒める。瞼が開く。
ぼんやりとした視界が段々と明瞭になり天井が見える。
そして今の状況に一言添える。
「.....俺の部屋じゃねえ」
目覚めたところはアニメのタペストリーが敷き詰められたナキトの部屋では無く、木を組み合わせた素朴な作りだった。
「って事は夢から覚めてないのか...」
ナキトは怪物に襲われた時の出来事を完全に信用してはいなかった。どうせ夢だろう、そういう思いがまだ残っていた。
「とりあえず、ここどこだ。見たところ、大きな建物の一室みたいだが...」
「起きましたか...?」
と、体を起こし思慮に浸っていたナキトに話しかける声があった。
14,15歳程の茶色い髪をした女の子だ。
こちらを震えながら見てる
「おう、ありがとう。君がここまで運んできてくれたの?」
恐らくこの子ではないが挨拶交じりに話を膨らませようみたいなノリで聞いた。
女の子は震えながら答える
「はい、空間移動の魔法を扱えるのが周辺では私ぐらいしかいないので...」
おっと?斜め上の答えが返ってきたぞ?
それにしても、知らない者に少なからずや警戒心を抱くのは生物として当たり前のことであるが、この震え様はその類とは少し違うものだ。
ナキトは軽く思考してると少女はこれまた震えながら質問をしてきた。
「....それにしても何故倒れていたのですか?」
ああ、当然の疑問だわな
「あ、ああ実は怪物に襲われてな。そこでかくかくしかじかあって怪物を倒したらその直後に倒れてしまったんだよ。」
「かくかくしかじか...怪物とはあの肉片のことでしょうか...?断面を見たところ空間ごと根刮ぎ掻っ攫ったような類の魔法...あの魔女の力は貴方が振るったものなのでしょうか?」
比喩も使わず魔女の力とキッパリ言い切った少女にナキトは少し怪訝な表情を作る。
「魔女の力、とは?」
それを聞いて少女は何故か少し安堵したような顔になる。
「知らないのですか?この世に数人しかいない魔女しか使えない力、この世にある魔法とは別次元の力ため感知することもできない悍ましい力です。その魔女の力の1つに制御下にある空間の全てを操る力があるんですよ。勿論この力はその魔女しか持っていません。空間に干渉する力を持つ私にとって1番関わりたくない力ですね...」
何だ何だ、あの力ってそんなヤバスな代物だったのか?
「お、おおそれは恐ろしいな...そ、そういや〜助けてくれた人がいたな!その人がその魔女だったのかもな〜」
咄嗟に下手くそな嘘をつくが、少女はひどく真剣な顔つきで「それを考慮するとここら辺にまだ魔女が....でも何故人を助けた....」等と自分の世界に入ってしまった。
と、その時、不穏な鐘が一斉に鳴り響いた。
その鐘を聞いた瞬間、少女は思考を止め立ち上がり、ベッドに腰掛けてた俺の手を取り慌てたように部屋を出る。
「どうしたどうしたどうした??何だこの鐘は?」
ナキトは走りながら少女に質問する
「敵襲です!」