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隼人の本音

 バランスのいい男3人だと思う。

 畔柳隼人(クロヤナギハヤト)はこの前一緒に温泉施設に行った時の写真を見てつくづく思う。変な柄の施設着をお揃いで着ているのがおかしくて、近くに座っていたおじさんに声をかけてわざわざシャッターを押してもらったのだ。

 何でうまくいかんねぇんだよ。

 (サトシ)は真面目すぎて少々アウトドアが押し付けがましいのが失敗の元だけれど、今は反省しているし、もともと女兄弟に囲まれているから当たりもソフトで優しい。

 来也(ライヤ)はフラフラしていて素直すぎるところが玉にキズだけれどそれも愛嬌だし、実際オシャレで可愛い顔をしている。

 自分は・・・何だ。まぁいい。

 弟は普通に就職し、配属先が九州になったことで当時の彼女と結婚、と順調に男としての分岐点をクリアしているのに、自分は何を間違ったのかグズグズと独身同士でつるんで彼女すらゲットできない日々だ。

 ただ、男同士でつるむのは悪くない。そこに女が入ると、彼女いない歴四年が重くのしかかってきていまひとつ調子が出ないだけだ。


 最後の彼女と別れてから好きになった女が1人もいなかったわけではない。それは部活(という名の合コン)で知り合った子ではなくて、勤めている会社に事務員として入社してきた毬恵(マリエ)ちゃん。ぽちゃっとした頬が可愛くて、チャーミングな女性だ。これというアプローチもできないうちに、彼女はどうやら隼人の2つ下、スラリとした営業マン里仲(サトナカ)のような男がタイプだと噂が回ってきた。どうやら、上司がさらっと聞いたらしいのだ。

 隼人は背も高くないし、しょっちゅう外で作業しているので日に焼けた肌に汗臭いシャツでいることが多い。一方里仲はスーツに縁無しメガネのややインテリ系で、どう頑張っても隼人とは共通項が見出せない。

 そのうちどこから漏れたのか、女性の事務員たちから、隼人の活発すぎる「部活」(という名の合コン)のことを嘲笑交じりにいじられるようになって、隼人は毬恵の線はついえた、と落胆した。毬恵は入社年数が浅い上にあまり要領が良くないので、決して隼人をいじる女たちには加わってないのだけれど、絶対に話は伝わっているだろう。軽蔑したに違いない。毬恵への思いを早く過去にしたくて、来也との「部活」は勢いを増した。ただ、これという成果がないのが難点なのだが。

 ただ、毬恵からも里仲からも浮いた話1つ聞こえてこない。もしかして秘密の社内恋愛が始まっているのか、と1人落ち込むことはあるけれど、隼人の中ではだいぶ毬恵への気持ちは収まりつつあった。今なら、毬恵に軽い冗談くらいは飛ばせる余裕がある。そんなチャンスは滅多にないのだけれど。

 だから余計にそろそろ彼女が欲しい。けれど、来也の言うように、部活に参加してくる女に自分の理想の人が来るという確率はもう天文学的にない気がしてきた。少し前にみんなからダサくて鬱陶しいと評された、二宮舞衣(ニノミヤマイ)から何度か連絡をもらって会話のラリーはしたけれど、後半はもう条件を詰めにかかってきて、隼人が長男で弟がすでに独立して家を出ていて、両親と同居しているという事情を知るなり、手に取るようにその熱量は失われて行った。

 別にどうでもいいのだけれど、姉貴が姑とのゴタゴタが尾を引いて離婚に至ったことにえらく重きを置いていて、「男なんだし、自分の城持ちたいとか思う?」という遠回しなのかストレートなのかわからない質問をされた時に正直引いた。ちょうど「映画、最近観に行ってないんだよね」「友達から教えて貰ったイタリアン、すごく良さそうだよ」というこちらからの誘い文句を促すような会話が続いて、うんざりしていたのだ。もう面倒で、母親が体調を崩していて安心させてやりたいんだよなぁと呟いたら案の定、連絡が来なくなった。

 こんな時ばかり思惑通りに行ってくれなくてもいいんだけど、と隼人はクサる。


 両親は舞衣に言ったようには伏せってはいないけれど、昔と思えば年老いた。長男という自覚は一応はあって、気楽に家を出て好きな女とアパート暮らしという弟に羨ましいという気持ちはなくはないけれど、それはもう順番だから仕方ないのだ。イマドキ、家を継ぐなどという思想はごく普通の家庭には当てはまらないと思うのだけれど、だからと言って弟と同じようにはいかないだろう。

 学生の頃にはそんなこと考えないで恋愛できていたのに、と学生時代の恋を実らせて結婚した弟にまた引け目を感じるけれど、思えば昔から好きになる子、好きなアイドル、すべてがぽっちゃりした朗らかな女性で、今もその好みは変わってはいない。そういう女性は得てしてのんびりしていておおらかなので、隼人の兄貴キャラがキツいと感じることが多いのだ。そろそろ自分の好みを返上して、コトに当たる必要が出てきたのかもしれない。


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