パリピーズ?
「私たち、ワカヨアパリピーズでーす」
呆然としていると、派手な装飾を施したネームカードを渡される。ワカヨアパリピーズのワカ、ヨアと、それぞれに名前が印字してあった。畔柳隼人は一遍に目が覚める。
真っ赤なブラウスで仕切りまくっていた佐宗凛が、部活(という名の合コン)をセッティングしてくれたということで、いつものメンバーでやってきたけれど、実際今いるのは佐宗凛を除く初対面の女2人で、隼人、蔵田智、戸苅来也が到着するなり、どこかのアイドルグループのような自己紹介を繰り広げたのだ。
「おい、来也。こいつら芸能人なのか」
隼人が早口で来也に耳打ちする。「まさか」と鼻で笑った来也は「ハメられたかなぁ」とつぶやいていた。
「なんかリンリンは仕事でトラブリングらしいからぁ、女子足りないけど始めましょ」
ヨアと名乗った女の方が、早速メニューを広げる。すでに彼女たちのジョッキは空になっていた。そしてそのヨアは「酒飲みパフォーマンスあるんで、披露していいですかぁ」とジョッキが届くなり隼人の顔を覗き込んでいる。
「僕、ウーロン茶頼んだんですけど、これウーロンハイっぽい」
智が自分が手にしたジョッキに鼻を近づけて、手を上げながら嗅いでいた。
「えー、パリピーズの前でノンアルとか意味わかんない」
「はい、ぐぐっといっちゃってよ」
「いやいや、コイツは車だからさ」
「代行でいいじゃん」
「いや、飲めないの!体が受け付けないから」
「えっ、そんな男いるの?」
いるわ。智はすでに帰りたくなってきた。
「ワカヨアは、お酒飲めないのはノンだから、ごめんねぇ、お兄さん」
深々と2人から頭を下げられ、本気で帰ろうかと智は悩む。
それから隼人がとりなし、何とかウーロンハイからウーロン茶への変更が許され、今度こそみんなでジョッキを掲げた。とすると、
「あ、じゃあリピアフミーねー」
は?
「さーあ、かんぱーい。かんぱーい。オレオレ、レー、レー、レーザービーム。やっしょいわかしょい、そーれそれ。はいワカちゃん行っちゃう、はい、かんぱーい」
「乗れるかっ」
はいはいはーいとワカヨアから言われ、男3人は目配せしながらジョッキを掲げて口をつけた。もうこの時から反省会が荒れるのは必至だった。
「ねぇ何あれ。あれが佐宗凛の友達とか意味わかんない」
「いい加減な奴が仕切るとろくなことねぇな」
「隼人くん、智くんが落ち込むからやめてよ」
「バカ来也、お前のことだよ。今回は智は関係ないぞ」
隼人は兄貴肌でウザいところもあるけれど、智は隼人にはちゃんとしたごく普通の幸せが末長く訪れてほしいと思う。隼人はそうなるのにふさわしい。
「それにしても飲み会盛り上げるパリピーユニットとか名乗っときながら、全然盛り上がってなかったじゃん。楽しいの自分たちだけだっつーの」
それからも、二杯目コール、8時のコールなどいくつかパターンがあり、すべてをやりおおして帰って行った。女2人が同じ方向に歩いていく後ろ姿を見送りながら、
「一緒に住んでんのかな」
「そしたらずっとパリピ?地獄だな」
「とにかくリンリンに連絡して文句言っとく」
来也は本気で怒っている。
「お、亭主関白か。やるねぇ、来也くんは」
「違うって言ってんだろ」
「けど、あの佐宗凛がアプローチしてきてるんだろう?見初められたな」
「魂胆見え見え、フリーターの方が断然可能性あるもんね、専業主夫」
「でも佐宗凛はともかく、あの二人は何でああなったのかはちょっと興味あるなぁ」
「お、隼人くん、四年もブランクあるとああいうアクが強いのに行きたくなるわけ?」
来也はおどけて見せるけれど、隼人の目は真剣だ。案外本気で2人に興味があるのかもしれない。
「それにしても友達選べよなぁ、佐宗凛」
「来也が言えばおとなしく従うかもよー」
隼人がおかしそうに来也の肩を組む。
「佐宗凛とは何でもないし、ボク専業主夫なんてなりたくない」
「案外コロっと変わったりしてな、本当に好きな奴ができたらさっくり会社辞めてあなたの好きにして、なんて言ったりしてぇ」
「えー、会社辞めたら魅力半減じゃん」
「お前結局どっちなんだよ」
隼人は来也からパッと離れて呆れ顔をした。




