フィリダ国民無差別失踪事件(中編)
【ミキト フィリダ街の宿屋内】
――翌朝……。
ボクらは起きて、朝食を済ませた後すぐに、作戦会議をした。
その中に、リシャスも混じっている。
「これが寺院内の地図よ」
と言って、魔力を使って見せてくれたのは、
普通では売ってない、ここの寺院の地図……。
「これ……、普通では売ってないんじゃ……?」
「――あたりまえよ。
私だからこそ、わかるの」
やっぱり言われちゃった……。
「〈そんなの普通に出回ってたら、それこそ謀反が起きて、国が滅びちゃうよ〉って、妹が言ってるんだけど」
確かにそうだよね……、自分で言っといて、何の言葉も言い返せない。
「まぁ、それはさておき――、
まずは、どこから侵入するか……、ということだが?」
「リシャス様、正面突破はさすがに――」
「どうやって、こじつける訳?」
「そんなの、門前払いだぜ?」
「……。」
ドゥルゲはとっさに言ってみただろうけど、リシャスとイオに、あっという間に却下された。
「オレなら、何かに変装して、侵入するけどなぁ……」
「――で、そのプランはどのように考えてるの?」
「えっと……、あの……、その――」
「はぁー、妹のレダが怒ってるじゃない」
結局、イオの口からでまかせだったようで……、リシャスに突っ込まれた瞬間、何も言い出せないというオチで終わってしまった。
なら、どうやって侵入すればいいのだろう……?
それからというものの、何の進展も無しに、時の足は早まっていくばかり。
結局、『見学』という形を表面で見せかけての侵入がいちばん良いとの話で決着がつき、宿屋を後にした。
昨日の噂はちらほらあるものの、街中はいつもと変わらず、多少の賑わいを醸しながら、平然としていた。
それはいいとして、本題の分なんだが……、あまりまとまってないままで、どうやってあの場所に入るべきか……?
いろいろ考えていると、イオが本題の件について、話を切り出した。
「なぁ、とりあえず入ろうぜ!」
なんか……、そんなに軽い言い方でいいのか?
「ま、まぁ、そうだね。
ボクもうだうだ考えてる場合じゃなかったね」
と、自分の気持ちを若干、ほのめかしつつ、笑ってごまかす。
「そうだな、アイツらをなんとかしなくてはな」
ドゥルゲは至って、冷静だ。
とは言いつつ、3人の決意はなんとなくだが、固まってはいるようだ。
【ミキト ヴェルゼト寺院前】
ボクらはフィリダ内にある、ヴェルゼト寺院前にたどり着いた時、少し足が止まってしまった。
「おー、さすがだ」
一応、知っているイオは感嘆を受けている。
だがボクが見た印象は――、
どこか懐かしい感じで……、なんと言うかそう、TVで見たり、どっかのゲームにありそうな、モスク|(?)っぽいような感じ……、かな?
――外観としては。
でも、その寺院前には2人、警備員らしき人がいるし……。
「すみません。
僕たち、見学しに来たのですが……?」
珍しくイオが、一人称を「僕」に改めて、一学生のフリをして、見学を申し出た。
だが、警備員は――、
「残念だが、ここはいろいろあって、立ち入り禁止だ」
と、あっさり門前払いされてしまった。
ボクらは一旦、その場を離れ、緊急会議をする。
「どうします?」
「俺は、なんとなくそうなるんじゃないか、とは思ってたけど」
「〈なら、それを早く言ってよ!〉って、妹が言ってるんだが…?」
「いや、なんとなくだ。
普通、寺院に警備員を置くか?」
たしかに……。
「「「うーん」」」
困り果てた……。 ボクらはこのまま、裏の悪事を暴けずじまいだろうか……?
そう思っていると、ややしわがれた声が、ボクらを呼ぶ。
「そこの君たち?」
「「「??」」」
物陰から、おじいさんがボクらを呼んでいて、ボクらはその人に近づく。
「あんた達、あの教団をなんとかしようと思っているだろ?」
「ええ、ボクらはなんとなくですが、怪しいと思っているんです」
「あんな、いくら正面から入ろうとするのは無理じゃ。
お主らだけに、いい道を教えてやろう」
「『いい道』……、とは?」
『いい道』って、どこかに通じるのか……?
「こっちじゃ、ついてこい」
ボクらは、おじいさんに連れられ、道を案内してもらうことになった。
ここから、衝撃の事実が徐々にわかり始める……。