ボロぞうきん
俺はこの学校を二年間見てきた。
俺の主人は小学三年生の時、俺の事を手に取ってくれた。
最初俺がこの学校に来たときはビックリした。
建物自体が古く木造。木の至るところが腐って今にでも崩れてしまいそうだった。
そして、もうひとつ。教室の隅っこや溝、狭いところには汚い塵がぎっしり詰まっていた。
俺は今にでも自分で掃除をしたくなった。しかし俺には手も足も口も耳も目も何もないから、何もする事ができなかった。
しかし、学校というのは案外しっかりとしているもので、毎日毎日子供達が家に帰る前に教室の至るところを掃除をした。
勿論、俺の事を使ってくれた。初めて俺の事を使ってくれたときは言葉にならないほど嬉しかった。………まぁ、口は無いけどね………。
そして、それからもう二年。俺の主人は俺の事をいつも使ってくれた。
俺も毎日少しずつ俺の身体が汚れていくことを感じた。だけどそれは俺の存在価値である。俺は嬉しかった。
しかし、今日で俺はお役御免らしい。今では俺の身体も真っ黒だ。
俺の主人は新しい俺を買った。俺は棄てられた。
別に悲しくなんてない。いつか俺に訪れる運命だったのだ。
いまさら、後悔などしない。
でも、でものでもだ。もう一度主人と一緒に掃除出来るなら――
――また一緒に、俺の身体がボロボロになるまでこの学校を綺麗にしたいな………。
そう思わずにはいられなかった。
………まったく。俺もいつの間にかとんだ甘ちゃんなっていたようだ………………。
だが、もう主人の手の温もりは感じられない。
棄てられた存在。
だけど、俺の主人は最後の最後まで俺のことを使ってくれた。
未練などない。
でも………、いつか会いたいな。主人の顔を見てみたい。
そんな、些細な夢があった。
そんな夢なんて叶うはずない………。そんなこと分かっている。
ちゃんと、理解しているんだ。
まっ、これは、もしも出来たらなぁ。って話だからさ………。
だから、その、もしもの時までじゃあな俺の主人。
こんな「ボロぞうきん」を使ってくれて――
――ありがとう。
最後まで読んでいただきありがとうございました_(._.)_