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-お待ちクロネコって知ってるか?-
とあるインターネットの掲示板。ある者の名が飛び交っている。
Re:クロネコ?だれだそれwwwあれか?宅急便か?www
Re:おいwwwふざけるなよwww
Re:聞いたことあるぞ、あれだろ、なんか、情報屋てきなやつ
Re:そんなのほんとにいるのか?
Re:あー、あれだろ、名前は有名だけど、ほかのことは何も分からない奴
Re:なんだそれwフィクションじゃね?ww
Re:フィクションって言えばさーHBSって知ってるー?w
Re:えー、またネタ?www
Re:ちげーしwなんか裏組織でさーw人殺してもなんも言われねーんだってさーw
Re:それこそ嘘だろwww
Re:、、
Re:あ?なんだ?
Re:このサイトは、、消す、、
--プツン--
HBS--。
正式名称は犯罪撲滅組織。2115年、日本の犯罪数は激的に増えていた。犯罪の存在が普遍的な物として風化していた。更にそれを取り締まるはずの警察はそれを見て見ぬふりをし、それだけでなく警察が犯罪を起こすケースも少なくはなかった。そこで作られたのがHBS。犯罪を無くす為に実力があり、世間に感化されていない者達が厳選され集まる組織。
HBSは、人にばれては動きにくくなるし、恨みをかう事があるので、名前以外は漏れないようになっている、謎に包まれた組織である。
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「約束の情報。」
9月中旬。とある喫茶店。顔を質の悪い真っ黒な髪で覆い隠している細身の男と、中年太りまっただなかの男が座っていた。真っ黒な髪の男がポケットに入れていた茶色い封筒を取り出した。
「そ、、そんなに、堂々と出してもいいのか?!」
明らかに挙動不信な男が周りをキョロキョロと確認しながら封筒の中身を確認する。
(、、そんな風にする方が怪しいよ。)
コーヒーの苦みに顔をしかめながら、男の様子を観察している真っ黒な髪の男。
「た、、確かにっ。金はっ、、振り込んである、、じゃ、。じゃあな!?」
男は、封筒と椅子にかけていたコートをひっつかみドタバタとせわしく喫茶店から出ていった。
(そんな子会社の情報どうするんだ、、)
「、、はぁ、」
男は万札を机に置き、店員の呼ぶ声を無視し、店を出た。
喫茶店は表通りに面しており、店を出ると人が流れるように歩いている。普段全くと言っていい程家を出ない男にすると、吐き気のするような光景だった。男、、『情報屋、句露猫』暗闇にまぎれ、朝露の様に姿を消す、、そんな理由から呼ばれるようになった名前。ただ本当にその理由かも、誰が名付けたのかも、分からない。その性別ですら、確実とした情報は無い。それが『情報屋、句露猫』。
(う、、限界、、)
人の多さに吐き気を覚えた句露猫は、すっと裏路地に入り寂れた公園のトイレへ消える。
「うわ、、」
トイレは、錆やら落書きやらで汚れていて、壁に髪の毛がつくだけで赤いインクが髪に付いてしまった。
(ま、いいか、捨てよう)
髪の毛の中からピンを抜いていく。
プツ--
最後のピンを抜いたとき髪の毛の切れる音がして、抜いたピンには白い髪の毛がついていた。
(気持ち悪い毛、、)
黒い髪を掴み、髪の毛をずらすと中から白くて、毛先が青紫な髪の毛がハラリと落ちてきた。黒い髪に隠されていた顔は、黒く吸い込まれそうな瞳にふっくらとしたピンク色の唇に細い眉。目の下にある青い隈が色白の肌に目立っている。女としての美しさも、男としての美しさも持ち合わせる美貌。だが本人は気持ち悪く感じ、素顔でいる事が好きではない。
(さっさと帰ろう、。)
黒いウィッグをトイレに流し外にでる。そこに、スーツの男が立っていた。青縁の眼鏡をかけていて、張り付けたような笑みを浮かべていた。
句露猫はそのスーツの男の横を、通り抜け、、ようとした。
「貴方が、、句露猫、ですか?」
句露猫とその男がすれ違う瞬間に呟かれたのだ。句露猫は思わず立ち止まってしまった。
(、、なんで素顔で会うんだ、、)
「だったら、何?」
句露猫はその男に探る様な視線をおくる。
「そんなに怪しまないでください。ただ貴方をスカウトしに、、。」
「ちょっとまって。」
句露猫が男を、いや、その奥を睨みつけている。男が振り返ると、そこには土下座している老人とその老人を踏んでる輩とそのツレであろう奴らがいる。
「はぁ、、こんな所でくそがきがのさぼりまわってるなんて、、ここの実行担当は何してるのでしょうか。句露猫さん、実行部を呼びますので、かくれ、、聞いてませんね。はぁ、怪我人は少ない方が良かったのですが、、医務部もですね、、」
男はぶつぶつと文句を呟きながら、ケータイを手にし誰かに電話をしている。
「ギャハハハハハハ!!!だーかーらーさ?さっさとその鞄の中身出せって言ってんのー?わかんないー?」
老人の手を踏みつけている輩が下卑た笑いを響かせて言う。老人は土下座している訳でなく、腹に隠した鞄を守っているようだ。
「この、、この金は、儂と家内の2ヶ月分の生活費なんじゃ、、これが無かったら儂は、、!」
老人が顔をあげて許しを乞う。その目には涙が滲んでいる。
「ギャハハハハハハ!!! しーらーねぇよ?」
輩は足を大きく振りあげ、老人の頭めがけてふりおろし、、かけた。
「うぐぉっ、ぶはっ、、!?」
輩が後ろに吹っ飛んだ。老人が目をあけるとそこには句露猫の、後ろ姿があった。
「、、大丈夫?逃げて、、。」
句露猫はそう言うと老人を庇うように輩に向かって立った。
「あっ、、有難う!!!」
老人は鞄を大事そうに抱えなおし、踏まれた手を痛そうにしながら逃げて行った。
「なんだ、あいつ!総長を!!!」
いきなり現れた小柄な人物に輩をかこんでいた、ツレ、共がざわめき始めた。
「くっ、、そ、、なにすんだよ!!せっかくのカモを!!!」
総長と呼ばれた輩はゆらりと立ち上がり、句露猫を威嚇する。
「別に、。たまたま通っただけ、、。」
そう一言残すと、踵を返して、東雲の方へ向かう句露猫。
「あっれぇー?しののめがーいないよぉー?」
そう言いながら公園に入ってきた白衣の少年。金髪はゆるく巻いてあり、くまを連想させるような髪の毛のはね方。目は大きく茶色で涙を溜めているのは、わざとなのか。
「おー、丁度いい、新しいカモが来てくれたな。」
輩はニヤニヤと少年の方へ歩いていく。
(だめだ!!可愛い子が汚される!!!!)
句露猫はこう見えて、可愛い物(者)が好きだ。輩に近づく少年を、見過せなかったのだろう。走り出した。
ドゴッッッ
その走った勢いを利用して輩の顎を蹴りあげたが、句露猫に気付いた輩がとっさにナイフを取り出し句露猫の右腕に刺した。
「いってえー!!!顎くだける!!!!!」
「、、っ、、ふっ、ぅ」
輩は喚きちらし、句露猫は痛みに耐える。
「ナイフささっちゃってるよー、むちゃしちゃ、めっ!」
少年が句露猫に近づき、顔をみあげる。少年の唇がとがっており、拗ねたような表情になっている。
「、、ご、、ごめん?」
(可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い)
句露猫の頭の中は大惨事だった。
「い、、今のうちに、、、」
輩が逃げ出そうとすることに少年が気付いて、輩の方へ走っていく。
「あ、、危な、。」
少年を引き止めようとする句露猫の声が止まった。
どんっっっっ
少年が自分よりふた周りも大きな輩を吹っ飛ばしたのだ。その吹っ飛んだ先に木があり倒れてくる。
「うあーっ!」
少年が目をつむり来るであろう衝撃に耐えた。が来るべき衝撃が来ない。少年が目をあけると2つに割れた木と句露猫が立っていた。
「、、怪我、、ない?」
「うん!!ありがとー!!」
ニパッと効果音のつくような笑顔を句露猫に見せる少年。
「、、痛い。」
そうつぶやくと、句露猫は力任せ右腕に刺さったナイフを、引き抜いた。
「あー、、そうだった!!あのね、しののめしらない??あのね、眼鏡のねスーツでね、、」
「志乃﨑さんっ」