ある侍女のぼやき
お疲れ様! 貴女もお昼? 侍女の仕事も慣れてきたみたいね。
はぁ、最初は皆仕事頑張りますって言うのよね。でもほとんどの子が2、3年で結婚して辞めていっちゃう。
そうよ。私と同期の子なんて残っていないかも…
私この仕事始めてもう8年目よ…… ベテラン過ぎて嫌になっちゃう。
歳? 24だけど。
よく見えないって言われるの。この前なんか、明らかに年下な料理番の子にエライなぁ~ってナデナデされたし。あれはさすがに屈辱的だったわ。
結婚しないのかって? ふふふ…… 貴女、喧嘩売ってるのかしらぁ? したくても出来ないのよっ。
え? 結婚してないのが不思議だって?
ありがとう。お世辞でもうれしいものね。
ん~自分でもわからないのよね。今まで恋人が居たこともあったのよ。
でも、お付き合いした途端に元カノと浮気していたことが判明したり、仕事で急に遠くへ転属になったりでなぜか続かないの。
私も一応貴族の娘だから、お見合いの話でもありそうなのに全く無いし……
はぁ、もうそろそろ結婚は諦めて、仕事に生涯を捧げようかとも思ったり。
でね、最近独りが寂しいから可愛い精霊獣でも飼おうかな~とか考え中なんだけど、飼ったらもう完全に結婚できない様な気がしてね。
中々踏み切れないわぁ……
何でかって?
貴女ははまだ若いからこの葛藤が理解できないかもしれないけど。
……… 結構まことしやかに言われてるのよ。
婚期を逃した寂しい独身女性が精霊獣を飼ってしまうと、もう結婚できなくなるってね。
わかるわぁ。
あんなモフモフの可愛い獣が側にいたら、別に恋人や子供がいなくても平気になっちゃいそう!
現に、王宮で働く独身熟女の方々は、大体何かしら飼っていらっしゃるし。
侍女長の話聞いたことある? あら、まだか。
そのうち、いかにうちの獣が可愛いかを延々と力説されるから気を付けて。
だから私がもし精霊獣を飼い始めたら、もう諦めたと思ってそっとしておいて頂戴ね……
ん? どうしたの?
げっ! あの男か……
チッ、見つかった。
あ~ら。騎士団長様がこんな所でどうされたのかしらぁ?
ちょっと気安く触れないで!
うぅぅ…… 自分がデカイからって馬鹿にしないで頂戴!
は? 何で貴方のところへ行かないといけないのかしら?
だから、照れてるんじゃないわ!
ちょっとは人の話を聞きなさいよぉぉーーーーー!
……… はぁ、もういいわ
さ、お昼も終りだからこの男は放っておいて行きましょ。
あぁぁぁぁっ!! 本当に腹立つ… あの男!
ごめんなさい。大丈夫よ。ちょっと精神が不安定になっただけ。
え? 騎士団長と知り合いかって?
知り合いもなにも、あの男は私が小さい時から何度も虐められたのよ。
探検に付き合わされたあげく湖に落とされたり、無理矢理木に登れといわれたり、後はプレゼントだって箱いっぱいの蛙を贈られたり…… 散々な思い出しかないわね。
大人になってもお兄様の上司だからって、気安く話しかけてくるし。
ああやって会う度に馬鹿にしてきて、一体何がしたいのかしら?
こっちは会うだけで精神力を削られるから、話しかけないで欲しいのに……
どうしたの?
え? 私が諦めない限り結婚できない?
どういうこと? 諦めたら結婚できないじゃない。
頑張れって…… 何を?
ちょっと待って! ちゃんと説明してから行きなさいよ……
…………………………
何だったのかしら?
最近の若い子の考えは理解不能だわ。
そういえば前にも誰かに同じようなこと言われたっけ……
あれは…… お兄様だったかしら?
お話が降ってきたので、さっと書いてみました。
主人公の名前すら出てきませんねw