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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

帰省

作者: 緋色要

初めまして、私の名前は片瀬麗。都内有数の女子高に通う麗若き乙女だよ!・・・ごめんなさい。調子に乗りました。普通の女子高校生です。あ、女子高に通っているのは本当です。


今日から夏休みなもんで、寮生である私は久しぶりに実家に帰省することにした。同じ女子高に進学した腐れ縁の友人と駅で別れ、徒歩で実家に向かっている。

熱い日差しの中、昔懐かし商店街を抜け、カートをゴロゴロ鳴らしながら歩く。途中で顔見知りのおばさんと話し、近所にいた悪ガキと一言言葉を交わし、自分の家に向かう。


実は私、高校に入学してから一度も実家には帰ってなかったりする。また今度と先延ばしにしていたらついに母親からたまには帰って来いと電話があった。

帰るまでの工程が面倒なだけで、家に帰るのが面倒な訳じゃない。というのは建前で、本音はあまり帰りたくないのだ。

私の家庭は所謂再婚というやつで、帰ったら必然的に再婚相手の義理の父親と義理の弟と顔を合わせなくてはならない。高校に進学するまで数カ月の間だけ一緒に住んでいたが、凄く気まずかったのを覚えている。

私には一つ下に血のつながった弟がいるのだけれど、弟と同い年のその義理の弟は直ぐに仲良くなり、義理の父親にも打ち解けていた。かくいう私は二人に他人行儀で接していた。その都度弟にからかわれたが、仕方がない。だって私は人見知りが激しいのだ。この歳でね。ああ、笑えない。


このままではあと数メートルで家に着いてしまう。自然と歩く速度が遅くなる。

そういえば、家に着いてからの事を全く考えてなかった。どういう態度で接しようか。義理の父親の孝文さんは無理しなくていいよと言ってはくれたものの、無理してああいう態度をとっている訳ではない。あれが私の精一杯なのだ。あれ?それは無理しているというのか??

等と考えている内に家に着いてしまった。

白い壁が太陽の光を浴び反射して眩しい。友達からは豪邸と言われていた。建築家であった父が腕を振るって建てた最高傑作だと母さんに聞いた。その割には使い勝手が悪い所もある。

今日は両親も弟たちも家にいると聞いている。私は重く深い溜め息を吐いた。

考えたって何も始まらない。こうなったらありのままの私で行こう。

そう意気込んで鍵を取り出し、玄関を開けた。


「ただいま~・・・」


しんと静まり返る家に思わず語尾が小さくなった。出迎えないの?え?お母さん達いないの??

リビングに誰かしらいるだろうと思い、靴を脱いでリビングに向かう。


「ただいま~って誰もいないし」


リビングも誰もいない。折角帰って来たのに誰の出迎えも無いなんて私って寂しい子だなと思わず涙腺が緩む。

弟は、和真はいるだろうか。無性に弟に会いたくなり階段を上がって弟の部屋の前に立つ。中から二人分の声が聞こえてきた。和真ともう一人、新しい弟の晃君だろう。


「和真?晃君?いるの?入るよ~」


ノックを2回してドアを開ける。中から「え?ちょっ」と声が聞こえたが、今は一刻も早く二人に会いたいのでその声を無視してドアを開けた。


「ただいま~今帰っ・・・」


目に飛び込んできた光景に私は固まった。

確かに和真と晃君は部屋にいた。

ベッドの上で互いに裸になって・・・。晃君が和真の上に馬乗りになって。


「なななななななななんっなななな!!!!?????」

「ね、姉ちゃん!!??な、何でドア勝手に開けるんだよ!!!」

「・・・」


和真が驚いた顔をして、晃君がしまったという顔をする。

私は目の前で起こっている事にパニックになった。

和真が晃君とあれでそれでそうだからぁああああって!おおおお落ち着け私!!


「おおおお、お邪魔しました!!!!」


私はそう言い残し階段を駆け降りる。とりあえず落ち着こうと冷蔵庫から麦茶を取り出し、がぶ飲みする。

はわわわわわわわ。どう言う事?どう言う事?どういうことぉおおお????!!!

それでも頭はまだ混乱している。だから頭を冷蔵庫に2,3回ゴンゴンとぶつけても問題ないよね。ぶつけてから自分で何やっているのか分からなくなり悲しくなった。


溜め息をついてリビングのソファーに座り、先程の状況を頭で整理する。ぶつけたせいで頭が痛い。

和真と晃君は二人でその・・・ええええ、エッチをしていた。男同士で。つまり、二人はそういう関係で。

私が知らない内に彼らは仲睦まじく過ごし、知らない内に互いを好きになり、知らない内にそう言う事をするようになっていたってわけよね。

べ、別に私そういうのに偏見はないけど、身内でそういうのがあるとビックリっていうか、どう対応したらいいのか分からなくなる。


腐れ縁の友人のそのまた友人がその道の人(腐女子というものらしい)らしく、その手の話はよく聞いたりする。友人が私も最初は引いてたんだけどね~漫画借りたりしている内に染まっちゃったよ~と言っていた。私に今度漫画貸してあげるとも言っていた。その漫画を読んで勉強しようかと考えた。


そういえば、この事を母さんたちは知っているのだろうか。和真が晃君とそういう関係だって。

お調子者の和真と、しっかり者の晃君。まあ、お似合いだよね。血は繋がっていないから、大丈夫だろうけど。ってその前に男同士だから問題ないか。あれ?問題?



しばらくぼうっとしていると階段を下りてくる音が聞こえてきた。

和真達だ!と私は慌ててソファーで姿勢を正す。

リビングのドアが開き、遠慮がちに和真が私を呼んだ。


「姉ちゃん・・・?」


和真の声は震えていた。悪い事をしてそれを見つかった子供みたいに。

和真の後ろから晃君も私を呼ぶ。


「姉ちゃん・・・あ、あのさ・・・」


和真は私がいるソファーまで近づいてきた。ソファーは3つありコの字型に置かれている。その内の一つに和真は気まずそうに座った。そしてその隣に晃君も座る。


「俺たち・・・は、その・・・」

「・・・二人は付き合っているの?」


和真が言いにくそうにしていたから、こっちから聞いてみた。案の定驚いている。


「うん」

「はい」


二人は素直に答えた。


「二人はその・・・互いを好きなのね?家族愛じゃなくて兄弟愛でもなくて、恋人として」

「「うん」」


この問いにも二人は素直に答える。


「あ、そう。ならいいよ」

「え?!」

「反対しないんですか?」


晃君が驚きながら聞いてきた。


「そりゃあ、弟が義理の弟とその・・・男同士でしてるってさっきはビックリしたけど、好きなら仕方ないじゃない?体だけの関係じゃないなら、本気で愛し合っているのなら別にいいんじゃないの?」


そう言うと二人はポカンと口を開けたまま私を見てきた。

思わず吹いてしまった。だって二人と顔が綺麗なのに凄い間抜け面なんだよ?


「何その顔。笑える」

「笑えるって姉ちゃん。俺たち男同士だぞ!?反対しないのか?嫌じゃないのか!?」

「だからビックリしたって言ってるじゃん。それに本人達がいいなら別にいいじゃないかなって思って。晃君がもし和真を傷つけたら許さないけど、晃君がそんな事するような人には思えないし」

「だけどさ」

「何?和真は私に反対して欲しいわけ?それって二人の愛を止めてくれっていうこと?あんた晃君好きじゃないの?」

「す、好きだよ!」

「じゃあいいじゃない」


私がそう言っても和真は納得していないみたいで、何か言いたそうだった。

たくもう・・・この子は本当に心配性なんだから。


「いい?私は反対しないし、二人の邪魔はしない。寧ろ応援してあげる」

「なんで・・・」

「和真も晃君もその・・・私にとって・・・家族だから。二人が幸せならそれでいいの」


そう言って微笑むと和真の顔が崩れた。いや、耐えきれなさそうに泣きだした。そして私に抱き付いてきた。ビックリして私は固まる。和真に抱きつかれるのは小学生以来だったから。ちょっと嬉しい。あ、言っておくけど私はブラコンじゃないよ?


「姉ちゃん。あ、りがとう。俺、俺・・・反対されるって、気持ち、悪がられるって、思って・・・」


嗚咽を漏らしながら和真はそう言った。よしよしと背中を擦ってあげる。怖かったんだね。本当にこの子は。あ、私今、凄いお姉さんらしいことしてない??

顔を上げて明君を見ると晃君はホッとしたような表情で和真を見ていた。私は明晃の頭に手を伸ばし抱き寄せる。晃君は驚いて私を見上げた。


「明君。和真を宜しくね」


例え両親が反対しても私は味方になるから。

そう言えば晃君も目じりに涙を溜め、ありがとうございますと呟く。



それから二人の慣れ染めや、学校での事を聞かされる事になった。

二人は出会った当初は兄弟が出来た事を素直に喜んでいたけど、一緒に過ごす内に互いに互いを好いていると気付いたらしい。そしてある日、和真が暴走して晃君を襲ってしまったらしい。しかも襲い受けとの事。我が弟ながらやるな。


「男同士ってどうやればいいのかわかんないから、晃に任せたんだ」

「僕が以前通っていた学校はその、男同士でそういうのがあって・・・情報だけは知っていたので・・・」


と、晃君が恥ずかしそうに教えてくれた。晃君は全寮制の男子高に通っていたらしい。友人も全寮制の男子高はそういうのがあるんだよ!って興奮しながら言っていたのを思い出した。そういうのって本当にあるんだね。



二人の惚気話を聞いている内に両親が帰って来た。どうやら二人で買い物に行っていたらしい。孝文さんは迎えることが出来なかった事を悔んでいた。しかも謝られた。

別に怒っていないんで。謝らないで下さい。そりゃあちょっとは寂しかったけど。誰もいなかったら凄く寂しかっただろうけど、和真と晃君がいたから平気だったよ。


因みに二人は両親に秘密にしているらしい。

う~ん。でもなぁ。私にバレる位だから、少なくても母さんは気付いていると思う。結構母さん鋭いからね。そう思い夕飯の用意をしている母さんにこっそり聞いてみた。


「和真と明君さ」

「んー?」

「すっごく仲いいよね。なんか恋人みたい」


さあ、どうだ?と母さんの返事を待つ。すると母さんは私に耳打ちした。


「そりゃあ、愛し合っているからね」


ば、バレテルヨ二人とも!


私がやっぱりと言うと母さんはアンタ知ってたの?と聞いてきた。ええ、今日知ったよ偶然ね。

おまけに、アンタの事だから気付かないと思ったと言われた。そりゃあ、今日の事が無かったら一生気付かなかっただろうよ。私鈍感だしね。


夕飯の後、二人にこっそり母さんにばれていると言うと、二人とも固まってた。和真なんて顔面蒼白だったよ。

部屋に向かった二人を見て私は笑う。すると孝文さんが私にこう言った。


「よかった。麗ちゃん、打ち解けてくれて」

「え?」

「だって麗ちゃん最初の頃、俺たちにぎこちなかっただろ?皆麗ちゃんのこと気にしてたんだ」


そ、そうだったんだ!


「す、すいません。私実は人見知り激しくて・・・その・・・」

「ううん。いいよ謝らなくて。その代わり、俺の事お父さんって呼んでくれないかい?」

「え?」

「ふふっ孝文さんはね、アンタにお父さんって呼んで貰えないって拗ねてたのよ」


洗いものが終わった母さんが孝文さんに珈琲を渡して言った。

拗ねてたって・・・幾つだよアンタ。


「仕方ないだろう?俺、最初は女の子が欲しかったんだ。晃が産まれて嬉しかったけどやっぱり女の子が欲しかった!君と再婚したら女の子がいるっていうからお父さんって呼ばれるのが楽しみで・・・!でも麗ちゃんは呼んでくれないし」


孝文さんはしゅんとしてしまった。何だろう。無性にその頭を撫でたい。そう思ったら母さんが撫でていた。さすが母さん。


「そう言う事だから、麗。孝文さんのことはお父さんって呼びなさい」

「呼んでね」


二人にそう言われ私は立ち上がり、すたすたとリビングのドアまで向かう。


「お風呂先に入るね・・・母さんと・・・お・と・う・さ・ん!」


そう言ってリビングのドアをバタンと閉めた。急いで階段を駆け上がり自室に入ってベッドにダイブした。


は、恥ずかしいぃいいぃい!


顔が熱くなったのが分かる。きっと今自分の顔は真っ赤になっているだろう。

なんだろう。帰ってくるまでに悩んでいたのが馬鹿みたいじゃない。でも、今回のことは二人の・・・和真と晃君おかげなんだろうな。


二人が今日、部屋で仲良くその・・・エッチしてなかったら、それを私が目撃してなかったら・・・。

きっと私は今まで通り晃君にも、お、お父さんにもぎこちない態度で接してたんだろうな。


帰って来て良かったのかもね。

一日で全てが変わったよ。うん。

あ、そうだ。友人に連絡して漫画貸して貰おう。夏休みはまだたっぷりあるんだしね!


しかし、この事が原因で私も友人と同じくその道にどっぷり浸かるだなんて思ってもいなかった。




おしまい。


11/8 少し文章を直しました。

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