彼女と誰もいない部屋で…
やっとヒロインの声が聞けました。
目を覚ますと、そこは見知らない岩づくりの天井だった。
何か、最近俺、目覚ますと知らないとこばっかだなー
ふー、己の不幸さに思わずため息が出てしまう。
ていうか、俺何で寝てたんだろうか?
………そうか、俺、バトラ君にサンドバックにされて戦いが終わって緊張の糸が切れて、気失ったんだ。
は~、またため息が出る。
情けねー、安心して気絶する何て。
そんな事を考えていると、突然、背中に寒気が走った。
はっ、視線を感じる。
まさか、またエドルフのおっさんがイタズラを仕掛けようとしてるのか?
急いで、辺りを見回す。
そこには、いた。
少女が、アリスが。
試合中は、昼間だったのに今は、もう夜なのか、窓から月の光が入ってきている。
その月の光を纏うアリスはまるでおとぎ話に出てくるような、天女だった。思わず見惚れてしまう。
「……おきた?」
その声で、はぁっと我に返る。
声は、可愛らしい、まるで歌うかのようだ。
だが、いかんせん、小さい。
今は、アリス以外は誰もいない部屋だからこそ、聞こえるが、ちょっとした物音でもしたら、消えてしまうだろう。
どうりで、教室で挨拶した時、聞こえなかった訳だ。
ん?まてよ? 今アリス以外誰もいない夜の部屋?
ということは!
「もしかして、ずっと待っててくれたのか?」
首を縦に振り、頷くアリス。
「……心配。」
「いや、でも別に今まで待っててくれなくて良かったのに。」
「……心配。
さっきよりも、声のボリュームを上げ、顔を近付けてくるアリス。
「あの、ちょっと 顔近い。」
はぁっ、顔をはなすアリス。
昼間と同じで、両眼は黒髪に隠れて見ることはできないが、白い肌のほほは、真っ赤になっているから、恥ずかしいのだろう。
かくいう、俺もめちゃくちゃ恥ずかしい。
空気が重くなる。
気まずくなった空気に耐え切れず俺は、
「そうだ、腹へってないか?俺はもうペコペコだ。あっ、でも今、食堂開いてんのかな?」
「……大丈夫。」
そういって、アリスが指差す方向には2つのバスケットに入ったサンドイッチ?がおかれていた。
「あっ、用意してくれたのか? ありがとな。
でも、2つあるって事は、アリスもまだ、食べてないのか?」
頷くアリス。
何で?
先に食べれば良かったのに?
そんな疑問も、浮かんだが今は、それ以上に腹が減っていた。
それからアリスがバスケットをとりにいき、俺がそれを受け取ろうと、ベッドから立ち上がった。
時、昼間の戦闘からずっと寝ていたせいか、足がもつれた。
「うぁ」 「きゃっ」
そのまま近くにいたアリスを巻き込んで、ベッドに倒れこんだ。
アリスが下で、俺がその上にかぶさる形。
ヤバイ。 ひじょーにヤバイ、不可抗力だったとはいえ、これはどうすればいいんだろうか?
なんて、あやまろうか?
思考がフリーズしそうだ。
とか、考えるうちにアリスを見ると、
いつも両眼にかかっている黒髪が、とれて両眼があらわになっている。
見える、くりっとして、澄んだ大きな目が、しかも赤い宝石ルビーを思わせる、真っ赤な瞳。
それらが合わさったアリスの顔に俺は、釘付けになっていた。
見惚れていると、徐々に、その顔が赤く染まっていく。
そこで、やっと今、自分がどういう状況か思い出し、急いで自分の体を払いのけた。
「すっ、すまん。あっ、足が、もつれたんだ。
許してくれ。」
起き上がり、首をふるふると縦に振った。
また髪が、両眼にかかり目が、見えなくなった。
それを、残念と思う自分がいる。
投げ出したバスケットは、両方無事でだった。
片方をアリスに渡し、
「よっ、よし。さっ、早速食うか。」
お互い真っ赤になりながら、何も言わず黙々とサンドイッチ?を食べる。
恥ずかしすぎて、味なんか全くわからない。
その後、俺がどうやって学生寮にある自分の部屋に戻ったのかわからない。
だが、昼間ずっと寝ていたせいか、あんなことがあったせいか一睡もできなかった事は、覚えている。
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