監視社会
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近年の防犯カメラの大量設置。ドライブレコーダーでの移動時、事故時のリアルタイムの動画撮影。そしていつでも撮影可能なスマートフォンでの撮影。ありとあらゆる所に監視というカメラは存在している。
そこから撮られないようにするには、人の住んでいない山奥に行くしかない。
もうすでに、そういう時代なのである。
そのことを見ないままにしておくと、他の地域からSNSで強い非難を受けることもある。
それが問題発言や行動を次々と繰り返す、東北地方唯一の政令指定都市を抱える県だった。
当初は、首都で起こった事件だと知らぬを決めていたが、そこに思い切り火の玉が飛んでくる。
野党第一党の幹事長が長年鎮座するこの土地は、その王国だと言われてきたが、その幹事長の失言により、この土地がSNSで鎮火の目途が立たないほど大炎上する。
その幹事長は、久しぶりのオールドメディアからのインタビューに、なんの根拠もない自信でこう語った。
「いやね。現新政権でこんな事件が立て続けに起こったわけだから、やはり新政権には問題があったのかと。やはり政権は我々のような隣国と仲良くやっていける政党がいいんじゃないですかね。それに国会議員たる者が、庶民が乗るコンパクトカーに乗るなどというのはあってはならないことです」
公然とそのようなことを言った。
これにはいくらオールドメディアといえども擁護のしようがない。
最悪なのは、この幹事長の発言に、なにも考えていない女性議員二人が援護射撃とばかりにSNSにポストしたことだ。
こんな発言を繰り返す国会議員には、さすがに地元の有権者からも怒りの声が上がった。
結局、この幹事長の発言から1ヵ月を過ぎても鎮火の目途は立たず、3人とも議員辞職まではしなかったものの、地元の有権者の前で土下座での謝罪をすることとなった。
このことは、全国ニュースでも取り上げられた。
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週刊weekly JAPAN編集部
「なんか、すごい話になりましたね、宮下さん」
「なにが?」
「だって野党第一党の幹事長が土下座で謝罪までされられたんですよ!?」
「でも、そんなのは自業自得じゃないのよ。それとも小林君はあの幹事長の肩を持ちたいっていうの?」
「いや。それはないですけど」
「でしょ。最後に彼らが起こした狙撃事件から、もう5週間も経つというのに、これといった手掛かりを、優秀と言われ続けたこの国の警察もなにも掴めていない」
「宮下さん、まだあの狙撃事件と今回のこの事を結び付けて考えてるんですか?」
小林は、宮下がずっと3件の狙撃事件のことを考えているのを間近で知っていた。
「いまは、彼らがどこに行ってしまったのかが気になる」
「なんですか、それ? もうとっくに全部処分して、海外に飛んだんじゃありませんか?」
「では、聞くけど小林君。彼らの目的はなに?」
「またですか、その質問!? もういい加減にしてくださいよ。そんなことより、これから動物園でライオンの赤ちゃんが生まれた取材をしに行くんでしょ。人手不足なんですからね」
「はい、はい」
そう小林に窘められて、宮下はその取材に向かった。
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宮下結子が、小林とその取材に向かっている途中。細長いケースを肩にかけた迷彩服の男がふと気になった。
男は180cmぐらいと背が高く、がっしりとした体格をしている。
「あの……すみません。ちょっといいですか」
「はい。なんでしょうか?」
声を掛けたその男性が振り向く。
「あの迷彩服。失礼ですが、自衛隊の方ではないですよね?」
宮下もこの男性が自衛隊員ではないことはわかっていた。それでも、敢えてそう聞いた。
「そのケースの中身はなんですか? もし良かったら見せてもらえませんか?」
「別に構いませんが」
男性はケースのファスナーを開けて、少しだけ中身を見せると、ライフルらしきものが見える。
「まさか、ホンモノってことはないですよね?」
「当たり前ですよ! サバイバルゲーム用のエアガンです! もういいですか!」
男性は怒って行ってしまった。
「どうしたんですか、宮下さん」
「いや。てっきりあの中にホンモノのライフルが入ってるかと思って」
「なに馬鹿なこと言ってんですか。こんな真昼間に、こんな都心の街中でライフルを持ち歩いている人なんているわけないでしょ」
普通に考えればそうだ。だが彼らはそれをやったのだ。誰にも気づかれることなく犯行を行い。そして手掛かりとなるものを残さずに消えてしまった。
本当に彼らは、どこに行ってしまったのだろうか。




