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幼馴染の女子高生が起こしにくるだけの話

何か夢を見た気がする。

よく思い出せないけれど、君が笑っていたのだけは覚えている。

いや、もしかしたら夢の内容なんて関係ないのかもしれない。だって、目を覚ませば笑顔の君がそこにいるんだから。


「あー、やっと起きた。ほら、急がないと遅刻しちゃうよ。」

覗きこんだ君が少しほっとした顔を見せる。

『なんだよ。いつもより早いじゃないか』

僕の返答を聞いて君は、頬を膨らませた。

「もうっ、今日は特別な日なんだよ。早く起きるって約束したじゃん」

……知ってる。拗ねたような困ったようなその表情が見たくて、僕はつい君を揶揄ってしまう。

「せっかく、今日から一緒に学校行けるのに」

真新しい制服のスカートをひらひらさせながら君が一回転する。

僕が『ごめん、起きる』というと君はにっこりと笑顔を向けた。

やたら君が眩しく見えたのは、春の朝日のせいだけじゃないはず。


「ねーねー。まだ、起きないの?流石に終業式に遅刻はまずいよぉ」

君の声がとても近い。目を開けると君の顔が目の前にあった。体を起こそうとして、夏服の胸元が目に入って、僕は、ドギマギしながら目線をそらす。

「びっくりしたでしょ。ドッキリ成功」なんてニヤリと笑う君。無邪気な様子になんだかホッとした。

そんな僕の心とは裏腹に小麦色に焼けた肌の奥、さっきチラリと見えた白い肌が僕の目に焼き付いて離れてくれない。君が色白なのを僕は知ってるはずなのに。


「起きてよー‼︎今日は文化祭の準備あるんだから〜、早く行かなきゃだよ」

君が僕の体をゆすりながら耳元で呼びかける。

本当はもう起きている。けれども、こうして君に触れられたくて僕はわざと寝たふりをする。

君はよく僕に触れてくる。僕は意識しすぎてできないけれど。

「ほらほら、はやく〜。今日は衣装合わせもあるんだから……一番に見せるっていったじゃん。えい‼︎」

くるまっていた布団を剥ぎ取られ、あまりの寒さに僕はしぶしぶ起き上がる。

その様子をみて、勝ったと笑う君の笑顔に僕は頬が温かくなるのを感じた。


「まったく、今日くらいは自分で起きて欲しいなぁ。起きろー、ねぼすけ〜」

君は今日も僕の枕元にやってくる。

「今日とか絶対、ぜーったい遅刻できない日じゃん。も〜、おきてってばー」

君の声を聞きながらまどろむこの時間が僕は好きだ。

ふいにベッドに重さを感じて薄目を開けると君が腰掛けていた。

君は僕が起きている事に気づいてるのか気づいていないのか。

「私、君を起こすの嫌いじゃないんだよね」

そう呟く君は不満そうに言いながらもどこか嬉しそうで……。そんな、独り言に僕が薄目を開けると君と目があった。

やっぱり起きてたと笑う君に釣られて、僕も笑った。


君は毎日、起こしにくる。

昨日も一昨日も一昨昨日さきおとといもずっとずっと、起こしてくれた。

春休みも夏休みも冬休みも……そうそう、修学旅行の時にも君が起こしにきたよね。さすがにあれはびっくりしたよ。

同じ部屋の友達は先に食堂いってるし、ニヤニヤしてるし……でも、正直、嬉しかったんだ。

だから、きっと今日も君は起こしにくる。

 


「起きてよー、まったく私がいないと起きれないのー?」ってね。


……気のせいかな?君の声が聞こえない。体感的には、すでに君がきてるはず。

こっそりと薄目を開けて時計を見た。6時44分……君が僕を起こしにくる時間なんてとっくに過ぎている。

目を瞑ったまま寝起きの頭で逡巡する。

寝坊?しっかり者の君が?


それとも、僕を起こすのが嫌になった?

うーん、ないない。僕が先に起きて君を待っていた時は不機嫌になってたじゃないか。

僕はごめんと謝りながら拗ねる君も可愛いななんて思ってた。よく考えれば、ものすごく理不尽なんだけど。


じゃあ、風邪でも引いて家にいるのか?

いや、この前、風邪なのに起こしに来たよな。あの時は、家に帰すのが大変だった。熱のせいかやけにしおらしく「うぅ、ごめんなさい。反省するから、嫌いにならないでよぉ」なんて涙目で言ってたっけ。

『僕が君を嫌いになるわけないじゃん』

あの時、おぶった君の体温は熱のせいかやたら温かく感じた。


じゃあ、なんだ。まさか、君、いやあの子に何かあったんじゃ?

寝息をたてるふりには慣れてたはずなのに、僕は息がヒュってなるのを感じた。

バクバクする心臓を抑えながら僕は布団を跳ね除けた……

……

………

「うぅ〜ん」

聞こえた声にベットの横を見る。

……君が小さく寝返りをうっていた。

「ふわぁ。あれ?私、起こしにきたはずなんだけど」

あくびをする君を見ながら、僕は一人ほっとした。なんだ、隣で寝てただけか。



……そうだ、君が来ないわけがない。

ドキドキしてるのを隠しながら僕は笑顔でおはようと告げる。

「お……はよぉう」

寝惚けた顔でふにゃふにゃと君が笑う。

なんだいつもの日常じゃないか。

今日もいつもと変わらないいつもの日常。

いや、君のレアな表情がみれたんだからいつもと違う日常なのかな?

ともかく、君は今日も起こしに来た。明日も来てくれるだろう

きっとずっとずっと明日も明後日も。

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― 新着の感想 ―
ふたりとも可愛いですね
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