第4話 盗賊と新たな力
森を抜け、小道を二人で歩いて町へ向かっていた。木々の合間からちらりとみえた町の姿に、ようやく安堵の息をついた。
「……町まであと少しだね。」
「そうだな。ここを越えれば…」
その時だった。
ガサッと茂みが不自然に揺れた。
「伏せろっ!!」
ルシアンが鋭く叫ぶ。リナが地面に伏せた瞬間、矢が音を立てて頭をかすめた。
「な…何…?」
木陰から三人の男が出てくる。服はボロボロ、武器も雑多だが、その瞳だけは獣のように光っていた。
「一人は女だぜ!いい旅人にあったな!」
「剣持ちもいるが、まぁ…やっちまえ!」
男たちは剣を抜いて迫ってくる。
ルシアンはリナの前に立ち剣を抜いた。
「リナ、下がっていろ。」
ルシアンは一人を切り伏せた。しかし二人目の攻撃がすぐに迫る。
防ごうとしたルシアンの後ろからまた一人が攻撃を仕掛けた。
ルシアンは背中に大きな傷を負ったが、なんとか盗賊をやっつけることができた。
「ルシアン!!」
リナが駆け寄る。ルシアンの体は彼女の腕の中で崩れるように倒れていった。
「だめ!ルシアン…。お願い!死なないで!」
手のひらに、熱いものが流れる。それは彼の血だった。
その瞬間、リナの胸に何か走った。
「……っ!、なにこれ……?」
光がルシアンの傷口に触れると、裂けていた肉がゆっくりと閉じていく。
まるで時間を巻き戻すように血が止まり、肉が癒える。
ルシアンが目を見開いた。
「今の……リナ……お前…。」
リナは震える手を見つめながら、つぶやいた。
「私…なんで?」
「いや、間違いない。君の中に力がある。」
それが始まりだった。
リナが、自分の中に眠る力と向き合う第一歩。
日が傾き始めたころ、、二人は町の門にたどり着いた。
高い石壁に囲まれたその町は、見張りの兵が数人立っていたが、怪しまれることなく入ることができた。
ルシアンの持つ紋章入りの指輪が、それなりの効力を持っていたらしい。
「宿はこっちだ。昔一度止まったことがある。」
ルシアンはまだ顔色が悪かったが、歩けるほどには回復していた。
そして、二人は町の中心部にある、木造のこぢんまりとした宿屋へと足を踏み入れる。
部屋は質素だったが、柔らかなベットと温かなスープがなによりのご馳走だった。
「はぁ…やっと落ち着いた…。」
リナは椅子に腰かけ、窓の外をぼんやりと眺めていた。
だが、心の中は穏やかではなかった。
ーーあの時自分の手が光った。
ーールシアンの傷があっという間に癒えた。
あれは夢ではない。確かに、自分から何かが……。
「…怖くないのか?」
ふいに、隣でベットに横たわっていたルシアンが口を開いた。
「自分の知らない力があることがさ。」
リナは黙っていたが、ぽつりと答えた。
「怖いよ…。でも、あの時、ルシアンを助けたいって気持ちははっきりしてた。」
ルシアンは目を閉じて、穏やかに笑った。
「それで十分だ。誰かのために力を使えるのなら、それは祝福だ。」
リナは少しだけ目を細めた。
「ありがとう…。」
しばしの静寂が流れ、やがてルシアンはまじめな声で言った。
「リナ…。君が何者かはわからない。けど、君には特別な力がある。この先もっと危険なことが起きるかもしれない。でも…君は僕が守るよ。」
リナの心にほのかな灯がともった。
(この人なら、信じられるかもしれない。)