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炎に包まれる夜

冷たい空気がリナの肌を刺す。

意識が戻ると、広場の草むらに横たわっていた。

寒さで震える体を何とか起こそうとしたが、なかなか力が入らなかった。

諦めて、空を眺める。

きれいな星が並んでいた。


あぁ、いつかほんとにここから出られたらどんな日々が待っているのだろうか。

美味しいごはんをたくさん食べて、おしゃれもしてみたいな。


でもここから出られたとしても行く当てがない。

リナは小さなため息をつくと、小さな小屋へ向かい瞼を閉じた。


その時だった。なにやら外から物音が聞こえてくる。


なにかが歩く音……?


リナは立ち上がると、ドアの隙間から外の様子をうかがった。

薄暗い森の中から、何かがやってくる。


獣のような姿で、二足歩行している。


リナは恐怖のあまり腰を抜かしてしまった。

「ど…どうしよう。」


どんどん近づいてくるその獣は一匹だけではなかった。

森の奥からどんどん出てくる。


その獣が口から炎を出し民家を燃やしていく。

叫び逃げ惑う人々の声がリナの耳にこだまする。


リナも逃げなきゃとドアを開け反対側の森へ行こうとした時だった。


ぎゃぁぁおおおおおおおおお!!


魔物は大きな雄たけびを上げてこちらに向かって走ってくる。

ここで死ぬんだ…。


そう思って目を閉じた。


「待て…」


短く冷たい声が聞こえた。

目を開けると、真っ黒なローブを身にまとっている背の高い男の人が立っていた。

今にも襲い掛かってきそうだった魔物はピタリと動きを止めていた。


こちらを冷たい目で見ると、「立ち去れ」と小さく言い放ち魔物とともに立ち去った。


さっきの人が村を…?

でもどうして?


いくら考えてもわからなかったがリナは森の奥へ走った。






「フンッ……。儚くも強い…脆くも折れぬーー」

男は静かに立ち尽くし、冷たい瞳で魔物の群れを見ていた。

「我が闇の刃よ。燃やし尽くせ!」


低く響く言葉とともに魔力が指先からあふれだし、魔物たちが動き始める。

獣のような咆哮がこだまする。


その顔にわずかだが笑みがこぼれる。


この村にいるとされる勇者の卵はこの手でつぶす。


彼の瞳には複雑な感情が浮かんでいた。怒りか、悲しみか、それとも……


村は全滅した。魔物の群れによって生き残る者は一人もいなかった。リナを除いて。


男は、冷たい夜風に髪を揺られながら、視線を遠くへ向けた。

あの少女はなぜだか、彼の心の奥底へ刻まれた何かを思い出させようとした。


吾輩はかつて何を失ったのだろう。

誰かを守りたかったのかもしれない。

だが、今はそれが何かすら思い出せない。



ただ一つ確かなのは、この吾輩が村の者である少女を一人逃がしてしまったということだけだ。

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