最終話 海とともに輝く
釣り部の4人は、隣町で開催される釣り大会に向けて練習を重ねていた。
大会の対象魚はブリなどの青物で、一番大きなサイズを釣った人が優勝というルールだ。
ある日の放課後、部室で全員が集まっていた。
彩が大会のルールブックを読み上げる。
「今回の大会では、ブリやカンパチといった青物が対象だよ。サイズが大きいほどポイントが高いんだって。」
「青物の釣り方ってどうするの?」
美咲が興味津々に聞くと、葵が自信満々に答えた。
「青物は動きが速くて力強いから、しっかりとした装備とテクニックが必要だよ。まず、ルアーを使って魚を誘うんだ。投げた後、ゆっくりと巻き取ることで魚が興味を持つのを待つの。」
「なるほど、それなら練習が必要だね。」
咲が同意しながら言った。
彩はインターネットで釣りのテクニックを検索し、動画を見ながら勉強することを提案した。
「インターネットにはたくさんの情報があるよ。動画を見ながら釣り方を学ぶのもいいかもね。」
「それはいいアイディアだね。みんなで動画を見ながら練習しよう!」
葵が賛成し、全員でインターネットを使って情報を収集することにした。
週末には実際に釣りに出かけて、練習を重ねた。
太陽の下、波の音を聞きながら、4人は真剣に釣りに取り組んだ。
「ルアーを投げてから、ゆっくり巻き取る…こんな感じかな?」
美咲が試行錯誤しながらルアーを操作する姿を見て、彩がアドバイスを送る。
「そうそう、その調子!魚がルアーに興味を持つように、時々スピードを変えてみるといいよ。」
「難しいけど、楽しいね!」
咲も頑張ってルアーを操作し、少しずつ感覚を掴んでいった。
「この練習が大会で役立つといいね。」
葵が微笑みながら言った。
全員が一生懸命に練習を重ね、大会への自信を深めていった。
ついに大会当日、4人は大会会場にやってきた。
会場には各地から腕自慢の釣り人たちが集まり、賑わっている。
「すごい人だね。」
咲が感心しながら言った。
すると、2人組のおじさんが近づいてきて、女子高生だからと煽るように絡んできた。
「お嬢ちゃんたち、こんな大会で勝てると思ってるのか?」
「釣りは男の仕事だってこと、知らないのか?」
「帰った方が身のためだぜ。恥をかく前にな。」
咲が腹を立て、拳を握りしめて反論した。
「釣りに男も女も関係ないわ!私たちは真剣に練習してきたんだから、負けるわけない!」
おじさんたちも引き下がらず、言い合いがエスカレートした。
「お前らみたいな若造が、俺たちに勝てるわけがないんだよ!」
「そうだな、結果を見てから言えよ!」
咲がさらに反論しようとした時、美咲が冷静に言った。
「釣り人ならば、結果で勝負しましょう。大会で一番大きな魚を釣った方が勝ちってことで。」
おじさんたちは一瞬驚いたが、挑発的な笑みを浮かべて応じた。
「いいだろう、そっちが泣きを見るのを楽しみにしてるぜ。」
大会が始まり、4人はそれぞれルアーを投げた。
開始早々、美咲の竿にアタリが来た。
「来た!」
美咲が必死に竿を引き寄せると、釣れたのはイナダというブリの子供だった。
「イナダか、でも嬉しい!」
その後、しばらくはなかなか釣れず、隣では煽ってきたおじさんが大きなブリを釣り上げ、挑発的な笑みを浮かべていた。
「くそ、負けられない!」
咲が悔しそうに言い、全員が集中して釣り続けた。
しかし、おじさんたちはそれだけでは満足せず、妨害を始めた。
美咲がルアーを投げると、おじさんたちが意図的にラインを絡めてきた。
「おっと、悪いな。手が滑ったよ。」
「そんなことって…!」
美咲が驚いていると、彩が冷静に対応した。
「美咲、大丈夫。しっかり集中して。」
葵も咲も同じように妨害を受けながら、なんとか釣りを続けた。
全員が苛立ちながらも、集中力を切らさずに釣りに取り組んだ。
他の釣り人たちもその様子を心配そうに見守っていた。
「なんてひどいことを…」
「若い子たちが一生懸命頑張っているのに、あんなことをするなんて。」
観客の一部はおじさんたちの行動に対して不満の声を上げ、葵たちを応援し始めた。
「頑張れ!負けるな!」
その応援が、4人の力になった。
終了5分前、葵の竿に強い引きが来た。
「来た!今まで以上に強い引きだ!」
観客の注目が集まり、葵は必死に竿を引き寄せた。
しかし、魚は力強く引っ張り、なかなか寄せることができない。
「がんばれ、葵!」
美咲と咲が声をかけ、彩は網を持って準備を整えた。
葵は汗を流しながら、全力で竿を引き続けた。
「負けないで、葵!」
観客も固唾を飲んで見守る中、葵は全身の力を振り絞って魚を引っ張り続けた。
魚は激しく抵抗し、竿が大きくしなった。
「くっ…!重い!」
葵は歯を食いしばり、力を込めて竿を引く。
魚が水面に浮かび上がる瞬間、彩が素早く網を入れた。
「今だ!」
彩が網で魚をすくい上げ、ついに巨大な魚が姿を現した。
それは1メートルを超える大きなカンパチだった。
「やった!大物だ!」
観客が歓声を上げ、全員が拍手を送り始めた。
葵は疲れ果てたが、喜びで顔が輝いていた。
「やったね、葵!」
美咲が抱きしめ、咲も笑顔で喜びを分かち合った。
しかし、その時、おじさんたちが声を荒げて近づいてきた。
「おい!それは俺たちが釣った魚だ!」
「そんなことない!これは私たちが釣ったカンパチよ!」
葵が反論するが、おじさんたちは聞く耳を持たなかった。
「嘘をつくな!お前らが盗んだんだろ!」
葵は涙を浮かべながら、自分たちの努力を必死に訴えた。
「違う!これは私たちが、皆と力を合わせて釣った魚なんだ!」
美咲たちも必死に葵を慰め、咲が怒りを抑えきれずに拳を握りしめた。
「これ以上嘘をつくな!」
その瞬間、心配していた他の釣り人がついに行動に出た。
1人の男性が勢いよくおじさんの胸倉を掴み、怒りをぶつけた。
「いい加減にしろ!嘘をつくな!この子たちは一生懸命頑張ったんだ!」
周りからもおじさんに対する抗議の声が上がり始めた。
「そうだ、彼女たちが釣った魚だ!」
「卑怯な手を使って妨害するな!」
運営スタッフが駆け寄り、状況を確認した後、おじさんたちに失格判定を下した。
「君たちはルール違反だ。大会から失格とする。」
おじさんたちは呆然としながらも、引き下がるしかなかった。
ギリギリのところで釣ったカンパチのおかげで、4人は見事に優勝することができた。
優勝賞品は有名な釣り具メーカーの最新のリールだった。
「本当にやったんだね!」
美咲が喜びの涙を浮かべ、咲が笑顔で答えた。
「これからももっと頑張ろうね。」
その時、助けてくれた釣り人が近づいてきて、優勝を祝ってくれた。
「君たち、本当に素晴らしい釣りを見せてくれた。優勝おめでとう!」
葵たちは感謝の言葉を伝え、釣り人と握手を交わした。
「ありがとうございます。あなたのおかげで頑張れました。」
その日の夕方、釣り部の4人は地元のお店で優勝を祝して打ち上げを開いた。お店のテーブルには、美味しそうな料理と飲み物が並んでいた。
「乾杯!優勝おめでとう!」
全員がグラスを合わせ、笑顔で乾杯した。
「本当に楽しかったね。」
彩が微笑みながら言った。
「うん、みんなで力を合わせて頑張ったからこその優勝だね。」
葵が感慨深げに答えた。
「これからももっと釣りを楽しもうね!」
美咲が元気よく言い、咲も笑顔で同意した。
「そうだね、次はもっと大物を狙おう!」
全員が笑顔で話しながら、美味しい料理を楽しんだ。
彼女たちの友情と絆はますます深まり、新たな冒険への期待が膨らんでいった。
こうして、釣り部のメンバーは大きな目標を達成し、新たな冒険へと続いていく。
彼女たちの絆はますます強くなり、次の挑戦へと進んでいくのだった。