第5話 波とともに競う
テストが終わり、釣り部の部室では葵と咲が紅茶を飲んでくつろいでいた。
窓からは夏の強い日差しが差し込み、部室内はほんのりと暑い。
「やっとテスト終わったね、咲。」
「本当に。葵のおかげで、何とか乗り切れたよ。」
そんな会話をしていると、ドアが開き、夏バテ気味の美咲がやってきた。
「暑い、暑い…」
美咲はソファーの上にダラダラと横になり、ぐったりしている。
そこに彩が部室に入ってきた。
「アイス買ってきたよ、みんな!」
彩は手に持った袋からアイスを取り出し、みんなに配った。
「ありがとう、彩!」
「これで少しは涼しくなるね。」
みんなでアイスを食べながら、テスト勉強の時に話していたヒラメ釣りについて再び話し合うことになった。
「次の釣り、ヒラメに挑戦しようって言ってたよね?」
「うん、今度の土曜日に行こう!」
全員が賛成し、釣りの計画を立て始めた。
土曜日の朝、釣り部の4人は車で学校から30分ほどのところにある、海開き前の海水浴場にやってきた。彩の提案でルアー釣りでヒラメを狙うことにした。
「ルアー釣りって、どうやるの?」
葵が質問すると、彩が説明を始めた。
「ルアーを使って、魚を誘うの。まずは投げてから、ゆっくり巻き取る、ヒラメは底でじっとしてる事が多いから、なるべく海底を、、そうね、、海底から大体1~2mの層を維持するイメージで誘うのよ」
全員が準備を整え、釣りを開始した。
太陽が照りつける中、釣りを続けるが、なかなかヒラメは釣れない。
しかも、部室以上の暑さに美咲が再びダウンしてしまった。
「もうダメだ…」
美咲が疲れ果てていると、突然、葵の竿に強い引きが来た。
「来た!」
葵は必死に竿を引き寄せるが、猛烈な引きでなかなか近づけることができない。
それでも諦めずに何とか海面まで引っ張り上げると、大きなヒラメが掛かっていた。
「すごい!これは大物だ!」
彩が用意した網でヒラメをすくい上げ、全員で歓声を上げた。
「やったね、葵!」
ヒラメは60センチもあり、釣り部の目標だった大物だった。
部室に戻り、釣り上げたヒラメを料理することにした。
葵はまず刺身の準備を始めた。
「まずはヒラメを3枚におろすね。骨に沿って包丁を入れて、丁寧におろしていくのがポイント。」
彩が続けてムニエルの準備を始めた。
「ムニエルは簡単だよ。まず、ヒラメの切り身に塩コショウを振って、小麦粉をまぶす。次にフライパンにバターを溶かして、中火で両面をこんがり焼くだけ。」
美咲と咲も手伝い、刺身とムニエルをそれぞれ準備した。
「ムニエルはレモンを添えると、さっぱりしてさらに美味しくなるんだ。」
みんなで作った料理を食べていると、ドアが開き、高橋由美先生がやって来た。
「こんにちは、いい匂いがするね。」
「先生、こんにちは!」
先生はにっこり笑いながら言った。
「実は、隣町で釣り大会が開かれるんだけど、参加してみない?」
美咲が乗り気で手を挙げた。
「絶対に参加したい!他のみんなもどう?」
「もちろん!」
全員が賛成し、次の釣り大会への参加を決意した。
こうして、夏のヒラメ釣りチャレンジを成功させた釣り部のメンバーは、次の目標に向けて新たな一歩を踏み出した。
彼女たちの冒険はまだ続く。