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170 魔法青年と全属性の六魔駕獣

よろしくお願いいたします。

戦闘開始です。

痛そうなのが苦手な方はご注意ください。



飛び上がるコーディを一瞬見て、しかしペルフェクトスは火魔法への対処を優先させた。

火の攻撃性は基本的に高いから妥当な選択だろう。

ちらちらとこちらを見ているので、コーディを見失ってはいないようだ。


「敷けました。火魔法が一番気になるようです。拘束します!」

『了解!』

『拘束したらそちらに走る!』

『遠隔攻撃は拘束が終わるまで続けるぞ』

「はい」


素早く飛び回りながら、コーディは魔法陣を起動させた。

土と水で半径20メートルほどを一気に泥にして沈めてから固め、さらに捕らえた足を棘つきの蔦で拘束する。

大きさが少し足りないが、前足二本を拘束できたところで後ろ足を別の魔法陣で拘束すれば、動きは鈍るだろう。


狙い通り、魔法陣によってペルフェクトスの両前足は土に埋まったうえに蔦で拘束され、身動きを止めた。


「捕らえました!後ろは火と風と土でいきます!」

『急ぐぞ!』

『余裕があるから攻撃は続ける!』


攻撃し続けると言ったのは魔塔チームだ。

さすがである。


エアドラゴン二体は、少し離れたところに木で捕らえられたまま、いずれも気を失っているようだ。


ペルフェクトスの後ろ足の方に、別の魔法陣を素早く敷き、土に埋めて行使する。

すると、バーナーのように尖った火がいくつも両後ろ足をぐるりと取り囲んで攻撃し、焼いた部分あたりに上から3メートル大の土の杭が突き刺さった。

「グゴォォオ!」

血しぶきが舞い、土に赤黒いシミを作っていく。

本獣が実体を持つことを当然と認識しているからなのか、そういう身体なのかはわからないが、魔力でできているはずなのに不思議である。


「何とか捕らえたか」

冒険者たちと魔塔の研究者が目視できたところで、コーディはペルフェクトスに少し近づくようにして飛んだ。

その目が、憎悪に歪んでいる。

さらに大勢の人間を目にして、ペルフェクトスは吠えた。


「グゥオオオオ!!!」


多分攻撃しようとしたのだろう、隠蔽してなお明らかに冒険者たちよりも魔力の多い魔塔の研究者たちの方へ顔を向けた瞬間に、コーディは魔力を解放した。


ペルフェクトスは、その瞬間にぐりんと首をコーディへと向けた。

その目は、完全に極上の餌を見つけた欲に染まっていた。


だらりと開いた口からは鋭い牙が見え、よだれがぼとりと落ちた。

コーディの軌道を目で追う様子は、さながらオモチャを狙う猫のようである。

近寄ってくる研究者や冒険者は、完全に意識の外になったらしい。


「引き付けます!直接攻撃を!」

「『わかった!!!』」

地上からも、通信魔道具からも同時に声が聞こえた。

どうやら、地球の通信機器とは違い、タイムラグは一切ないらしいと今わかった。



せっかく捕らえているので、なるべく動かさずに攻撃したい。

ペルフェクトスがあまり動かずこちらを狙うよう、顔の向きを変えずにコーディを目視できる範囲をキープして飛ぶ。


ときおり近づけば、歯を剥き出しにしてみせ、「グゥルルルル」と唸っていた。

飛び回るコーディには当たらないが、水弾をいくつも連発している。

当たれば骨くらい簡単に折れるだろう。


ペルフェクトスの足元に、冒険者たちと魔塔の研究者たちが集まり、それぞれに攻撃を開始した。


「くっそ!鱗が硬ぇ!!」

足の鱗に長剣を弾かれたビルが、構え直しながらペルフェクトスを睨んだ。


「今なら、腹がガラ空きだ!」

カーティスが槍ハンマーの中央付近を持って、ペルフェクトスの腹のあたりへと突っ込んだ。

槍の部分を向けて突っ込むと、多少抵抗はあったが鱗の隙間から刃が腹に突き刺さった。


「グゥゥウウ」

ペルフェクトスは唸るが、コーディを見逃すまいとカーティスには見向きもしない。


「よし!腹付近を切る!魔法は背中や羽を狙ってくれ!」

「わかった!」

「任せろ!」


ビルとカーティス、トビー、そしてクローイは、それぞれに駆け抜けながら、または近づいては離れながら、少しずつ腹を切りつけていった。

アルマとチャド、マデリンをはじめとした魔法使い組は、様々な属性の魔法を背中に叩き込んでいく。

ただ、水は火を消してしまうので使っていないようだ。


小さな傷を重ねながらも、気が逸れそうになるたびにコーディが顔の近くを飛ぶため、ペルフェクトスは反撃に出る機会を逃していた。


しかしさすがに焦れたのだろう、ペルフェクトスが大きく身体を震わせた。

「グオオオオオオッ!!!」


「防御!!」

コーディが叫ぶと、全員が魔法霧散の魔法陣を構えた。


四方八方に放たれたのは、水魔法だ。

しかし、先ほどの水弾じみた可愛いものではない。

ウォータージェットのような、高圧の水だ。


その証拠に、まだ周りでかろうじて残っていた木々がえぐられ、倒れていった。


魔法陣がきちんと機能したらしく、周りにいた人たちは無事だ。


「『あっ!エアドラゴンが!』」

その声でちらりと振り向くと、エアドラゴンの一体にもウォータージェットが当たったのだろう、片足がもがれていた。


痛みで気がついたらしく、木に絡めとられながらも大きく暴れていた。

「キュォォオオオ!!!」


しかしペルフェクトスはそちらには一切意識を向けず、背中をしならせて身体を跳ねさせようとしていた。


熱が発せられたと思ったら、ブチブチブチ!!と鈍い音がして、前足を捕らえていた蔦が引き千切られた。

どうやら、火魔法を使って蔦を焼きながら千切ったらしい。


次いで後ろ足の部分に木が生え、足を貫いていた土の杭がぼろぼろと崩れていった。

「っ!後ろに魔法陣をもう一枚!前からは僕が突っ込みます!」


「『水の魔法陣を使う!』」

後ろ足の近くにいた研究者が魔法陣を広げるのが見えた。


コーディはその結果を見る前に、ペルフェクトスに向かって飛んだ。

大きく口を開けたので、そこにアイテムボックスからとあるものを飛び出させた。

反動で、コーディの勢いが止まる。


ペルフェクトスは、何かの液体を口に叩き込まれて飲みこんだ。

「グ、ォォオ!ッカ……!!」


びくり、と身体をひくつかせたペルフェクトスは、動きを鈍らせた。

その隙に、後ろ足は氷で包まれて地面に縫い付けられた。

前足には木魔法で、いくつもの木々が絡みついた。


「あれは、ディケンズ先生の魔法陣か」

ペルフェクトスの足は、爬虫類のものに見える。

それなら、氷はかなり有効と言えるだろう。


「『何を喰わせたんだ?』」

ビルからは、コーディがしたことが見えていたらしい。


「イネルシャの消化毒を持っていたので、喰わせました。麻痺毒です。かなり強力なようなので、攻撃のチャンスです!」

「『よし!いくぜ!』」

『前足は気をつけろ!遅くとも踏みつぶされるぞ!』


『待て、コーディ!イネルシャの消化毒はまだあるのか?!』

「今のですべて使いました」

『ぐぬぅううう!ペルフェクトスめぇ!!』

研究者たちは、あまり動けずに前足で地面をドスンと踏みつけるペルフェクトスの背中に、いくつもの火魔法を落とした。


さすがに(逆)恨みのこもった渾身の火魔法は効いたのか、ペルフェクトスが身をよじった。

「『効いてるぞ!』」

『下からも続けて攻撃する!』


カーティスたちが腹を切り、魔法で背中を攻撃する。

コーディも、周りに影響を及ぼさない程度に火魔法を背中に当てていた。

初めに後ろ足を捕らえた魔法陣を参考にして、バーナーのような火を当てれば、背中の羽が燃えていく。


「グッガァアアアア!!」


吠えたペルフェクトスは、身体をずるりと崩して土に溶けた。

捕らえていたはずの場所には、氷の欠片や固まった木だけが残っている。


「『溶けたぞ?!』」

「防御を!!離れてください!」

『これが!素晴らしい!!』


地上にいる人たちは一斉に離れながら霧散の魔法陣を構えた。


彼らとは逆に移動して上空に留まっているコーディの真下から、ペルフェクトスが飛び出してきた。



読了ありがとうございました。

続きます。

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