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ヲタッキーズ146 ドS強盗

作者: ヘンリィ

ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!

異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!


秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。

ヲタクの聖地、秋葉原を逝くスーパーヒロイン達の叙事詩。


ヲトナのジュブナイル第146話「どS強盗」。さて、今回は血に飢えた宝石強盗による連続殺人事件が発生、殺人を重なる毎に、その残忍性が増していきます。


ヲタッキーズは、残忍な凶悪犯の意外な協力者を逮捕し、一気に真犯人を追い詰めますが、最後の最後になって事態は思いがけない展開に…


お楽しみいただければ幸いです。

第1章 宝石泥棒は血に飢えてる


アキバの摩天楼は夜が綺麗だ。


高層タワーは光のモノリス。その間を縫うように首都高を走る無数の車のヘッドライトが川のように流れる。

アキバのダウンタウン、東秋葉原にそびえ立つタワマン。その1室にヒラリヒラリ羽毛が舞い青い絨毯に落ち…


鮮血で赤く染まるw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


僕とスピアは"星戦争ズ"の"1ダースベイダーごっこセット"で有名シーンを再現中だw


「私はお前の父親だブンッ」

「今日こそは"受胎の騎士"が息の根を止めてアゲルわ!ブンッ」

「ところで、好きな男子が出来たそうだなブンッ」


Uii付属のセイバー(振るとブンブン音がスル優れモノだw)での激しい戦いの最中に、一瞬のスキを狙い急所を突き合うw


「ルイナね?」

「名前は?」

「オエン。シャイだけど優しいんだ。危ない」


僕のサイバーがスピアの喉を突く。


「"受胎の騎士"失格だな」

「私を妊娠させたいの?」

「もうキスしたのか?」


真っ赤になるスピア。


「まさか」

「なぜ?」

「テリィたんを諦められるかワカラナイ」


NGワード。ヤバい展開w


「あ。電話だ」


僕のスマホが鳴る。セイバーで礼を交わす。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


現場。タワマンの豪華な1室。瀟洒な応接室だが、壁掛けの絵画が宙ぶらりんだ。

露わになった裏にある隠し金庫の扉は開き、ソコからポタポタ鮮血が滴り落ちる。


隠し金庫の中に死体が押し込まれてるw


「押し込む時に何本骨を折ったのかしら?」

「解剖してみないとわからないわ」

「ハックション!」←


ヲタッキーズのエアリとマリレが、意見を交わす…

ところが、突然マリレが派手にクシャミをカマす←


「メイドさん、現場を汚さないで!」

「ごめんなさい!羽毛アレルギーなの。羽根が舞ってる…」

「ラギィ警部が来た」


万世橋(アキバポリス)のラギィ警部と現れる僕。


「強盗の形跡はナイわね」

「コレで4件目。どんどん残忍になってるわ」

「わ!マリレ、ヤメろ…」


再びマリレが鼻を抑えながらクシャミw


「お大事に!…ジンクス?」

「テリィたん。私、羽毛アレルギーなの」

「マリレ。ジンクスを解くまでは話せないルールだ」


またまたクシャミw


「お大事に!」


その場の全員が同時に叫ぶ←


「僕は…」

「テリィたん!ジンクスを解くまで喋っちゃっだめ…で、状況は?あら?あの彼女は?」

「ジュア・デルガ。被害者の娘さんです」


殺人現場を間違っても"掃き溜め"とは思わないが、明らかに場違いな、女優じみたアラサー女子が警官と話している。


「ママにおやすみの電話をしたら出なかった。それで、ドアマンに見てもらったらドアが開いていて…」

「綺麗な人だな。アレでも腐女子なの?」

「テリィたん好みの事件になりそうね」


アキバに開いたマルチバースへ続く"リアルの裂け目"に絡む事件は警察とヲタッキーズの合同捜査になるコトが多い。


「血痕から考えて額に1発。それも至近距離からね」

「未だ火薬の匂いがスルわ」

「ウソでしょ?10ヶ所以上、骨を折ってるわ」


狭い隠し金庫に無理に死体を"折り込んでいる"w


「前回は撲殺だった。ソレに比べればまだマシ」

「近隣住民は銃声を聞いてた?」

「全く聞いてません。熟睡してたのね」


僕の出番だw


「違う!羽毛枕を押し付けて上から撃ったんだ」


全員の尊敬の視線を期待したが、一斉に咳払いされるw


「え。ジンクス破った?わかったソーダおごるょ」

「…薬莢はあった?」

「ありません。リボルバーですね。ソレと指を切り落とすボルトカッター」


金庫から垂れた手の薬指が…ナイ←


「大切な結婚指輪だから抵抗して渡さなかった。怒った犯人に指ごと切り落とされたのね。御主人は?」

「数年前に他界してます」

「タワマンでも"全然安全"じゃナイ…って親父ギャグじゃナイぞ」


ラギィは溜め息をつく。


「何処でも同じ。誰でも死ぬのは一生に1度」


第2章 その娘、ジュア・デルガ


万世橋(アキバポリス)に捜査本部が立ち上がる。


「現場は散らばってるのね」

「ただし、全てタワマンで億ションばかり」

「隠し金庫の宝石を確実に強奪してる。他にも共通点はアルかな」


エアリ&マリレと共に僕もラギィ警部を囲む。


「1件目から見直すわね。ケスラ夫妻は縛られ2000万円相当の宝石を強奪された」

「2件目は?」

「ルルル夫妻は夫が抵抗し、妻が足を折られた」


本部のモニターに松葉杖の婦人の画像。


「そして、とうとう昨夜は殺害。ソレも残忍な手法で」

「徐々に凶暴さを増してる。今や立派なドS」←

「なぜ狙った宝石の所在を知ってるのかな。隠し金庫の場所まで熟知してた疑いがアル」


ナゼかみんなの視線が僕に集まるw


「テリィたんはSF作家でしょ?」

「何か奇抜なアイデアはナイの?ただし、話すのは要点だけにして」

「無茶苦茶難しいリクエストw…まぁ気になるのは、犯人が被害者についてヤタラ詳しいコトだな」


本部のモニターに比較表が現れる。


「保険会社に警備会社、隠し金庫の製造元から何から徹底的に比べてみたけど、共通点はゼロょ」

「被害者同士はともかく、犯人は全員と顔見知りナンじゃナイかな」

「娘のジュア・デルガに話を聞いてみよう」


モニターに母娘の画像。挑むような眼差しのジュア。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「当然仲はよかったです。親子ですモノ」

「では、友人も御存知ですね?」

「母の、ですか?」


何とジュアは、万世橋(アキバポリス)に出向いてくれる。応接室へお通しw


「お母様と親しかった中で、特に最近印象に残っている人はいますか?」

「いいえ」

「お金に困っていた友人とか?」


ジュアは、女優級の整った顔を歪める。


「残忍な犯罪者の犯行と聞きました。なぜ母の友人のコトをソコまで尋ねるの?」

「ブルナ夫妻をご存知ですか?」

「いいえ」


首を振るジュア。


「では、ケスナ夫妻やルルル夫妻は?」

「いいえ。誰ですか?」

「よく似た強盗事件の被害者です。同じ犯人の仕業だと考えています」


ジュアの不審感は怒りに変わるw


「そんなに大勢?ねぇ最初の事件はいつあったの?」

「数ヶ月前です」

「数ヶ月前?なのに放置してた?」


呆れた!って顔で天を仰ぐジュア。


「殺人は2件目なの。でも、私が担当する以上出来る限り…」

「口だけの慰めは止めて。私は、広報担当だから貴女達のセリフは聞かなくてもワカります!航空機事故でも食中毒でも、私は何度も会見原稿を作ったわ…"皆様、心中お察しいたします"心中お察し?フン。母は、私に会いたがっていたのに、私は訪ねなかった。多忙を理由に断ってたの。そして、母は死んだ」

「ジュア!良く聞いて。コレから数日間は、何度も考えると思う。あの日、もし一緒にいれば、もし残業しなければと。でもコレは貴女のせいじゃナイの。憎むべきは、卑劣な犯人よ。口先だけじゃナイわ。約束スル。私は、犯人を罰するために全力を尽くすわ」


ラギィの言葉に涙目になるジュア。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


捜査本部のギャレー。


「感心したよ。見事な応対だった」

「私は、本心を言ったまで。応対なんて言い方はやめて。誰にでも同じコトを言うわ」

「OK。コレでチャラだ」


自販機の缶ソーダを渡す。


「コレが、私の仕事なの」

「謙遜するなよ。他の人間にはマネ出来ない」

「それぞれ得意分野が違うだけ」


僕は切り口を変える。


「僕に何かあったら、ヲタ友がどう思うか?ってコトを考えてみた」

「ミユリ姉様がいるでしょ」

「彼女に比べれば、僕の方がはるかに分別がある」


その瞬間、ギャレーにいた全員が大爆笑←


「ヒドいな!」

「お見通しょ。ミユリ姉様にお母さんのコトを聞き出そうとしたんでしょ?テリィたんのパルプフィクション(大衆SF小説)をますます安っぽくするために」

「おっと聞き捨てならナイな。今月の"Review off Books"の書評を見ろ。"太陽系海軍シリーズは、いわば現代の…"」


何度も読み返してスッカリ暗記してるw


「ソレ、読んだわ。ちょっと褒め過ぎょね。いくら払ったの?書評家に」

「ミユリさんとの"30分デート券"3枚…だったかな。それよりラギィ、君は"Review off Books"ナンか読むんだな。意外に読書家ナンだね」

「私には、テリィたんの知らない面がいっぱいアルのょ」


僕達を乗せたエレベーターのドアが閉まる。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ヲタッキーズは、民間軍事会社(PMC)で僕がCEOナンだけど、南秋葉原条約機構(SATO)の傘下にアル。

そして、SATOは"リアルの裂け目"からの脅威に対抗スルための官邸直轄の防衛組織だ。


そして、レイカはSATOの沈着冷静な最高司令官。


「何か動きはあったの?」

「聞き込みに行ったテリィたん達の連絡待ちだけど、わかっているのは、生き残った被害者は、殺された3人を知らないってコトかしら」

「個人的な共通点とかは?」

「住居がタワマンの億ションであるコト。私が犯人なら犯行はまだまだ続けるな」


物騒なコトを逝うエアリw


「腕の立つ犯人なのは確かょレイカ」

「ルイナが鑑識を手伝ってるけど、デルガ邸の玄関の鍵から真鍮の削りカスが出たって」

「真鍮の削りカス?」


ピンと来るのはストリート育ちのマリレ。


「バンプキー?鍵を削って、鍵穴に入れてハンマーで叩くと鍵が開いちゃうって奴?」

「あ、マリレ。私だって、ソレぐらい知ってるわ」

「あら、失礼遊ばせ」


エアリと戯れるw


「でも、デルガ邸は扉も鍵も特殊なの。並のバンプキーで開くとは思えないって鑑識が言ってたわ」

「特別な細工をした鍵なのね。プロの仕業だわ」

「つまり?」


"世界記憶の番人"のエアリは語る。


「以前、秋葉原でバンプキー作りのプロが捕まったコトがアル。目的のためなら手段を選ばない凶暴な女。因みに"blood type BLUE"」


青い血はスーパーヒロインに"覚醒"した腐女子の証だ。


「うーん犯人のプロファイリングにピッタリね。もしかしてエヴン・ミシル?」

「え。レイカ司令官のお知り合い?」

「伝説の鍵師ょ。彼女で3代目。祖父の代から鍵師。47丁目の宝石強盗で逮捕されて5年、蔵前橋(重刑務所)に入ってた。確か最近出所」


マリレが捜査本部の端末を叩く。


「出所した時期は…えっと。あら?1件目の直前だわ」

「引っ張って」

ROG(了解)、司令官」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ほどなくエヴン・ミシルは万世橋(アキバポリス)の取調室にいるw


「ミシルの音波銃」


ラッパ型銃口の音波銃が入った証拠品袋を示すエアリ。


「お腹に差してたわ。製造番号を削ってアル」

「逮捕回数の割に刑が短いのね。つまり、捕まっても服役をほとんど免れてる」

「弁護士の腕ね。彼女が"ホシ"かしら?」


エアリ&マリレが隣室でマジックミラー越しにミシルを見ていると、ラギィ警部(と僕w)が入って来る。


「なに?その"ホシ"って。警察用語ょ?」

「あら。私達も警察の一員だけど」

「私達の呼び方は他にも色々アルわ。飲んだくれ、でくのぼう、こそ泥、変態、ペテン師、阿呆、ボンクラ、ゲス野郎、悪太郎、下っ端、チンピラ、まぬけ、あばずれ…」


僕が根を上げるw


「もっとゆっくり!メモが追いつかない!」

「また"地下鉄戦隊"のセリフに使うつもり?"容疑者"以外は放送禁止カモね。因みに、私の推しは"ボケナス"」

「なるほど」


マジックミラーのコチラ側の部屋を出て、ラギィの後から取調室に入る。ミシルは、乱れた髪に手を当てている。


「持ってた音波銃は何なの?」

「弁護士をお願い」

「あら?貴女、何かしたの?」


早くも丁々発止w


「メイドさん達が来た時、逃げ損ねたわ」

「そう。で、昨夜の5時から9時は何処にいたの?」

「私は何もやってナイわ」


因みにエアリ&マリレは常にメイド服。アキバだからねw


「あら!貴女は何をやってないの?」

「何にせよょ私はやってナイ」

「じゃ何処にいたか言えるでしょ?」


ミシルは溜め息。


「居酒屋。サービスタイムだから、お友達の半島系ギャングのダチと飲んでたわ」

「証明スル人はいる?」

「"喜び組"でOKなら。少なく見積もっても30人はいるわ。みんな美人ょ」


今度はラギィが溜め息。


「大半が半島でお古になったアラサー出稼ぎ女子でしょ?」

「居酒屋なの。ラブホでお茶してたワケじゃナイわ。もっと信用できる証人が必要?いくらでも探すけど?1時間くれる?」

「お偉方にコネでもあるのか?」


すると、初めてパンダを見た幼児みたいな顔で僕を見る。


「アンタ、誰?髪型からしてデカじゃないょね?」

「僕か?僕はラギィ警部の助手だ」

「助手?お嬢ちゃん1人じゃ捜査出来ないの?」


次の瞬間、ミシルは取調机ごと壁に叩きつけられる。

ミシルの腹に机がメリ込むがラギィは力を緩めないw


「喧嘩売る気?上等ね。買うわょ。ちょうど強盗殺人を2件、解決しなくちゃなの。冤罪を負わせて欲しい?犯人になってくれると助かるわ。死刑にナルけど」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「ラギィ警部!ミシルの音波銃は、事件現場の弾道とは一致しませんでした。もう1件の殺しと繋がらない限り、コレ以上、彼女を拘束スルのは無理です!」

「何か証拠を見つけてょ!アリバイは?」

「1件目の撲殺殺人の時、彼女は裁判所に召喚されてた模様です。ソレが事実なら…釈放せざるを得ません」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)地下の音波銃の射撃訓練所。

音波銃に特有の甲高い銃声が響く。


「動かない標的じゃ物足りないだろ」

「テリィたん、話しかけないで。集中してるの」

「音波銃でストレス解消が出来てうらやましいよ。僕は腐ってる時はヒロピンAVだ」


ラギィはゴーグルをオデコに上げて睨む。


「テリィたん!」

「まぁ良いから聞けょ。何としても犯人を捉えたい気持ちはワカル。ジュアに約束したからな。だが、何ゴトにも困難はつきモノだ」

「偉そうにカウンセリング、thank you。でもほっといて…

ううん。じゃテリィたんのお手並み拝見ょ」


自分のゴーグルとヘッドセットを押し付けるw


「さぁどーぞ」


仕方ナイ。派手に片目をつぶってラッパ型の銃口を上げる。


「あのね。決闘じゃナイのょ」


僕の肩に手を置き、スタンスを取らせる。


「体は正面…ソレ、向きが逆w足は腰幅。右手を左手で包み込むように…あ、ダメ。まだ…」


銃声w


「早過ぎた」

「まぁ初めての時が早いのは若さの特権だし」←

「その笑顔、最高だ」


さらに派手に的をハズす僕←


「2発目は、もっと心を込めて」←

「ところで、ラギィ。盗品の画像、配信してくれナイか?」

「どうして?」

「ミユリさんと御屋敷(メイドバー)で見てたら何かヒラメくカモ」


またまた派手にハズす。ターゲットの股間に風穴w


「おっと痛そうだ」

「じゃあと3発で当たったら配信して、あ・げ・る!」

「マジすか?」


あっさり3発ド真ん中を射抜く。顔色を変えるラギィ。


「うーんセンセが良かったカラな」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


御屋敷(メイドバー)のバックヤードをスチームパンク風に改装したら居心地良くて常連が沈殿。回転率は急降下でメイド長(ミユリさん)はお冠だw


「テリィたん」

「お、スピア。デートはどうだった?」

「デートじゃないわ。天体観測ょ」


常連のスピアが絡んで来る。


「天体観測?メンバーは?」

「…2人。彼と私だけ」←

「なーるほど」


テレ笑いしながらスマホを覗き込んで来る。


「またラギィから証拠をくすねたの?」

「借りたんだ。そもそも画像のコピーだしな。コレは保険会社が保管してる写真だ。保険会社は、盗難に備えて必ずこーゆー写真を撮っておくんだ」

「なんてゴージャスなの」


御屋敷(メイドバー)のモニターから超天才ルイナの声w


「素敵。こんな宝石、暫くお目にかかってナイわ」

御屋敷(メイドバー)の警備システムを一新しようと思うんだ。半島からのミサイルに備えてシェルターもついでに」

「あら、テリィ様。御屋敷が襲われる予定でもアルのですか?」


メイド長のミユリさんが心配そう…な顔もせズ微笑←


「ペンは剣よりも強し。作家のテリィたんがいる限り、ウチは大丈夫ょSFだけど」

「本気だ。安全のためだ」

「秋葉原の生活に危険はつきもの。違法ドローンが突っ込み、半島からミサイルが降ってくる。結局、人生は短いの。心配するより毎日を楽しむべきだわ。人生を謳歌してれば、何ゴトも怖く無い」


やや?ラボからリモート飲み?の超天才のルイナが饒舌だ。


「ルイナ。そのカクテルは何杯目?」

「スピア、お黙り」

「しかし、美しい宝石だな。処分スルとしても普通の故買業者じゃサバけナイ。相当の目利きで優良な顧客を抱えている業者が必要だ」


カウンターの中からミユリさんがつぶやく。


「例えばパウエ・ルパウとか?テリィ様が破滅させましたが?」


ミユリさん、人聞きの悪いコトを逝うなょw


「ソレ誰?」

「スピア、古い話だ。彼女の方はもう忘れてる」

「だ・か・ら!誰なの?まさか…またシン元カノ発覚?」


クスクス笑うミユリさん。


「元カノではナイわね。確か最後はテリィ様のノドをかき切ってヤルってかなーり怒ってたし」

「ミユリ姉様。誰なの?教えて。私、テリィたんの"元カノ会"の会長ナンですけど」

「いま以上、会員を増やすのはヤメてくれ。ベント・レルバってキャラを覚えてる?」


答えは高速リターン。読者ってありがたい。


「テリィたんの新作"太陽系海軍シリーズ"に出て来る宇宙海賊ょね。宝石を専門に狙う海賊だわ」

「そのモデルさ」

「モデル…で済みますか?謝辞の中で実名を出したの。おかげで、彼女は廃業に追い込まれた」

「もう根に持ってナイさ。ちょっち会ってみるよ」

「テリィたん!」


"女の勘"でスピアは止めに入るw


「心配ナイさ。殺されるワケじゃナシ」

「彼女に会ったら伝えてください。アフタヌーンティーの約束はどうなったって」

「テリィたん…ちょっと待って!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


地下シェルターだ。


場所は逝えない雑居ビルの地階。重い鉄扉を開けて中に入ると、ちょっとした秘密基地だ。

モノホンかどうかワカラナイ宝飾品…全て盗品だ。四方の壁には古い新聞記事の切り抜き。


"慈善家殺される"の見出し…振り向きザマ殴り倒される。


「テリィたん。私、この日を待ってたわ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「私、謝らないから。何しろテリィたんには貸しがある」

「元気そうだ…確かに殺されても仕方ないカモ」

「17世紀半ばのアンティークなペルシャ絨毯ょ。テリィたんのヲタクな血で汚したら取り返しがつかないわ。ソレに引退を考えてた。宝石泥棒はアラサーには無理」


黒のジャンプスーツに黒仮面。胸のジッパーをワザとゆっくりと下ろして逝くと…次第に露わになる深い谷間。巨乳だ。


「久しぶりだねルパウ。会えてウレしいな」

「座って。ツルペタ(ミユリ)は元気?」

「2人でドラマチックに生きてるょ。アフタヌーンティーの約束がどーしたとか逝ってたな」


黒仮面の下、唇の右端数mmだけで微笑む。ゲンドウかょ。


「で、何の用?"地下鉄戦隊"の続編に出す悪の女幹部の相談?…何、コレ?」


写真入りの大きな封筒を渡す。


「ドSな強盗の被害に遭った宝石だ」

「わぁ美しい」

「地下で売りに出てないかな」


即座に首を振るルパウ。


「この手の品の話は全く耳にしてナイわ」

「ミシルって泥棒を捕まえた」

「聞いてるわ」


身を乗り出し…胸の谷間を強調←


「何か気づいた?共通する特徴とか」

「普段使いには向かない宝石ばかりだわ。特別な時だけ身に付けるモノね。つまり、犯人は被害者にとって、とっておきの宝石ばかりを狙ってる」

「犯人は、どうやって個人所有の"とっておきの宝石"の存在を知るのかな」


ますます身を乗り出し、深々と谷間強調w


「あのね。宝石も谷間も実際に目の当たりにするから欲しくなるの。恐らく犯人は被害者の身近にいる人間ね」

「他に手がかりは?気づいた事は?」

「そーね。実際に事件現場にお出かけしたら、何かひらめくカモ…テリィたんと2人で」

「無理だ。現場は万世橋(アキバポリス)が厳重に封鎖してる」


もはや谷間ごと"押し付けてる"w


「そんな封鎖、2人なら何の問題もナイわ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


実際、何の問題もナイ。スタスタ現場のドアを開けるが警報1つ鳴らない(そもそも億ションの鍵がスンナリ開いてるw)。


ハンドライトを手にルイナの後に続く。


「相変わらずの手さばきだな」

「カラダが覚えてるの。そもそも、今ドキの若い子達は芸術性に欠けるわ。ガサツでダメ…遺体は、あの金庫に入っていたの?」

「ソレが重要?」


ルイナは歌うように応える。明らかに"現場"を楽しんでる。


「モチロンょ。そもそも、死体を金庫に押し込む必要ナイでしょ?残忍な行為をしたくて殺してるの。かつて、宝石泥棒は淑女のゲームだった。まるで、幽霊のように壁を通り抜け、いつの間にか消える。でも、この犯人はまるで流血鬼ょ。血の匂いに飢えて、残忍な行為を繰り返してる。私のような同業者も、現場で絶対出くわしたくない連中ね。そういうハプニングは絶対お断り」

「そんなコトあるのか?宝石泥棒同士が現場で出くわすなんて?」

「しょっちゅうょ。業界が狭いから」←


小説のネタに使えそうw


「その場合?」

「私が現役だった頃は、仲間内の暗黙の了解があった」

「シルバーシートみたいに高齢者優先?」


その時、物音。ルパウがピクんとスル。ドアノブが回る!


「ルパウ?ルパウ、何処だ?」


既に姿は無い。ゆっくりとドアが開き僕はホールドアップ。

入って来たのは…音波銃を目線で構えた我らが"新橋鮫"w


「ラギィか?」

「テリィたん?」

「よぉ元気かい?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)の捜査本部。


「テリィたん、あのね!犯行現場に泥棒を入れちゃイケナイの?わ・か・る?」

「でも、役に立ったろ?」

「でも、不法侵入ょ」


ギャレーまでの廊下を2人で歩く。


「見方によるな」

「今度1人で現場に入ったらタダじゃ済まないわよ。テーザー銃で痛い目に合わせるから」

「そりゃ良いな!」

 

焦るラギィ←


「何で喜んでるの?ホンキょ?」

「ラギィこそ何で現場へ?」

「見落としがないかと」


ラギィはデスクに座る。


「それで?」

「何?」

「何かあったの?」


興味なさそうに聞くラギィw


「ミシルは?」

「保釈手続き中。ムカつくからまだ出してない」 

「少し話してみようかな」


がぜんPCを叩き出すラギィ。


「何で彼女にコダワルの?元カノに似てる?」

「ルパウがヒントをくれた。彼女は何か知ってる気がする」

「だとして、私達に話すと思う?」


僕は思い切りシカメ面をスル。


「うーん僕と2人きりなら」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


で、2人きりの取調室。


「アナタはプロファイラか何かなの?」

作家(ライター)だ。実は新作のためのリサーチ中」

「私のコトをルポにしたいのね?」


僕は苦笑い。


「いや。そういうんじゃないSF作家だ」

「なるほど。私でも知ってるSF小説かしら」

「有名なのは?」


コイツ、字が読めるのかw


「例えば"地下鉄戦隊"とか"太陽系海軍"シリーズ」

「悪の女幹部スパデ?!大ファンなのょ!彼女は最高だった。ねぇねぇなぜ殺したの?」

「大丈夫、死んでナイ。3クールで蘇る予定だ。セクシー系はクレームがつきやすくて…で、実は今、新作を執筆中なんだけど、コレがめっちゃ面白い。ところが、細かい描写で行き詰まってルンだ」


全部、口から出まかせだw


「確かに、誤解が多い業界なのょ。小説でも、映画でも、悪の女幹部は道化か悪党扱い。私達だって住宅ローンもあれば家族もアル。不倫もスルわ」

「ソレだ!聞きたいのはソレ。悪の女幹部の生の声さ。ところで、新作のモデルは、君のようなキャラだが、仕事中に商売敵と出くわすシーンがある」

「No No。ソレはあり得ないな。私は、個人住宅は襲わナイ。あの連中は凶悪過ぎるわ」


気がつけば既に彼女は井戸端会議モード。

あるコトないコト、話し出して止まらズw


「あの連中のキャラを深掘りしたいな」

「数ヶ月前、リーダー役が闇バイトを集いにバーにやって来た。モチロン私も勧誘されたわ。美味しい獲物の情報をくれる協力者がいルンだって。だからバンプキーだけ欲しいと頼まれた」

「で、渡したの?」


フランス人をマネて肩をスボめるミシル。


「追い払うにはソレしかなかった。仲間に加わる気は、サラサラなかったから」

「仲間になるのは嫌か?」

「危険なの!ヤバ過ぎるわ。私は2分で仕事を終えて去る。でも"連中"は違う。獲物をいたぶり、殺すのを楽しんでる」


今度は僕がフランス人のマネw


「Wow怖いね」

「でしょ?」

「しかし、魅力的なキャラだ。そのリーダーについて描いてみたい。なるべくモノホンに似せてリアリティを出したいんだ。容姿を教えてもらえるかな。詳しく教えてくれ」


メモ帳を取り出す。ミシルも身を乗り出すw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


似顔絵を被害者の娘ジュガに示すラギィ。


「コレが犯人ですか?」

「恐らく。そして、お母さんとは多分顔見知りだと思うの」

「ごく身近にいた可能性がある。例えば、馴染みのカフェのバリスタ、ジムのトレーナー、犬の世話係やドアマンとか」


そう言われて頭をもう一捻りするラギィ。


「ヤッパリわからないわ。他の人に尋ねてみたら?」

「お母さんはよく宝石を?」

「モチロン普段は身につけないわ。特別な時だけよ」


プロファイルにハマって逝くw


「例えば?」

「ショーとか画廊の開店や慈善パーティ。母はチャリティが好きで、オペラや環境保護団体の支援もしてたわ」

「セレブなんだね」


第3章 似顔絵の成果


捜査本部のホワイトボード。既に色々描き込みがアルけど、ヲタッキーズのメイド達が横1列に並んで描き込み開始だ。


「なんで今更?」

「ミシルによれば、宝石泥棒には情報を流す協力者がいるらしい。あと、ルパウの話じゃ、宝石は特別の日にしか身に付けないモノばかりだった。例えば、セレブが集まるチャリティイベントとか」

「だから、被害者同士に共通する慈善団体がアルかナイか探すワケね」


メイド達は、メイド服だけど中身はスーパーヒロインなのでパワーを全開、超速で被害者毎に団体名を描き出して逝く。


「"神田練塀町オペラソサエティ"は比較的重なってるわ」

「でも、2人だけょ」

「"エイズ山本町"なら3人関係してる」

「でも"全レズ連"は違う」

「"全レズ連"は招待客だったンじゃナイか?」

「うーん被害者同士は知人じゃなさそうね…」


メイド達(ミユリさん含むw)はキャアキャアうるさいw


「待てょ?この"MMDT"って何だ?"メイドダンスシアター"?」

「テリィたん、ソレならコッチにもアルけど」

「ココにもアルわ」


やった…かな?


「ビンゴ。その団体が犯人の隠れ蓑カモ」

「ヲタッキーズ、この団体を調べて」

ROG(了解)


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


MMDTの資金集めパーティ。ホテル"24"鳳凰の間。


「アレが責任者のヤミグ・リーンよ」


パーティは今宵で、会場は未だ準備中。ケータリングやスタッフでごった返す会場で赤と白の花束を見比べてる女子。


「彼女は、秋葉原のセレブに相当通じてる。犯人としても、是非お友達になりたいトコロだ」

「でも、本人は前歴どころか、交通違反スラしてない潔白女子だわ」

「スポンサーのテーブルには赤い花を置いてちょうだい。白い花はエンゼルテーブルよ」


テキパキ仕事中のヤミグに話しかけるラギィ。


「ヤミグさん、万世橋警察署のラギィです」


バッチを見せる。ところが…


「テリィたん?テリィたんょね!」


とりあえず、差し出された手の甲にキスする僕。モチロン、彼女が誰だか、未だ全然わかってナイ。


「貴方のコトは、友達のチェニ・イェニから聞いてたわ」

「チェニ?」

「長身。ブルネット。鼻を整形した」

「あのチェニか!元気かい?」


実は未だ誰だかわかってナイw

ラギィは呆気にとられている←


「乙女ロードでビッグロマンスが進行中よ。そちらは?」

「僕はロマンスの狭間って感じさ」

「あら。じゃ、この2人は?」


ウィンクするヤミグ。僕とラギィは異口同音w


「まさか!」

「あり得ないコトだ」

「捜査を手伝ってもらってルンです」


ヤミグは、僕を見つめる。


「スリリングね」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ガラリと表情が変わりキャリアウーマン風のヤミグ。


「弊社は身元調査を徹底してスタッフを選んでる。事件に関わるような者はいません」

「ソレを確認しますので、名簿を貸してください」

「喜んで」


僕に向かって意味深に微笑むヤミグw


「でも、きっと何かの間違いだわ」

「寄付者のリストも必要です」

「ダメ。ソレは無理。中には、匿名で寄付される方もいらっしゃるの。その方々を守らなければ。それが決まりです」


瞬時に氷の表情になるヤミグw


「待ってょ。その方々の命が危ないカモしれないの」

「コチラから皆さんにご連絡いたします」

「警察から連絡しますので」


ラギィも引かないw


「申し訳ないけれど無理ね。お渡し出来ナイ。どうしてもとおっしゃるなら、令状をお持ちください」


ラギィ、ピーンチw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


捜査本部でカタカタとPCを打つラギィ。"情報の開示を求める…"。ソコへエアリ&マリレが帰って来るw


「MMDTのスタッフとボランティアは全員シロだったわ…ラギィ?」


しーっと言われる。


「何ゴトなの?」

「姉様は、令状の申請書を描いているトコロょ」

「おいおい。ソンなの誰もサインするモンか。MMDTの理事には、判事の半分が顔を揃えてる。無駄だよ」


イライラと顔を上げるラギィ。


「じゃ他にどうしろと?これ以上、被害者は出せない」

「まぁ落ち着いて。テンパリ過ぎだ。今夜町に繰り出そう」

「寝ぼけてるの?」


パーティ券を2枚出す。


「何ソレ?」

「別世界への招待状さ」

「テリィたん、怒るわょ?」


とか逝いながら先を促す。


「あのMMDTの寄付集めパーティだ。実は、調べてみたら1件目の直前にもあったらしい。支援者は、とっておきの宝石を身につけて集まるぞ」

「パーティスタッフとボランティアがシロならあとは…」

「パーティの常連(フリーク)カモしれない。私達は似顔絵片手に会場の外でパーティ客を張るわ」


おっとドレスコードは?


「因みに、女性はイブニングドレスだ。大丈夫だよね?」

「…問題ないわ」

「よし決まりだ。では、8時に」


その場の全員が回れ右。一斉に駆け出すw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


神田同朋町にあるラギィのマンション。下着姿で次々とドレスを試着するラギィ。ベッドにヲタッキーズが腰掛けてるw


「ダメょラギィ。ソレは古着屋行き!」

「冗談でしょ?ソレ、何年前の?悪趣味」

「でも、店員が蛍光色がキテると言ってたわ」


下着姿で涙?の抗議をするラギィ。


「店員の口車に乗せられたのょ」

「はい、ソレはアウト」

「ハデ過ぎる?」


うなずくエアリ。天を仰ぐマリレ。


「テリィたんの魂胆は、私に恥をかかせるコトょ」←


チャイムが鳴る。


「悪いけど出て」

「OKだけど、その高校時代の銀ラメのドレスはヤメてね。ピンクレディみたいだから」

「ピンク…誰?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


同時刻。"潜り酒場(スピークイージー)"。


「テリィ様、ラギィとデートですか?緊張してる?」


僕は蝶ネクタイに苦戦してるw


「違うよ。潜入捜査だ…ミユリさん、頼む」

「はい」

「でも、どうして何処でやるか教えてくださらないの?」


慎重に答を選ぶ。


「逝ったら来るから」←


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


マリレは箱を持って帰って来る。


「何?」

「お届け物みたいね」

「誰から?」


マリレはカードを抜いてラギィに渡す。


「自分で見たら?」

「ビビディバビディブー?」

「シンデレラね。テリィたんだわ」


カリカリするラギィ。


「どーせドレスょ」

「新橋時代から傲慢な奴なのは知ってたけど、ここまで馬鹿にするとは…」

「開けてごらんなさい」


全員が思わズ息を呑む。


「あらw」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


潜り酒場(スピークイージー)"に現れたラギィを見て僕とミユリさんは息を呑む。


「驚いた。惚れ惚れするほど綺麗よ。どうぞ入って。そうだ。ちょっと待ってて!」


スチームパンク風カクテルドレスだ。思い切り胸を寄せて上げてる。ミユリさんは、奥へネックレスを取りに走る。


「すごく綺麗よ」

「ありがとう。でも、自信ないわ」

「"新橋鮫"が見事に化けたな」


僕は、黒のフォーマルスーツに白シャツ。蝶ネクタイ。ミユリさんがダイアを散りばめたネックレスをラギィに当てる。


「トニー賞の候補になった時のものよ」

「ダメよ。こんな高価なもの」

「いいのいいの。見せて。ほらピッタリだわ。で、会場はどこなの?」


教えちゃダメのサインを必死に出す僕w


「ウォルドルフ・アストリアよ」


第4章 パーティは始まった


ウォルドルフ・アストリアは、最高級ホテルだw


リムジンで赤い絨毯が引かれた正面ゲートへ乗り付ける。

回転するサーチライトがビルの谷間の夜空を照らし出す。


場外で似顔絵と睨めっこしつつ客に目を光らすメイド2人。


「宝石泥棒より脱税犯の方が多そうね」

「全く同感」

「見て。馬子にも衣装だわ。スゴい寄せて上げてるw」


赤絨毯の上を僕にエスコートされシャナリシャナリと歩くラギィ。パーティフリークを取材中のパパラッチ達が一斉にフラッシュを焚く。"新橋鮫"がほほ笑みの大サービスw


「ラギィ、すごく綺麗」

「露出過多!ドレスの生地が少な過ぎるんじゃないの?」

「エアリにも貸すけど、胸のあたりが伸びちゃうわ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


パーティ会場。巨大なシャンデリアの下でさんざめく人々。


「秋葉原D.A.のアカリ大統領閣下!」

「テリィたん?来るならなぜ教えてくれなかったの?車を回したのに」

「急に決めたんだ。大統領、紹介させてくれ。万世橋警察署のラギィ警部だ」


大統領は…実はミユリさんの前の"推し"ナンだw


「貴女が"新橋鮫"ね?清楚系お嬢様刑事(デカ)ラッツ(昔の僕のネーム)がハマりそう」

「はじめまして。大統領」

「アカリで良いわ…私と同じツルペタねクスクス。ちょっと失礼するわ…何ょ?」


アカリは秘書官にドレスの袖を引っ張られ人混みに消える。


「私のコトを"元推し"にどう言ったの?」

「別に。何か飲む?」

「そうね。ウォッカお願い。なみなみと…でも仕事中だから。やっぱりお水」


僕は、バーマンのトコロへ。


「ウォッカマティーニを2つ。軽く混ぜるだけでシェイクはせズに」

「かしこまりました」

「テリィたん?私、電話でお話ししたレチェです」


背中から声をかけられる。振り向くと翠髪のパーティ女子。


「チケットの手配をしてくれた人だ。どうもありがとう」

「こちらこそオークションへのご出品、ありがとうございます!」

「僕も狙ってますょ。サイン入りの初版本」


横からイケメンが現れる。


「恋人のポウルです。"地下鉄戦隊"の大ファンなの」

「第1話からリアルで見てます」

「ソレは嬉しいな」


オークション?何の話だ?


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


パーティ観察中のラギィに声をかけるパーティ美人。


「大丈夫。レチェは寄付集めの責任者だから、支援者開拓の担当ょ。彼女が興味があるのはテリィたんじゃなくて彼の資産だけ。あ、私はルシィ」

「ラギィ。よろしく。貴女はコンパニオンなの?」

「いいえ。私は、ただのパーティフリーク。乳がん撲滅に地雷。最高なのは何とかと言う唇のマークの団体で…あのプロジェクト、美容整形の医者が大勢来るのょ。たっぷり選べるわ」


マッチングアプリ全盛の世の中に稀有な人種(フリーク)w


「そうなの?」

「あら。でも、貴女はもう良いわね。あんな大物を釣りあげたんだから。でも、陸揚げには相当苦労するわょ」

「テリィたんが?」

「パーティに来たほとんどのフリークが彼を狙ってる。リッチでヲタクでベストセラー作家。仲間内では彼を"白鯨"と呼んでるわ」


ルシィはラギィにウィンクして歩き去る。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「実は、来月、高額寄付者を対象にした新しい稽古場のお披露目会がアルのです。目の前で推しのメイドが歌って踊りますょ貴方のために。もしよろしければ、ミユリさんとご一緒にいかがですか?」


僕は怪訝な顔になるw


「なぜ推しの名前を?」Castle

「ご支援いただけそうなヲタクについては、出来るだけ知った上で、ご興味に合うイベントを企画するのが私の仕事です。他の御屋敷(メイド居酒屋)と違って、ウチはいただいた投資を良い形で生かすための努力を怠りませんの。"メイ努力"ナンちゃって。うふっ」

「ソコがMMDTの素晴らしい点です」


大きくうなずくポウル。


「悪いけどちょっと失礼するよ」


僕は、バーマンから受け取ったグラスを誰かの銅像のトコロに置いて、ラギィを探して小走りになる。


「このパーティは怪しいぞ」


一方、壁の花になったラギィは手首に向かって喋ってるw


「似顔絵の男は見当たらないわ」

「ラギィ、会場の外にもいないわ…ところで、中はどんな感じ?ビュッフェ?それとも、コース?」

「両方よ。かなり豪華。それより…」


耳に手を当ててたラギィの腕をつかんでダンスフロアへ。


「テリィたん!何スルの?」

「ごめんね。でも、他に耳打ち出来る場所がナイので」

「そうでしょうとも」


ミラーボールがキラめく下、直ちに踊り出す僕達←


「今、寄付金集めの責任者と話をして来た。あの子」


僕がラギィをクルリと回すと、ラギィが外に差し出した手の先に恋人?ポウルとイチャつく寄付金集め責任者のレチェ。


再びボックスステップに戻る僕達。


「僕のコトを実に細かく調べ上げてる」

「彼女だけじゃない。みんながテリィたんを知ってるわ。テリィたんは"白鯨"と呼ばれているのよ」

「僕がクジラ?」


思わズ視線が股間に落ちるw


「アソコのコトかな?」

「違います。彼女は寄付金集めが仕事ょ。情報収集が彼女の仕事なの。とても殺し屋には見えない」

「そうかな。だが、もう一度見てくれ。ツースリー…行くぞ」


もはやウンザリ顔のラギィを後ろ向きに倒す。 重い。


「テリィたん、もう起こして。充分だわ」

「…あれ?ルパウが来てる」

「伝説の泥棒の?」


ラギィを放り出しルパウに詰め寄る。あれ?連れは…


「信じられない。2人はグルだったのか?」

「私じゃないわ。ルパウのアイディアよ」

「俺を騙したんだな!」


MMDTのルパウだw


「その上、僕を馬鹿にしにココへ来たのか?」

「ねぇねぇ少しばかりふざけただけょ」

「コレが少しばかりふざけただけ?良くもソンなコトが逝えるな」


スチームパンクドレスのラギィが追いつく。


「どういうコト?」

「どうやら2人はグルらしい。ほぼ自白した」

「ごめんなさい。そんなに嫌がるとは思ってなくて」


同伴のヤミグは明らかに当惑してるw


「おい!2人死んでるんだぞ」

「死んでる?ルパウ、何の話なの?」

「さぁ?何だか話が噛み合ってナイわ。テリィたん、何か誤解してナイ?」


突然、会場が暗転しステージにスポットライト!


「みなさん!本日はお越しいただきありがとうございます!お待ちかねのオークションを始めたいと思います。ご支援のほどよろしくどうぞ。では、ゲストプレゼンターをご紹介します、ムーンライトセレナーダー!」

「ええええええええええええええええっ!」

「ちょっとした仕返しょ」


変身したミユリさんの出現にアキバが驚愕!特に僕←

因みに、変身スルとメイド服がセパレート型になるw


「アキバのヲタクのみなさん、温かい拍手をありがとう!ムーンライトセレナーダーです。では、今宵の"MMDTチャリティオークション"。出品リスト1番は、あの伝説の"地下鉄戦隊シリーズ 第1話 風邪とニンジャ"しかも、作者のサイン入りの初版本です!モチロン、著者は…実は私のTO(トップヲタク)なの…ほら、ソコにいるでしょ。手を振って、テリィ御主人様」


突然スポットライトを浴びる僕。慌てて離れるラギィ←


「腐女子のお嬢様方にはオマケをつけましょう。落とした方には私のTO(トップヲタク)とのロマンチックなデートをプレゼントします。その先に何が起こるかは、全て貴女の腕次第ょ。では、どうですか?初版本とデート!」


一斉に僕を振り向くパーティフリーク。目が血走ってるw


「25万円!」

「はい。青いドレスの女性ね。ありがとう。でもね、ココは"薄くて高い本"の"ちんだらけ"高価買取じゃナイのょ!100万円はいらっしゃいます?」

「150万円!」


え。…男?僕に乾杯とグラスを傾ける。苦笑いを返すw


「はい。あそこの紳士から大台が出ました。でも、腐女子のみなさん、良いのかしら?男性に渡してしまうの?」

「350万円!」


肩越しに振り向きながら、唇をスボめる腐女子。キス?


「はい、350万円の声が上がりました」


煽るムーンライト…いや、アレはミユリさんソノモノだw


「ふふふ。コレでテリィたんとは even ね」

「ルパウ、そーゆーコトか…ラギィ!金なら持ってる。後で払うから君が競り落としてくれ」

「嫌ょ絶対お断り」


満面の笑顔で突き放すラギィ←


「おい、アレを見ろ!」

「鳥ょ?ドローンかしら?」

「いや、スーパーヒロイン…じゃなかった、やたらスマホで写真を撮りまくってる。怪し過ぎるw」


さらに笑顔で突き放すラギィw


「ソレはソウでしょ。私だってスマホがアレば撮りたいわ」

「でも、宝石で着飾った女ばかり撮ってルンだぜ?」

「700万円!」


とんでもない額になってるwだが、ソレを尻目に宝石過剰の金持ちセレブの撮影に勤しむのは…レチェの恋人のポウルw


「700万円が出ました。それ以上はいませんか?」

「ラギィから"万世橋警察署(パレス)"。桜田門(けいしちょう)のデータベース照会して。ネームは"ポウル・レルズ"」

ROG(了解)…パレスから警部、ビンゴ!ポウル・レルズ。またの名をチャド・レルズ。小切手詐欺、横領で服役の前科アリ。"blood type BLUE"。恐らく宝石オーナーの情報を恋人のレチェから聞き出して、実際に値踏みして次の強盗のターゲットを決める役です」


僕は、ステージ上のムーンライトセレナーダーに目配せ。


「はい、1000万円が出ました!ソチラの紳士、チャド・レルズ様。強盗、殺人謀議の容疑で逮捕です!」


突然ステージから指名され金縛りに遭うチャド。鼻先でバッジを示すラギィ。左右からエアリ&マリレに腕を掴まれる。


うなだれるポウルw


「ラギィ、どこにバッジを隠してたンだ?」

「聞かないで、テリィたん」

「…まさか?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「家宅侵入からの撲殺とは急に凶暴化してるな」

「あれ?ラギィ、あのドレスはどうした?」

「え。アレで私が尋問すると思ったの?」


その場の全員が激しくうなずく。


「せっかく期待してたのに」

「テリィたん。ソコ、私の席ょどいて」

「はーい(そもそも血液型が"BLUE"だからポウルの取調べを担当スルのは…)」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


南秋葉原条約機構(SATO)の取調室。サイキック抑制蒸気が立ちこめる中、ムーンライトセレナーダーがポウルに似顔絵を示す。


「知ってるわね?」

「YES。刑務所仲間だょ。俺みたいなのは蔵前橋の重刑務所では食い物にされる。だが、アイツが守ってくれた。みんながアイツを恐れてた。出所したら訪ねてきた」

「全て彼の作戦なの?」


蒸気の中では誰もパワーは使えない。人間同士の真剣勝負w


「俺は、その前からレチェと付き合ってた。だから、校正しようとしてたんだ。でも、お前は俺には貸しがアルと脅かされて…」

「ソレで高額寄付者の情報を流してたの?」

「奴も名前とか住所とか、最低限の情報はもう持っていた。俺は、宝石の写真を撮って、フラッシュメモリーに入れて渡すだけだ。でも、次から次にヤレと言われキリがなかった。彼が目の前で撲殺した時、俺は抜けると言ったんだ。でも、刑務所で免れたコトを今、味わわせてヤルとスゴまれた。刑務所でヤルようにレイプして、ぶちのめすと。俺だけじゃない。レチェもだ!」

「そう。彼の居所を教えて」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


首都高上野線下の昭和通りを疾駆スル覆面パトカーの群れ。急ブレーキで停車し、防弾ベストに拳銃で次々と降り立つ。


「テリィ様。お願いですから車の中に残って。無謀な行動を取られると…」

「命が危ないってか?」

「それだけではありません。他の人も危険に晒すコトになります。よろしいですか?」


諭すようなミユリさんの口調。僕は憮然として反論。


「トイレは?」


紙コップを渡されるw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「"blood type"は"RED"。私達が正面から突入スル!ヲタッキーズは裏に回って」


自動小銃と拳銃で武装した警官隊が、外付けの非常階段を上っていく。照準スコープ付きの自動小銃が先導する。

目的のドアの両側にSWATの突入班が配置されて、完全武装のラギィが小さくうなずく。突入班員がノックする。


万世橋警察署(アキバP.D.)!開けろ!」


ドアを蹴破る。突入!誰もいない。壁に女性がつけている宝石の写真。張り出された地図には細かいマーキングが色々。


「飲みかけのコーヒーだ。まだ暖かいぞ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


覆面パトカーの中で退屈そうな僕。

フト思いつき刑事ゴッコを始める。


「こちらテリィ刑事。全ユニットに告ぐ。応援は無用だ。あのクズは俺があげる」←


無線マイクをポイと捨てる。髪を分ける…虚しい←


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「アマダ・アミドなのは間違いナイわ」


ホルマリン漬けの指が発見される。振り向けば壁に"慈善家殺される"の新聞記事の切り抜き。

何とソコへ買い物袋を両手いっぱいに抱えた犯人が帰って来る。ラギィと同時に気がつく犯人。


「待て!警察よ!」


逃げる男。


「止まりなさい!」


外階段を駆け降り、鉄柵を飛び越え、鍵を施錠w


「裏に回って!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「♫バナナナナナバナナナナナ」


文字にするとバナナの歌みたいだがハードボイルド海外TVのテーマソングだ。

片手ハンドルに口笛で、気分はカリフォルニアの風の吹かれてる…ソコへ突然!


どしん!


ボンネットの上に巨女が落ちて来る!凹むボンネットw

目が合う。ダッシュボードに貼った似顔絵と見比べる←


「ソックリだ!」

「何ょ?」

「喰らえっ!」


ワイパー攻撃!ボンネットから落ちる巨女w


「出ろょ!バカ野郎」


開け放しのサイドウィンドウ越しに音波銃を向けられる。


「出たら"推し"に叱られる!」

「この際サッサと"推し変"しなょ」

「わかった。今、変える…喰らえっPART2!」


思いっ切りドアをドアミラーごと巨女にぶつける!

そのママ飛び掛りゴロゴロ側溝に落ちる…僕だけw


「死にな…ぎゃっ!」


側溝にハマった巨女が落ちた音波銃に手を伸ばす…


「私のTO(トップヲタク)に手を出さナイで!」


その巨女の手首を思い切り踏みつけて、必殺技"雷キネシス"のポーズをキメるのは…ムーンライトセレナーダー!

しかし、目の前でセパレートタイプのメイド服で仁王立ちになるスーパーヒロインを下から見上げる!コレは眼福w


「テリィ様も目を瞑って。ちょうど的が欲しかったトコロょ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


アキバの摩天楼が黄昏に染まる。


「♫バナナナナナバナナナナナ」

「テリィ様、お静かに」

「はい、メイド長」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


始まりのタワマン。鑑識が現場を撤収中。


「ジュア。ほとんどのモノは証拠として保管が必要だけど、コレだけは今、お返しスルわ」


ジュアがペンダントを開くと母と娘の写真。


「楽になるかしら」

「無理ね。でも、いつかこの不幸とも共存していこうって思える日が来る。今の私みたいに」

「ありがとう、警部さん」


微笑むジュア。


「私はラギィょ。秋葉原で何か話したくなったら連絡して」


ラギィは名刺を渡し部屋を出て逝く。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


駅を囲む摩天楼が朝焼けに染まる。朝ごはんの支度が進む。オレンジジュース。パンケーキ。ベーコン。ワッフル…


「おかえりなさいませ、お嬢様…あら?ラギィ」

「テリィたん、男の勲章ね」

「ははは…」


力なく笑う。僕は、巨女のパンチを喰って目にアザだw


「まぁ座れょ。ジュアも一緒じゃナイのか?」

「ネックレスを返しに来ただけだから、失礼スルわ」

「待って。御屋敷のモーニング、食べないの?」


ピクンと反応するラギィ笑。


「え。イングリッシュブレックファースト?」

「少し違うけど、良いから座って。昨夜のコトを聞かせて。テリィ様は直ぐ脚色スルから」

「それじゃ…レッドカーペットから始める?」


常連達がラギィを囲む。


「えぇ。お願い」



おしまい

今回は、海外ドラマによく登場する"血に飢えた殺人鬼"をテーマに、母を連続殺人で失った娘、伝説の鍵師3代目、メイド劇場の支配人、パーティフリーク、資金集めパーティの新規客担当、その恋人、泥棒界の重鎮、ドSな宝石強盗、連続殺人鬼を追う超天才や相棒のハッカー、ヲタッキーズに敏腕警部などが登場しました。


さらに、ヒロインがセレブ娘と交わす約束などもサイドストーリー的に描いてみました。


海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、処理水問題で爆買いへの影響が噂される秋葉原に当てはめて展開してみました。


秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。

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