第54話 裏ダンジョンのアイテム
ミノケンタウロスの消えた後には、宝箱が残されていた。
俺はそれを開け、中身を取り出す。
「うん? これはたしか……」
見覚えのあるボトルと中に入った灰色の液体。
エリクサーによく似ているが、微妙に色が違うそれは――
「あーそうだ。この前裏ダンジョンに潜った時に手に入れたアイテムだっ」
思い出し声を上げる俺。
あの時は結局、緊急脱出を使ったため、そのアイテムの効果はわからずじまいだったのだ。
「気になってたんだよな、このアイテム。どれ、試しに使ってみようかな」
おそらく裏ダンジョンで手に入るアイテムは、世界中どこの国でも売買はされていないと思う。
それによくよく考えてみれば、そんなレア中のレアアイテムを国に売ろうとしたら、どこで手に入れたんだと問い詰められてしまうかもしれない。
そうなれば裏ダンジョンのことを隠しておけなくなる。
ならばせっかく手に入れたアイテムだが、自分で使ってみてもいいかのもしれない。
そう思い俺はエリクサーに似たそのアイテムを自分で使ってみることにした。
「……最悪中身が毒とかだったとしても、状態異常自然回復のスキルがあるからなんとかなるだろ。うん」
自分に言い聞かせ、俺はそのアイテムを一気に飲み干した。
……。
……。
……。
「な、なんともないな……」
俺は肩透かしをくらってしまう。
どんなアイテムなのかと期待していた反面、少し不安もあったのだが、杞憂だったか。
するとその時、
「うおっ、なんだっ!?」
全身が熱くなり出した。
身体の奥底からマグマのような熱があふれ出てくる感じだった。
「な、なんだこれはっ……!?」
そしてその状態が1分ほど続いたのち、ゆっくりと熱さがひいていく。
「……ふぅ。おさまったか……」
っ!
俺は自分で自分の声を耳にしてどきりとした。
「な、なんだ……!? こ、この声っ!?」
俺の声はさっきまでの野太い男の声ではなく、凛とした透き通るような女の声に変化していた。
いや、声だけではなく、身体もどことなく重い。
目線を下にずらし、
「ま、まさかっ……!」
胸がやけに膨らんでいることに気付いた俺は、自分の全身をくまなく調べた。
その結果――
「う、嘘だろ……」
――俺は女になってしまっていた。




