第4話 スキルブック
「な、なんだ……?」
脳内に直接語りかけてくる声に驚いて周りを見ると、金色のスライムは跡形もなく消えていた。
その代わりに地面には金色の宝箱が置かれている。
「倒せた……だから、レベルが上がったのか……?」
いまだに状況が飲み込めない俺は呆然とその場に立ち尽くす。
「じゃあこれは、ドロップアイテムってやつか……」
足元の宝箱を見下ろし一人つぶやく。
それからおそるおそるその宝箱に手を伸ばして開けてみた。
すると、
「おおぉっ!」
中に入っていた物とは――
「こ、これってもしかして……スキルブックっ!?」
それは、以前ネットニュースで見たことがあるスキルブックというアイテムだった。
この世界では今現在、スキルを手に入れる方法が2種類あると言われている。
1つはダンジョン内でレベルアップをした際に手に入るもの。
そしてもう1つがこのスキルブックである。
この中には特殊な魔法が封じ込められていて、それを読み解くことで誰でも好きな時に好きな場所でスキルを習得することが出来るのだ。
ただ問題は習得できるスキルがランダムということだろう。
俺が見聞きしたことのある情報によると、レア度の高いスキルを手に入れられる確率はおよそ5%くらいだと書かれていた。
それが本当かどうかは分からないけど、少なくともこのスキルブックというアイテム、そう簡単に手に入れることが出来るものではないはずだ。
「う、嘘だろ……まさかこんなところで出会えるなんて……」
俺は震える手でスキルブックを拾い上げると、まじまじと見つめる。
「こ、これが噂の……」
思わず生唾を飲み込んだ。
「でも、なんのスキルが封じられているんだろう?」
気になってパラパラとページを開いてみるとそこにはびっしりと文字が書き込まれていた。
「へえ、色んな言語に対応しているんだな」
さすがは魔法の道具といったところだろうか。
「えーっと……どれどれ」
俺は最初の方のページに書かれている文章を読んでみる。
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【スキル名】
《幸運値上昇》
【効果・説明】
運が良くなる。
ただし、良いことが続くとは限らない。
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「……それだけ? もっとなんか凄いことが書かれているのかと思ったんだけど、拍子抜けだな」
俺は苦笑いを浮かべながらほかのページもめくってみた。
だが特にめぼしいことは書かれてなく、スキルを覚えたい場合はスキルブックの表紙に手を合わせること、とあるだけだった。
「ふーん……まあ、ないよりはマシか」
スキルブックを閉じると表紙に手をあてがう俺。
その途端にスキルブックが白い光を放ち、不思議なエネルギーが俺の体に入ってくるような感覚を覚えた。
あっという間の出来事だった。
いつのまにやらスキルブックは目の前から消失していて、俺は【スキル】《幸運値上昇》とやらを身につけたようだった。
「おっと、そうだ。ステータス確認してみるか」
思い立った俺は「ステータスオープン」と口にする。
直後、俺の正面に文字や数字が浮かび上がった。
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NAME:木崎賢吾
LV:164
HP:25/375
MP:0/158
攻撃力:253
防御力:247
素早さ:208
運:23029
スキル:幸運値上昇
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それを見ると、明らかに俺のステータスは運のパラメータだけが群を抜いて異常に高かった。