第32話 決勝戦
準決勝の第一試合は岸田さんが不戦勝でそのまま勝ち上がった。
そして準決勝の第二試合。
武藤さんと俺の勝負が始まろうとしていた。
武藤さんは20代半ばくらいの男性で、第一回戦目の戦いぶりを見る限り俺の楽勝だと思われた。
だが武藤さんもそれは感じていたようで、
試合開始直後、
「スカイハイ!」
と唱えると空高く舞い上がった。
「ふはははっ。木崎くん、きみは相当腕が立つようだからね、わたしのとっておきのスキルで空中に避難させてもらったよっ。こうすればきみの攻撃は届かないからねっ」
上空を見上げる俺に向かって声を降らせる武藤さん。
「でも、それだと武藤さんも俺を攻撃できないじゃないですかっ」
俺は声を響かせるが、
「ふはははっ。それはどうかな」
武藤さんは自信ありげに笑うと両手を胸の前で重ねてみせた。
その手を俺に向けて、
「アイスショットっ!」
と言葉を発した途端、氷の弾丸みたいなものが飛んできた。
「うおっ!」
予期していなかった攻撃だったが、それを俺は紙一重で避ける。
「ほう、さすが木崎くん。あれを避けるとはやっぱりたいしたものだよ。でも次は連続でいくからね。アイスショットっ!」
言うなり、氷の弾丸が雨のようになって降ってきた。
俺はそれをすべてかわしつつ、どうしようかと逡巡する。
跳び上がって倒すことも出来るとは思うが、空中ではさすがの俺も思うように動けない。
そこで俺は先日会得した、対象の重力を重くするという新たなスキルを使うことに決めた。
上空を見上げて、
「グラビティハント!」
と俺は口にした。
その瞬間「うがっ……!?」と小さく奇声を発した武藤さんが地面に勢いよく落ちてくる。
そして、
ドゴッ!
そのままの勢いで地面に衝突した武藤さん。
近寄っていったスーツ姿の男性がそれを確認して、
『しょ、勝負あり! 木崎さんの決勝進出決定です!』
そうアナウンスをしたのだった。
◆ ◆ ◆
あれよあれよという間に、気付けば俺と岸田さんとの決勝戦の時がやってきていた。
俺は正面に立つ岸田さんにそれとなく棄権を勧める。
「あのさ、俺結構強いんだけど、岸田さん降参する気ない?」
「わたしも結構強いので気にしないで全力でかかってきてください」
岸田さんは棄権などする気は一切ないようで、俺をじっとみつめてくる。
まいったな、岸田さん相手に全力なんて出せるはずがない。
岸田さんにはバイト時代にかなり世話になっているから、出来ることなら勝たせてやりたいと思う気持ちもあるし……さて、どうしたものか。
などと、考えていると、
『では、決勝戦初めっ!』
試合が始まってしまった。
俺は仕方なく、極力手加減して気絶させてしまおう、と前に向き直った。
とその時だった。
「ナイトドリーム」
岸田さんが俺の目を見てそうささやいた気がした。
――そこまでしか憶えていない。
なぜなら俺の記憶はそこでぷっつりと途絶えたからだ。




