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第2話 何かいる

俺の目の前にはぽっかりと大きく口を開けたダンジョンの入り口があった。


「す、すごい、ダンジョンだっ……で、でもなんでこんなところに……?」


興奮を抑えきれないが、それでもなんとか冷静になって頭を回転させる。

この公園にダンジョンなどなかったはず。

少なくとも今朝この辺りを通った時は気付かなかった。


周りを見渡すが俺のほかには誰もいない。

このダンジョンの存在に気付いているのは俺だけだ。


ダンジョンは早い者勝ちがルール。

なので俺は考えるのをやめ、誰かが来ないうちに早速ダンジョン内部へと足を踏み入れることにした。


「よ、よしっ」


自分の頬を叩いて一旦気を引き締めてから、ダンジョンの入り口をおそるおそる通過する。

やはり俺が一番最初だったようで、難なくダンジョンの中に入ることが出来た。


薄暗い中、奥へと続く階段を一歩一歩下りていく。

するとやや開けた空間に出た。


そこは坑道のような造りになっていて、壁にはいくつもの松明がかけられていた。

そのおかげで遠くの方までぼんやりとではあるが見通すことも出来る。


「は、ははっ。俺は今ダンジョンの中にいるんだっ。やったぞっ」


長年思い描いていたことが現実となり、否が応にも胸の鼓動が高鳴る。

とはいえ俺のレベルは当然のことながら1だ。

ダンジョンに入ったことがないのだから当たり前だ。


ダンジョン内にはアイテムもあるが同時にモンスターも存在しているはず。

なので俺はごくりと唾を飲み込むと、両手を胸の前に構えて、やったこともないのにボクシングのポーズをとってみせる。


「……モンスターよ、来るなら来い」


でも出来れば弱いモンスターにしてくれ。

頼むからいきなりミノタウロスとかはやめてくれよ。


ダンジョンの中にはミノタウロスというモンスターがいるらしく、そのミノタウロスの推奨討伐レベルは話に聞いた限りでは100だった。

現在レベル1の俺がそいつに出遭ってしまえば、まず勝ち目はない。

逃げることが出来なければそこで俺の人生はジ・エンドだ。


「ふぅ、緊張する……」


特段暑いわけでもないが、俺は額に汗をにじませていた。

それくらい気を張って周囲を警戒していたのだ。


とそんな時だった。


『ピューィ!』


鳥の鳴き声かそれとも口笛かというような音が前方から聞こえてきた。

一瞬ビクッとなりながらも、俺は音のした方へ顔を向け目を凝らす。


『ピューィ!』


また聞こえた。

だが音の出所がはっきりしない。


松明の明かり程度では、やはり遠くを見通すには限界があるか……。

そう思った俺は前へ前へと歩を進めていく。



『ピューィ!』


そんな矢先、視界に一瞬だけだが光る物をとらえた気がした。

それは金色の光を残しつつ、かなりのスピードで空中を移動しているようだった。


「何かいる……」


俺はその場に足を止め、周りを見回す。


『ピューィ!』


しばらくそうしていると、暗さに目が慣れてきたのか、それとも高速飛行する光る物体の速さに目が追いついてきたのか、俺はその物の輪郭をとらえ始める。


さらに次の瞬間、運のいいことにそのモンスターが高速飛行をやめて俺の正面でぴたっと止まった。

そのおかげで俺はそのモンスターをはっきりと見ることが出来た。


そのモンスターの正体とは――


「……ス、スライムっ……?」


頭の上に天使の輪を乗せた金色に光り輝くスライムだった。

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