たまに揺れる道
煉瓦造りの道に木の葉が散れて、時たまにやってくる揺れ音を感じ、落ち着いて電灯の照らす公園を散策していた。
ふと、白い空の斑点青模様を見て取って、わたしにもまだ童心あった、と思っていた。低木は活気の無さをあるがままに表現していた。
「え?」と私が動揺をしたのは、古木と思われる太柱の、フクロウ穴にろうそくがぽつり…と灯し火を連れて現れたからだ。その古木は公園の中心にあって、あんなに大きなフクロウ穴はなかったように思える。(今となればの話だが。)
すると、蔓の束の様に木の幹がヌらり、ヌらり、ろうそくの四方は儀式が始まると思わせぶりに、左に右、反対の夜を見せてくれた。それだけにとどまらず、古木の中のろうそくはキノコの様に増殖し、呼応する様に、他の木も自身の中心にろうそくを灯していった。
「これは夢?」私は狼狽えていたし、仰天して、てんてこ舞いで…、かなり難しい状態だった。そして、私の横にロウソクが一本。さらに一本。そして、もう一本、増えて、増えて、また増えて、私は導かれる様に、明るい色に染まった道を歩いていった。
最初は公園だった。丁度、暗くなる道を通ると、道は海の上に続いていた。海以外は写真の様に白黒で、青空も雲も白くて、白と青だけの世界だった。太陽はどこかに上がっており、月は多分、まだ出てきていない。
道は青い方に降りると、また暗がりな道に出たが、所々に石の様な物が散らばっており、私はそれを避けて進まなくてはならなかった。そこでは、自分が足をついているかさえ、怪しく、心細くなっていく一方だった。
機械音が聞こえた。
怪奇な音楽だ。
何かを回して、何かを掻き乱して。
温もりを感じて、前に踏んだ。
「新しいおもちゃが出来たよ。」とニコやかしいお爺ちゃんに言われた。
「誰が使う?」流石に、彼の手にある人形で遊ぶ人は現代にはいないだろうと思った。
「ワシは使わんよ。」ゼンマイを回すと、人形は重たい和服から逃れる為、必死で身体を動かしたが、転んでしまった。おやおやと、お爺ちゃんは、その人形を箱に閉まって、
「君はどんな人形が欲しい?」と言うので、要らないと首を振って答えた。
彼は悲しそうな顔をしたが、パッと表情に力み、鍋が壁に掛けられている台所だろう場所へ姿を消した。
しばらくすると、お茶と、透明な瓶のケースに飾られた人形を持って出てきた。
その人形は、似合わない洋服を着せられて、日本人ぽさのある顔が整えられて、瓶から脱出したい悲壮感の漂う一品だった。
「シビィ・黒子ちゃんだ。」彼がそう言った瞬間に、同情心が際限無く高まって、私は下さいと言ってしまった。
私は小瓶を持って、彼の家を出ていた。
今度は、道がトンネルに続いている様で、相変わらず、湿っぽい人形を大事に抱えて歩いた。
プップッー!と、反響音が近づいて来て、
「一両編成のお電車が停まります。」と、一寸先で電車が停まった。黄色い車体に、窓をたくさん取り付けた電車は、「早くお乗り下さい。」と私を急かすので、私はロウソクではなく、電灯の明かりで快適な車内でゆっくりと、電車が停まるのを待っている。