表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/7

第二話 


 あのね……ぼくらの島には、宇宙人が住んでいるんだ。


 岬の端っこに不時着している宇宙船に乗って来た、三人家族の宇宙人だ。特に秘密にはされていない。

 ある日の明け方頃に、朝焼けの空からヘロヘロと落ちて来たらしい。

 磯釣りから帰る途中だった木島の爺ちゃんが行ってみると、困った様子の宇宙人が三人、細く煙の出た宇宙船の前で途方に暮れていたんだって。

 木島の爺ちゃんは、さっそく三人を家に連れて帰った。さすが村一番の世話焼きだ。ぼくも去年の秋ごろ、爺ちゃんに叱られて家出した時、たいへんお世話になった。


 宇宙船は壊れてしまっていて、すぐに修理屋のうちの爺ちゃんが呼ばれた。


「ダメだな。動力部のかんじんな部品がイカレちまってる」


 戻って来た爺ちゃんが言った。『動力部』っていうのは、宇宙船を動かすための大切な仕組みだ。そしてそれを修理するには、地球にはない材料が必要らしい。


「材料があれば、爺ちゃん修理出来るの?」


 ぼくが聞いたら爺ちゃんは、ニヤリと笑って「まあな」と言った。ぼくの爺ちゃんはなんでも修理する、島でたった一軒の修理屋だ。


 お父さん宇宙人は壊れた部品の材料を取りに、一旦自分の星へ帰ってしまったので、しばらくのあいだ、お母さん宇宙人と子供宇宙人はうちの島の住人になった。

 お母さん宇宙人は木島の爺ちゃんの畑を手伝ったり、役場の仕事をしている。子供宇宙人は、春からぼくらの分校に通う。


 ぼくは少し心配で、少し怖かった。


 だって宇宙人だよ? なんでみんな平気で会いに行ってるんだろう。かわりばんこに、野菜や晩ごはんのおかずを持って、木島の爺ちゃんの家に行っている。

 ぼくは宇宙人が来たら、他にもっとやることがあるんじゃないかなって思う。うちの村は離島で人も少ないけれど、これが都会の街だったら、きっと今ごろ大さわぎになっている。間違っても、役場で働いたり、学校へ通ったりなんかしない。


 ぼくの持っているマンガの中には、宇宙人が地球を滅亡させてしまう怖いマンガがいくつもある。そりゃあぼくだって、悪い宇宙人ばかりじゃないとは思うけど。

 だから爺ちゃんが宇宙船を修理している時も、ぼくはついて行かなかったんだ。宇宙船……。本当はすごく見てみたい。どんな形なのか、想像するだけで背中がソワソワする。


「アメリカの宇宙局の人に来てもらったり、科学者に相談した方が良いんじゃない?」


 ぼくはちょっとモヤモヤした気分になっていた。だってまるで、ぼくだけが意気地なしみたい。


「そんな大ごとにするもんじゃねぇ。あちらさんにも事情ってもんがある」


 ぼくの爺ちゃんは、なんでも修理出来るだけじゃなく、時々カッコイイことを言う。

 あちらさんって、宇宙人家族のことかな。事情ってのは『宇宙船が壊れて、知らない星へ不時着』ってこと? うーん、それはかなり困ったことだ。島のみんなが世話を焼くのも無理はない。『ぼくだったら』って考えたら、怖くて足もとがスース―した。


 爺ちゃんはぼくのモヤモヤがわかっていたみたいで「セイ」と呼んでから、ぼくの背中をバーンと叩いた。モヤモヤは、なぜかそれで少しすっきりした。



「未知のウイルスや外来微生物については、あちらさんで対策済みだ。心配しなくていいぞ」


 地球にはない病気やなんかを持ち込んだりすると、大変なことになったりもするらしい。大人の事情は、ぼくにはちょっと難しい。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ