郷に入っては郷に従え
とりあえず、ステータスを最後まで確認する。
レベル1
力 10
防 5
速 5
魔 5
運 -20
スキル なし
称号 罰当たり(運-2)
女神のお気に入り(運×10)
そっとステータスを閉じる。こんな時は里芋に尋ねるしかあるまい。
「運は普通どの程度あるのでござろうか?」
「だいたい1か2くらいだな。10あれば楽して金持ちになれるぞ。」
成る程…であれば、苦労しても貧乏になるのではないか。絶望的でござるな。いや待てよ、楽しても結果は変わらないのでは……。ということは、仕事免除手形を手に入れたも同然ではないか。
これは、女神が楽せよと申しておるのであろう。よし、ここで仕事を斡旋してもらうのはやめたが良い。間違いあるまい。
「どうしたあんちゃん、運良かったのか?」
里芋がニヤニヤして聞いてくる。木と木に挟まれている時に出会ったのだぞ。聞かずとも分かるであろう?
「いや、絶望的でござった。が、活路は見出だされたでござる。」
「流石あんちゃんじゃねえか!で、どーすんだ?」
「一言でいえば、楽して過ごそうと考えておる。」
腕を組み、勝ち誇った顔でニヤリと笑う。フフフ、我ながら思う。決まったでござる。
「あんちゃん、ばかじゃねえのか?そんな事してたらあっという間に浮浪者になって、運が悪かったら……おっ死ぬぞ。いや、運が悪いんだから、あっという間だぞ?」
怖いことを言いおって。
「しかし、人生とはなんとかなるものよ。」
里芋よ。お主は知らぬのであろうが、拙者は今まで何とかなってきた。経験者は語るというやつだな。ま、語ったところで、うつけ者にはどうせ理解できまいて。なので、今回は黙っておこう。決して説教されるのが嫌なわけではないでござる。
「分かってないなあ。いいか、あんちゃん……。」
里芋の長い話が始まった。しかし、ここまで良くしてもらっておるのだ。耳を貸す他あるまい。
結局拙者は里芋の言うとおりにする事になったでござる。断じて説教された挙げ句に不安を煽られたからではない。そう、合理的だと判断したからでごさる。うむ。
しかも、里芋にギルドへの登録祝いとして、武器を作ってもらえることになった。武器を作ってもらったら、村の外に仕事をしに行くことになるのであろう。確実に断れまい。
ちなみに、里芋は普段から武器をつくっておるらしい。どわーふと言う種族は皆そうするのが普通なんだと。拙者が侍であるが、ほぼほぼ米作りしていたのと同じであろうか?
「あんちゃん、出来たぞ。」
1週間ほどで、拙者の注文通りの刀が出来上がった。かっこよい。ずしりと重い。1週間ほどのんぴり過ごしたので、仕事をしに行くのかと思うと、心にもずしりと重い。体と、心を比べたら1対2といったところか。いかんいかん。
真っ白な鞘に納められた刀を抜く。刀身は真っ黒であり、僅かに反っておった。吸い込まれそうな程美しいの。
「美しい。ほんとにもらって良いでござるか?」
「ああ。言ってみりゃ、武器作りは趣味だ。なによりあんちゃんは面白いから気に入っている。また笑わせてくれよ。」
「かたじけない。大事に使わせてもらうでござる。」
この村に住むもの達は、たいていが武器を作って、妖怪変化を退治する。さらにその素材で武器を作る。ということをしているらしい。命のかかった趣味でごさるな。到底真似できぬ。
しかし、折角、拙者の為に刀を打ってくれたのだ。なにか役に立たねばなるまい。武器は作れぬが、妖怪変化ならば退治できるはずだ。よし、そろそろ恩を返す時であろう。だらけるのは終いだ。
拙者は奮起し、すらいむとやらを退治するために村をでた。せめて1週間分は働かねば。
最後まで読んで頂き、ありがとうございます!
処女作になりますので、自分の頭の中では想像できているものの、実際に読まれる方からすると、この辺分かりづらい、こうした方が良いなどあれば教えていただけるとありがたいです。肯定的な感想だと、尚ありがたいです。
また、もしよろしければ評価もいただけたらなと思います。
よろしくお願いいたします。