第二王子殿下の生誕祝い
初投稿です。
拙い文章のため、温かい目で見てもらえると嬉しいです。
主にヒロイン視点で進んでいきます。
自然に囲まれた美しい国、グランディア王国
王都アクアベルクは至る所に水路があり、水の都と呼ばれている
その王都アクアベルクの北方にある領地にて、ぽかぽかと暖かい春の日差しを浴びながら、1人の少女は邸の庭で花を眺めていた
そこへ銀髪琥珀色の瞳の非常に容姿の整った男性が近づいていく
「エイミー、また此処に来ていたのか」
男性は優しげな表情で"エイミー"と呼ばれた少女へ声をかけた
「ええ、お父様。花はとても綺麗で毎日見ても飽きません」
声をかけられた少女は振り返りながら応える
「そうか。ーー今日、王城から手紙が届いた」
「王城から…?私に関する事でございましょうか」
「ああ。第二王子のアーネスト・ローザ・スフォルツァ殿下の生誕祝いの誘いだ。陛下は友人と呼べる者を殿下にと歳の近しい令息、令嬢を多く招待なされているらしい」
「殿下は、確か私と同じ年齢ですので御年10歳ですね。…わかりました。伯爵令嬢として恥じぬようお役目果たしてみせます」
父親は優しく微笑みながら娘の髪を撫でた
◇
私、トルストイ伯爵家令嬢のアミーリア・ルナ・トルストイと申します。
"エイミー"とは私の愛称です。
お父様から第二王子殿下の生誕祝いへのご招待を受けた翌日から準備を始め、王城勤めのお父様はお母様を連れて先に向かわれましたので、私は護衛数名と侍女と共に馬車で王城に向かっております。
この国のデビュタントは16歳。
デビュタントもまだ済んでいない私はお茶会等にも参加した事がないので緊張しておりますが、幼い時より伯爵令嬢としての振る舞いを身につけてきましたので自信もありますし緊張と同じくらい楽しみでもあります。
私にとってもお友達を増やす良い機会です。
第二王子のアーネスト殿下についても少し調べてきました。
容姿は王妃様に似ておられるようで少し垂れ目の優しげな顔。
色素の薄い金髪と深い碧眼。
内気で引っ込み思案な性格のようです。
やがて馬車が目的地に着いたようで外側からコンコンとノックがありました。
「お嬢様、到着致しました」
馬車から降りて久しぶりに見る王城は煌びやかで、華やかな雰囲気に包まれております。
"久しぶり"と言ったのは、実は5年前にもお父様に用事でお母様と共に来たことがあるからです。
初めて王城を見た時、「お伽話に出てくるお城みたいだ」と思ったのは記憶にあります。
その日からお母様に王子様とお姫様が出てくる絵本を強請って毎晩読んでいただいていました。
広間までは王城の使用人に案内され、先に到着している両親を探します。
さすが第二王子殿下の生誕祝いです。
たくさんの方々がお祝いを伝えに来られております。
目的の人物を賑わっている人々の間から見つけ声をかけようとした時、私の小さい体はどなたかの腰の辺りにぶつかってしまいました。
「これは失礼した、可愛らしいレディ」
ぶつかったのは私にも関わらず謝っていただいた事を申し訳なく思い、急ぎ謝ろうと顔を上げると、そこにはとても綺麗な容姿の男性がいました。
恐らくお父様と同じくらいの年齢に思われます。
艶のある黒髪と澄んだ黒い瞳。
目鼻立ちのはっきりした顔。
私は、父親譲りの光加減で虹色にも見える銀髪と、母親譲りの菫色の瞳も好きですが、男性の容姿に少しの間目を奪われてしまいました。
「ぶつかってしまい、大変申し訳ございませんでした。
お召し物が汚れはしませんでしたか」
「いや、大丈夫だよ。君はまだ小さいのにとてもしっかりしているね。私の息子にも見習ってほしいくらいだよ」
男性はそう言って優しく微笑まれました。
「あなた、こんなところにいらしたのね」
突然男性の後ろから声がかかります。
声をかけてきた女性はどうやら目の前の男性の奥様のようです。
その後ろには私と年齢が近そうな男の子が1人。
「ああ、挨拶がまだだったね。私の名前はユリウス・フォン・ラティッツェ。これは私の妻のアンリエッタと息子のフィンリーだ」
ーーラティッツェ。
名前を聞いて私は心の臓が飛び出るくらいに驚きました。
侯爵家にして、ユリウス様はこの国の宰相様です。
「初めまして、アミーリア・ルナ・トルストイと申します」
声は震えてはなかったか心配になりながら、何度も練習したカーテシーでご挨拶を返します。
「アミーリア嬢は1人でここまで来たのかな?」
ユリウス様からの問い掛けに私は目的を思い出しました。
「王城までは1人で来ましたが、父と母が先に着いて待っています」
「それは心配しているだろう。早く行ってあげなくてはね」
ユリウス様の優しいお言葉に甘え、面前を失礼させていただくことにしました。
会釈をし、立ち去ろうとした時「あ……。」と呟く声が聞こえそちらに目を向ければ、何かを伝えようとされているようなフィンリー様と目が合いました。
フィンリー様は何度か口を開閉した後俯いてしまわれたので、私は気のせいだと思い両親の元へ向かいました。
「お父様、お母様!」
「エイミー、良かった。無事に到着していたのだな」
「なかなか姿が見えず心配しましたわ」
私は辿り着くまでの経緯をお話いたしました。
「そうか。陛下への挨拶が済み次第ラティッツェ侯爵には私からもお詫びするとしよう」
お父様はそう言うとお母様と私を連れて陛下への挨拶へ向かいます。
陛下への挨拶に順番待ちをしている途中、視界の端に先程お会いしたフィンリー様が映りました。
フィンリー様はこちらの方をじっと眺めていらっしゃいましたので、どなたかお知り合いでも探しているのかと考えを巡らせていると順番がやってきました。
「トルストイ家」
名前が呼ばれ、私達家族は一歩前に出て陛下の足下に跪き頭を垂れます。
「面を上げて発言を許す」
陛下からのお声掛けがあり、ゆっくりと顔を上げました。
「陛下におかれましては、ますますご壮健にてご活躍のこととお喜び申し上げます。
アーネスト殿下の御生誕の日、心よりお祝い申し上げます。
また、このような記念すべき日にお招きあずかり大変光栄に存じます」
お父様が祝辞を述べている時、私はふと陛下の隣にいる2人の男の子を視界に捕らえます。
1人は第一王子のウィリアム殿下、そして…
ーーこの方がアーネスト殿下…。
彼の御方は直立不動の姿勢で目だけが泳いでおりました。
ぱちりと視線が合いましたので微笑みましたら、目を逸らされます。
私、殿下と仲良くなれますでしょうか…。
一抹の不安を抱え、挨拶が終わった私達はその場を去りました。
次で主要人物との絡みがあります。