令嬢の思わぬ所で、事態は進行を始める~令息の思いを他所に~
ベアトリス嬢ですが、同じクラスでは無く隣のクラスです…。修正しています(-人-;)
今回も宜しくお願いします。
―レオ!
数日振りにレオが学園に来た。
―今までどうしてたの、何があったの?
心配でたまらなかった私は、直ぐにレオの元へ駆け寄った。
「レオ!今までどうしてましたの?何かあったんですの?」
「あぁ、おはようシア。少し体調を崩してしまってね。心配かけてごめんね。と、キャロル嬢を教室まで送ってくるから」
レオにそう言われて、彼の横に人が居た事に気づく。
ストロベリーブロンドの髪に、スカイブルーの瞳。このゲームのヒロイン、キャロル・マッケンジー男爵令嬢が、レオの腕に手をかけて少しおどおどした様子で立っていた。
今まで笑っていたのだろう、突然私が話しかけた事で微妙な表情になっている。
「え?」
「じゃ、またあとでねシア」
訳が分からず呆然とした私を置いて、レオがキャロル嬢と共に教室を出ていく。
そのまま少し呆然としていたが、級友達がこちらを見ている視線に気づき自分の席に戻る。
―何故、彼女がいるの?
ようやく会えたレオは、私に説明してくれることもなく、他の令嬢と、ヒロインと居た…。
心がざわざわして落ち着かない。が、直ぐに始業の鐘がなり頭を切り替える。
―とにかくレオに会えたんですもの。あとで話を聞いてみましょう。
結局、その日学園でレオに話し掛ける事さえ出来なかった…。
レオは休み時間の度にどこかへ行き、昼休みも姿を見掛ける事さえなかった。私には用事があると言付けだけを残して…
放課後になり帰る準備をしながら、普段と全く違う彼の行動に私は戸惑っていた。
―あの日、レオと言い合いになった日から、こんなに変わってしまうなんて…。
―アリステア様の事を話したから?レオは怒っているのかしら…
今もレオは側にいない。
―けれど、今日は家で会えるかもしれないわ…。
誰もいなくなった教室を出ようとした私に、一人の令嬢が声を掛けてきた。
「突然のお声がけ失礼致します。ミーシア・スタンフィールド様。少しお時間宜しいでしょうか」
「あなたは…」
「マグワイア子爵家が長女、ベアトリスと申します。以後お見知りおきを」
優雅なカーテシーを見せ、彼女が頭を下げる。
初対面の相手には先ず名を名乗ることから。それも身分が下の者から名乗るのが正式なマナーだ。それに彼女は当たり前に則っている。
「どうぞ顔を上げてちょうだい。ここは学園よ?公式な社交の場では無いのだから。」
私がそう答えると、彼女は真剣な顔つきのまま頭をあげた。
「それで、わたくしに何のお話かしら?あなた確か、隣のクラスでは無かったかしら」
「申し訳ございません。ここでは人目もございますので…。別室を用意してございます。そちらへご足労頂けますか?」
学園には、貴族の子女同士社交の場が持てる様にと、サロンと呼ばれる部屋が用意してある。
気軽に事前の約束も無く他の貴族家を訪問するのは、子どもの立場といえ難しいからだ。
ベアトリス嬢に連れられサロンへと向かう。
そこには既に子爵家の侍女によって、お茶の準備が整えられていた。
良い香りのお茶に心が落ち着くのを感じる。
一息着いた所で、彼女へ話を向けた。
「それで、お話とは?」
「はい。実は…。アリステア・ロック・フィールド様の事で、お願いしたい事がございます。どうか、お聞き入れ頂けませんでしょうか!」
必死の顔つきで頭を下げる彼女に慌てて答える。
「どうぞ落ち着いて?先ずお話を聞かなければ何もお答え出来ませんわ。それとわたくしの事はミーシアと。ベアトリス様とお呼びして宜しいかしら」
泣きそうな顔になりながら、彼女はポツリポツリと話を始めた。
それは、アリステア様の現状を訴えるものだった。
アリステア様は苛めなど行っていない。
男爵令嬢に対して、婚約者がいる立場の男性への接し方を諌めたに過ぎない。
それは、いつも側にいる自分達が良くわかっている。
だが、どんなに否定しても噂は留まる事を知らず、更に酷い噂が出回っている。
自分たちの立場ではこれ以上どうすることも出来ない。
そこで、アリステア様と同じ公爵令嬢である私に、後ろ楯になって貰えないか―
というものだった。
「アリステア様は…この事をご存じなのかしら?わたくしに協力を仰ぐことを?」
「いいえ、いいえ!今回の事は私たちの独断です。アリステア様は…ご自分の努力が足りないのねと、そうおっしゃって…」
とうとう泣き崩れた彼女を、側に駆け寄った侍女が必死に慰めている。
アリステア様の取り巻きである令嬢達が、必死に噂を打ち消そうとするも、アリステア様は静観を貫く姿勢を崩さない。
そこで切羽詰まった彼女達は、私に助けを求めることを独断で決めたとの事だった。
レオが私の側にいない今がチャンスだと…
―そうでしょうね…。アリステア様は、誰かに頼られる方ではきっと無いわ…。
あの茶会を思い出す。
そして、先日の自分の誓いを…
「それでは、一つあなたにお願いがあるの。アリステア様とお話させて頂けないかしら?」
ベアトリス嬢はくしゃっと顔を歪めると、ありがとうごさいます!と、また何度も頭を下げてきた。
―アリステア様と話そう。先ず、そこからだわ―
恐らく私が独断で動いても、彼女はきっと良くは思わない。
ベアトリス嬢からアリステア様との面会の手筈を整える旨約束を取り付け、サロンを後にする。
そこで、私はふと顔を曇らせる。先程の話し合いの最中から思っていたこと…。
―レオは…やっぱり怒るかしら…。
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