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俺の愛する令嬢は~奮闘する侯爵令息の事情~

レオ視点のお話です。

「はぁ……」

公爵家から帰る馬車の中で、俺は盛大にため息をついた。

最悪だ、折角特大のフラグを叩き折って、

ここまで来たのに…

後は「断罪の日」を無事にやり過ごすだけだと、そう思っていたのに。

―どこで間違った?

―それともこれが、ゲームの強制力ってヤツなのか…。


なぜ今になってアリステア嬢の事なんて言い出したのか…。

「くそ、あの茶会が不味かったのか…」

悔やまれるとしたら、俺達が14歳の時のあの茶会位しか無いんだが…。



俺の実家である侯爵家で行われた、恒例のバラの茶会。

あの日も2人から目を離さないよう侍従のバートにも頼んで、万全を期していた。


バートとは、俺がお忍びで街に出た際に、ヤバそうなヤツらに追われていたのを助けたのがきっかけで出会った。

最終的に侯爵家に拾われて俺の侍従となり、今や貴族と見間違う位の見目麗しい姿を持つまでに成長している。

その時の恩を返すとか何だかで、俺の事を唯一の主人認定してるんだが…


「俺と母が救われたのは、貴方のお陰ですから。貴方に出会わなければ、母を弔う事も出来ず、俺も生きてはいなかった」


普段無愛想な癖に、この話になると饒舌になる。

―男相手に照れてどうする、俺。

まぁそんなヤツなので、俺に害がないと判断した件に関しては、忠実に動いてくれる。


「レオンハルト様、アリステア様が…。それとミーシア様も…」


バートがそっと俺に近づき、必要な情報のみ伝えてくる。

既に状況を把握していた俺は、直ぐにバートにアリステア嬢の侍女を呼びに行かせ、シアの後を追う。


結論から言うと、何とかシアとアリステア嬢の接触は最低限に防げたと思う。

今にもアリステア嬢の元に駆け寄ろうとしていたシアを引き止め、アリステア嬢にはさっさと

控え室へ移動して貰った。

だが、あの時のアリステア嬢の立ち振舞いは、俺から見ても感心せざるを得ないものだった。



「くそっ」

あの茶会を思い返しながら、改めて盛大な舌打ちを打つ。

確かにあの茶会の日をきっかけに、シアはアリステア嬢を気にする様になっていた…


そもそもシアは身分に関係なく、誰にでも手を差し伸べる。それで困った事があっても笑って済ませ、また手を差し出す。

アリステア嬢の姿をみて、助けずにはいられなかっただろう。

それに公爵家を継ぐ者として、シアも幼い頃から厳しい教育を受けてきていた。


「レオのお陰で最低限で済んでますのよ。これくらい何でもありませんわ」


―ありがとう、レオ。

そう笑顔で俺に感謝を告げるシア。

確かに俺が婚約者になってから、少しはシアの負担を減らせたと思う。

だが、今もシアの教育は続いている。

シアの元々の性格と、恐らくアリステア嬢に対する共感。似た境遇の2人は友人になっていてもおかしくなかっただろう。

―俺がいなければ。

ゲームの中のシアとアリステア嬢は、親友だったのだから。


これまで俺が立ち回って、アリステア嬢とシアを親密にさせないようしてきた。

出来る限りシアの参加する茶会等には顔を出し、俺がいない場合には、然り気無くシアから参加者を聞き出し、シアが一人にならない様手を回してきた。


ここまでやって来たのに…。

この2人を近づけない。これも俺が叩き折ったフラグの1つのはずだった。



あの日、シアは謂れの無い断罪を受けるアリステア嬢の隣に立ち、必死に彼女を守ろうとしていた。

―アリーは、そんな事をする女性ではありません!

―それは、殿下も良くご存じのはずではございませんか!


シアの必死の訴えも虚しく、アリステア嬢の断罪は続いて行く。そしてシアは―



止めた!

考えてもムダだ。

丁度良く家に着き、勢い良く馬車から降りる。

とにかく今は、シアからアリステア嬢への興味を失くすことが先決だ。

そう決めた俺は、本来の目的を強く思い起こす。シアを、ヒロインには絶対させない。

―シアを、死なせる訳にはいかない。




軽く汗を流した後自分の部屋に戻った俺は、

何度見返したか分からない、ボロボロになったノートを取り出した。

普段は鍵を掛けた引き出しにし舞い込み、誰にも見られないようにしている。

表紙に幼い字でデカデカと書かれたマル秘という文字に苦笑する。怪しいことこの上ない。

ノートを見ながら、必死だったあの頃を思い出していた。




俺は利かん気の強い子どもだった。

ここは自分がいる所じゃないという漠然とした感覚。当時はそれが何なのか分からず、些細な事で癇癪を起こすたちの悪いガキだった。


当然、父も母も俺に手を焼く。

あの日もギリギリまで出掛けるかどうか話し合っていた。

公爵家の一人娘の5歳の誕生会。当然そこには貴族の子女が集まる。

それに加え、今回は第1王子のクリストファー殿下も参加されるとの事で、基本能天気な両親も頭を抱えていた。

―そんな所に山猿を放り込んでいいのか―

悩む両親だったが、父の一言で参加が決まった。


「いや、リアムの子の誕生会なんだ。参加しないなんて無いよ」


どうやら、公爵様とうちの父は学園からの友人の様だった。

あのブリザード様と…人生どんな出会いがあるか、分からないものである。

俺の事は父が責任を持つという事で話がついたようだった。



そして迎えた当日。

俺の機嫌は最悪だった。


明日は夜の更新になります。

ごめんなさいですm(_ _)m

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