令嬢は行動するために、婚約者に相談を持ちかける~意外な言葉~
よろしくお願いいたします。
放課後、約束通りわたくしとレオは、お茶をする為一緒に学園を出た。
馬車乗り場には既に公爵家の馬車が待ち受けており、中からミラが声をかけてきた。
ミラは私の専属侍女で、男爵家の三女だ。
彼女も幼い時から側に居てくれており、私にとって姉の様な存在でもある。
ただ、ミラももう20歳…好きな人でもいないのかしら。居なくなるのは寂しいけれど。
「お嬢様、レオ様、お疲れ様でございました。
この後は如何なさいますか?」
「どうするシア?何処かにお茶に行く?
それとも、公爵家にお邪魔した方がいいかな?」
レオは分かってくれている…。
あの話は、気軽に外で出来る話ではない。
出来れば2人きりで話したかった。
「では、家まで来て貰ってもいいかしら」
ここ最近また背が伸びたのか、もう見上げなければレオの顔は見れない。
そんなレオが私の方へ少し屈みながら、モチロンといつもの笑顔で答えてくれた。
馬車に乗り込んだわたくしは、一人悶々としていた。
どうやって話せばいいのかしら。
どこから始めれば?
前世の記憶なんて、そんなの話したら流石の
レオも呆れてしまうわよね…
迷路に迷いこんだわたくしを、レオもミアもそっと静かに見守ってくれていた。
その為、予想よりも早く家に帰りついていた。
早速わたくしの部屋に向かうと、いつものソファに向い合わせで座る。
以前まで隣同士だったのに、最近になってレオがこの様に座る様になった。
なぜ?と聞くも、まぁ、色々と事情があるんだよ…と、耳を赤くして答えるのでそれ以上触れないことにしていた。
ソファに落ち着いたところで、さぁ話を。
とはとてもいかず…
ミラが入れてくれた紅茶を手に取ると、甘酸っぱいリンゴのような香りが広がった。
カモミールね…。リラックス効果が高いお茶を用意してくれた気遣いに感謝しつつ、口をつけた。
「で、早速だけどシア。
話したい事って、さっきのモブについてじゃないの?」
思わずギョッとして、レオの顔を凝視する。
なぜ分かったの?
鋭すぎるのにも程があるわ…
ミラに下がってもらい2人きりになった部屋の中で、ゆっくりと時間が流れる。
レオはわたくしを優しく見つめながら、じっと話すのを待ってくれていた。
―レオなら大丈夫。
いつも、わたくしの側で、誰よりもわたくしを
見てくれている人だもの―
「ねぇ、レオは…
アリステア様のお話を何か聞いている?」
あと一歩勇気の出ないわたくしは、当たり障りの無い所から、話を始めてみた。
「アリステア様…」
そう呟いたレオは、なぜかあからさまに肩を落とした。
―なに?アリステア様がどうかしたの?
逆にその仕草に驚いたわたくしは、じっとレオを見つめていた。
そのまま何かぶつぶつ言っていたが、諦めた様に顔を上げたレオは、驚く事を口にした。
「あぁ、聞いているよ。
聖女候補の男爵令嬢を苛めているって話だよね。
もしその件でアリステア様を助けたいって話なら、僕は賛成出来ないよ。」
余りの言葉にわたくしは言葉を返すことが出来ないでいた。
レオ…なぜそんな事を言うの…。