俺が愛する彼女をヒロインにはさせない~ある子息の奮闘記~
今回は、レオ視点のお話になります。
俺の名前は、レオンハルト・ザッカリー。
侯爵家次男で、現在エルングスト学園の最終学年である、3年生として在籍している。
勉強も、スポーツも人並み以上には出来ると自負している。
そして容姿は…毎朝鏡を見る度に、何度見かしてしまう位には整っている。と思われる。
思い上がってる?何言ってるんだ…。
彼女の隣に立つには、人並みなんてお呼びじゃ無いんだよ…。
あの白銀の、ブリザードが吹き荒れるような公爵様の眼前に立って、その目線を受け止める位出来ないと、そもそもスタートラインにも立てなかったんだからな?
幼い頃から一途に想い続ける、愛しの婚約者、
ミーシア・スタンフィールド。
俺は自分に出来る限りの、それ以上の努力を続けてきたんだ。
彼女の横に立つその為に―。
公爵家の一人娘であるミーシアは、本当に女神か?と思うほど見目麗しい…。
母上のサーシャ様から引き継いだ、太陽の様に輝く見事な金色の髪。そして明けの明星を思わせるオレンジ味を帯びた金色の瞳。肌は抜けるほどに白く、目が離せなくなるほどだ。
そんな彼女がたまに見せる、何処かを眺める憂いを帯びた表情は、思わず駆け寄ってしまいたくなるほど、彼女を儚く見せる。
―あぁ、忌々しい!
そう言っている側から、そんな彼女を見つめて不埒な事を考えているであろう男達が目に入った。
そいつらが足を踏み出すより数歩早く、俺はミーシアに声をかける。婚約者として当然の権利だ。
「シア、どうかしたの?」
彼女だけに見せる笑顔を浮かべて、こちらに気づくのを待つ。
物思いに耽っていた彼女が覚醒し、俺をその瞳に写して…更に眉間にシワを寄せた。
―え、シア?どうしたんだ…?
「あぁ、レオ…。
わたくし、どうしたらいいのか…
貴方にお話したいと思ってましたの。
けれど、モブであるわたくしに何が出来るのか…」
え、ちょっと待ってシア?
今、モブって言った?
この世界にモブなんて言葉は無いよ?
俺は珍しく動揺していた。
シアには見せない様にしていたが、僅かに出てしまっていた様で、シアが慌てた様子で謝ってきた。
「あ、ごめんなさい、レオ。
何でも無いのよ、忘れてちょうだいね?
貴方に相談しようかと思ったのだけれど、
わたくし自身がどうしたいのか分からないの。
そんな状態では相談どころでは無いわね」
どうしたらいいのかしらね?
そう言って、少し困ったような笑みを浮かべるシアを見て、放って置けないと思った。
さっきの言葉が原因の一つなら、尚更放って置けない。
「シア、今日の予定は?」
「今日は特に予定はないわ。レッスンも全て無かったはずよ」
「そう。なら良かった。
今日は僕も公爵様に呼ばれていないんだ。
学校が終わった後、お茶でもしないかい?」
そう言って微笑むと、彼女から安心した様な微笑みと、えぇ、もちろんという答えが返ってきた。
彼女の予定は出来る限り把握している。
元々レッスンが無いのは知っていたから、彼女に他の予定が無ければ、元々出掛けるつもりだった。
学校にいる間位は、彼女にも友達との時間など、過ごして貰いたいと思っている。
結婚したら、いつでも彼女と一緒だからな。
そうして、放課後の約束をした俺は自分の席に戻った。
授業は真面目に受けていたが、ふと気づくと先程のシアの言葉を考えている。
―そう、シアも俺も、モブのはずなのだ。
この、夢恋に酷似したこの世界の中では―
シアにも告げていない、たった一つの秘密。
―俺は転生者だ。
第1話はプロローグも兼ねていたため、長くなっています。これからは、これくらいの字数でいこうと思いますが、いかがでしょうか。