令嬢の想いと令息の想い~お茶会の行方~
更新かなり遅くなりました。
ごめんなさいm(__)m
よろしくお願いします。
「アリステア様、貴女の命に関わることです―」
未だ驚愕が尾を引く中で、レオは至って冷静に見えた。彼が冷静だったからこそ、皆も落ち着きを取り戻せたのかも知れない。
ポツリポツリと、部屋に声が戻る。
「それは…本当ですの…?」
「ご婚約ばかりか、アリステア様の身にそんな事が…?」
彼女達の体がぶるぶると震えている。
「そんな…そんな馬鹿なお話、聞いたこともございませんわ!」
ベアトリス様の声が部屋に響く。
うつむき、床を睨み付ける様に立つ彼女の肩はわなわなと震え、その両手はきつく握りしめられている。
その言葉は、彼女達全員の想いを代弁するものだった。「納得できない」という想いがひしひしと伝わってくる。
そんな中、アリステア様は驚くほどしっかりと、前を見据えていた。
その姿はレオに負けず、冷静に見える。
が、ふと手元を見ると、折れてしまいそうな程ぎゅっと、扇子が握りしめられていた…
「急にこんな話をして信じて頂くのは難しいかもしれません。ですが、事態は一刻を争う状態の可能性が高いのです。今でしたら、まだ―」
冷静に、しかし、真剣な顔つきで話すレオの様子から、彼が本気だと伝わったのだろう。
それまで口を閉ざしていたアリステア様が、すっと背を伸ばし、私達へ目を向けた。
「なぜ…お二人は、わたくしを助けようとしてくださるの?」
純粋な疑問を瞳に浮かべ、微かに首を傾げる。
なぜ、無関係のお二人が…?
―そうですわよね…
もっともな疑問だと、私でさえそう思う。
これまでほぼ関わり無く過ごしてきた私達が、俄に信じられない話を始め、あまつさえ命を助けるとまで言っているのだ。
「それは…」
口を開こうとしたレオの手にそっと自分の手を重ね、大丈夫だと頷く。
「それは…何の罪も無い貴女を、このまま見過ごすなんて出来ないからですわ」
何の罪も謂われも無い彼女が、断罪されると知ってしまったから。
それが、私の答えだ。
知らない振りなんて、絶対に出来なかった。
もしそうしていたら…
私はきっと後悔せずにはいられなかっただろう。
「知っていながら何もしなかった自分を、わたくしはきっと許せませんもの。」
ですから、自分の為でもありますの。と付け加える。
「僕は…自分の大切な人を守るためです」
私の手を握り返し、レオが真っ直ぐに前を見て言葉を続ける。
「申し訳ありませんが、純粋にアリステア様を助けたいだけが理由ではありません。僕には僕の理由があって、その結果、最善の方法が今回のお話だったということです」
止めても言う事を聞いてくれませんからね…ため息をつきそうな顔でそう言うレオに、少しだけ憮然とした気持ちになる。
「そんな理由で…?ご自分の為だとそうおっしゃるの?放って置けば良かったと、後悔される時が来るかも知れませんのに…」
揃って首を振る私達を見て、アリステア様は驚きで更に目を見開く。
そんなの今さらだ。
そんな覚悟はもうとっくに出来ている。
「なんて方達なの…可笑しくて涙が出てきましたわ」
令嬢らしからぬ笑い声を上げたその瞳から、はらはらと涙が溢れた。
慌てて令嬢の一人が、ハンカチを手渡す。
「アリステア様、どうか、どうかご自分の事をお考え下さいませ…!」
泣きすがる彼女達とアリステア様と、どちらがより泣いているのか最早分からない状態だった。
―けれど、貴女の事をこんなにも想っている人達がいるのよ…私達を信じて欲しい。ねぇ、アリステア様。
漸く泣き止んだアリステア様は、恥ずかしそうな様子で顔を上げた。
泣きはらした目元のせいか、その顔はいつもより少し幼げで、年相応の女の子のものだった。
「お見苦しい所をお見せしましたわね。ですが…わたくしも心が決まりましたわ」
その声にベアトリス様達から安堵の声が上がる。
「わたくしは…ある意味、自分の為に生きる事など考えておりませんでしたの。クリス様の為、ひいては王妃としてこの国の為に生きると、そう思って参りましたわ。けれど…」
わたくしも…わたくし自身の事を、考えても良いのかしら…
そう呟く彼女から、悲しみとも寂しさとも取れる様な雰囲気が伝わってくる。
本当の気持ちは私達には分からないけれど…
「ミーシア様、ザッカリー様。お二人の事、信じますわ。それから…貴女達も。今までわたくしの知らない所で苦労をかけていたのね…ごめんなさいね」
「そんな、頭をお上げ下さい!」
慌てるベアトリス様達の言葉に関わらず、アリステア様はごめんなさい、ありがとうと暫くの間、頭を上げることは無かった。
後日、改めて詳しい話をする約束をし、部屋を後にした。
ベアトリス様達には、くれぐれも今回の話は内密にする様にと念を押しておいた。
彼女達の身に何かあっては本末転倒だ。
アリステア様の元を離れる様にと言われていた令嬢もいた。
今の所は、アリステア様の側にいてくれるだけで充分だ。
―一先ず、話すべき事は話せたのかしら…
ここでアリステア様に断られていたら、先に進むことは出来なかった。
当事者の了承を得ず、周りが騒いだ所でより良い結果は望めない。
当初の予定とは違うが、結果は良い方向に向かっていると思われた。
だが、レオがあそこまで話すのは、全くの想定外だった…
「シア、これから公爵家へ行ってもいいかい?」
私の気持ちを見抜いたかの様なタイミングだった。
レオが何を知っていて、どうしようとしているのか、話を聞こう。そして、私の事も…
「えぇ、もちろん」
―話をしましょう、レオ。
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今週はも少し更新出来たらと思っています。
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