第四話~招かれざる客~
出勤中の俺は店の近所に来ると少々奇妙な気分になった。店の周りにあった他の店が無くなっている。いや、閉店している。どういう事だ?今までは少しづつだったからそこまで気にしてなかったがいくらなんでもここまでくると流石に気にしてしまう。変な気分のまま、店に入った。(カランカラン)「おはようございますー」「おはよう。」「おっはよう!」「今日もよろしくお願いします。ところでマスター。今気になったんですけど、なんかこの店の周りのお店がほとんど閉店してしまって
いるんですよ。何か知ってますか?」「うーん。確かに私も気になってはいたが知らないなぁ...」「私も知らないわよ。」「そうですか...まあそんな事気にしていないで準備しますね!」と言ったが俺はその事が何故か頭から離れなくなっていた。
そして昼時、店にある人が来た。(カランカラン)「こんにちは〜。失礼しますよぉ。」「いらっしゃいませー!」「あー、いやいや私お客ではないんですよ。この店のオーナーはどちらに?」「マスターならカウンターの所にいますよ。」「おお、ありがとう青年。」「はい!」今来た人は誰だろう。少しボサついた髪、眼鏡をかけていて高身長。するとその人のあとに続くようにもう一人来た。その人は髪をピシッとまとめていて、背筋もピンとしている。そしてこの人も眼鏡をかけている。「私になにかご用ですかな?」「ええ。おっと自己紹介がまだでしたな。私、古川建設社長。古川市也と申します。そしてこちらは...」「私は古川社長の秘書の一ノ瀬優太郎です。以後お見知りおきを。」そう言って二人はマスターに名刺を渡していた。しかし建設会社の人達が何故?「実はですね。近々駅前に大きなショッピングモールを建設する計画があるのですが、予定より大きくなってしまったために駐車場が狭くなってしまったんですよ。それでですね、駅から近いこの付近に第二駐車場を作ろうと考えてまして...」「なるほど。つまりこの場所に駐車場を作るから店を渡してくれと、」なっ...なんだって...「おおっ。お分かりいただけたのなら話が早い。その通りなんですよ。という訳で譲って頂けませんかね?もちろん、ただでとはいいませんよ!」「そういう話しならお帰り願います。私はこの店を譲るつもりはございません。なのでどうぞお引き取りを。」「まあまあ、そんな頑なに否定しないでくださいよ。金額は三千万でどうでしょうか?」「金額の問題ではございません。とにかくお引き取りください。」「あのですね!社長も忙しい中、わざわざ来たのですよ!そのような態度は...」「落ち着きなさい一ノ瀬君。私は大丈夫だ。今日のところは一旦引こう。また後日出直すとしようじゃないか。」「はっ!了解しました!」「というわけですので、ご検討お願い致しますよ。それでは...」そう言って二人は帰って行った。「マスター、大丈夫ですか?」「そうですよ。この店どうなるんですか?」「ははっ。大丈夫だよ。心配いらない。私は頑として譲る気はないからね。」ほっとしたが、少し不安だった。
その夜。「よっ!悠斗〜。マスター、今日はナポリタンで。」「はいよ。ゆっくりね。悠斗君も。」「ありがとうございます。」「なんか暗い顔してんな。なんかあったか?」「ん?いや別に。」「そうか。まあ、いいやそれよりさ...」そう言って聡の長話が始まった。時は経ち、一時間後。「おっとそろそろ帰らなきゃな。んじゃあな、お邪魔しましたー!」「またなー。」さて、後片付けするか。そう思った瞬間だった。外から声がした。「うおっ!びっくりしたー。すんません。」聡だ。誰かとぶつかりそうになったのかな。まあ、おっちょこちょいのあいつなら有り得るな。(カランカラン)「失礼します。」驚いた。朝に来た秘書の一ノ瀬ってやつだ。何しに来たんだ...?「なにかご用ですか?」「交渉に参りました。社長が金額を五千万でどうかとおっしゃっております。」「だから。何度もお断りしたはずですが?」「ええ。それは承知のうえです。」「断ります。あまりしつこいと追い出しますよ。」「はあ...困るんですよねえ...この交渉をのんで頂かないと。」社長だ。いたのか。「大体、こんな古臭いチンケな店になんの思い入れがあるって言うんですか...」「なんだと?」「やめたまえ。悠斗君。」「けっ。とにかくこの店はなんとしてでも頂きますので...そのおつもりで...」「では失礼!」その時、(カランカラン)「彩花はいるか!?」まためんどくさいのが...「彩花さんはいませんよ。いるわけないじゃないですか、今は夜ですよ。」「なんだ、夜はいないのか良かったぜ。ふと心配になってな。」ったく。それどころじゃないってのに。「そこをどいて頂けませんかね?」「ああ、こりゃ失敬。どうぞ。」「それでは...」そう言って二人は帰った。「で、あんたは帰らねえのかよ。」「あ、そうだな。帰るわ。じゃな!」なんなんだ。あいつは...
その日は色々ありすぎた。しかし大変なのはこれからだった...




