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あれ?本題に全然入ってないね?

 あれからまた数日、今日はカイドさんに呼ばれ、ギルドに行くことになった。

 まあ、十中八九、邪教についての話だろう。また報酬の話をすると言っていたからな。


「カイド?誰だそいつ?」

「あ、レティアは知らなかったっけ?ギルドの従業員らしいよ。レティアを召喚する前に邪教を解体したんだ。これからその時の報酬の話をしに行く」

「へぇ、ユウタってそんな慈善事業をするんだな」

「頼まれたら断れない性格でね…」


 カイドさんとトーナの二人に頭を下げられたからな。カイドさんに至っては大人だ。大人に頭を下げられて意味もなく断るようなことはできない。


「マスターは優しいですから」

「それはわかる、けどあまり危険過ぎることはするなよ?」

「あ、もしかしてレティア、心配してくれてる?」

「当たり前だろう。ユウタに何かあってからじゃ遅い」

「あっ…………そ、そうか。悪い」


 ぐぬぬ……くそう、真顔で言うなよレティア……恥ずかしいだろ。しかも俺がおちょくろうとしたの気付いてないし…やっぱり天然か?いや素直なだけか。


「まあもし危ないときは、レティア。それにジャンヌも、助けてくれ。一人じゃ俺は出来ることが限られてる」

「ふん、仕方ないな」

「はい、マスター」


 レティアはさっきので少し恥ずかしくなったのか、顔を()らして、ジャンヌは真っ直ぐこちらを見つめて頷く。

 ふふ、なんだかんだレティアが仲間意識を持ってくれてるようだな。これからも仲良くしていきたいものだ。そして…いつかはその体を……


 はい、嘘です。そんな勇気ないです。


「レティア、俺を誘惑しないでくれ!」

「んぬっ!?してないぞ!何を言うんだ!」

「マスター」

「ん?」


 声が掛けられてジャンヌの方へ振り替えると、ジャンヌが体を屈ませて手を膝につき、二の腕の辺りで胸を絞める。そして一言。


「だっちゅーの」




「「えっ……?」」


 ジャンヌ…それは……なんというか…色々言いたいことはあるんだけど……




「古いわっ!!」


 パイレーツとか今頃の子は知らないだろ!!誘惑のつもりだったの!?て言うかなんで知ってんのっ!?





 ギルドの扉に手を掛けて、中へと入っていく。すると目の前を目付きが悪く、大柄な男が俺を押し退けて出ていく。


「おっと…」


 急に押されて倒れそうになるが、うまくバランスを取ってなんとか立つ。

 うーん、機嫌でも悪かったのかな?何も言わずそのまま言っちゃった。


「マスター、処理しますか?」

「やめなさい」


 俺のことを思ってくれるのはありがたいけど、殺すのはやめような?


「ユウタ、貫くか?」

「お前もか!?てか怖いよ!」


 貫くってなに!?槍で!?どこを!?


「おうおう、うるさいと思ったらユウタ、来てたのか」

「えっと…すいませんカイドさんっていますか?」

「いや俺だろう!?目の前にいるだろ!?何いってんだ!?」

「マスター、奥の方にいるのかもしれません」

「ジャンヌちゃんっ!?お、おい頼むから無視しないでくれよ!かなしいだろぉ!?」

「あ、カイドさん。いたんですね、気付きませんでした。髪型変えました?」

「変わってるように見えるか!?なぁ!?」


 その場で崩れるカイドさん。まぁ、冗談だからさ、気にしないでください。

 あとカイドさん、ツッコミが鋭いですね。もしかして慣れてます?


「はぁ…はぁ……とりあえず中へ入ってくれ。事務所へ通すから……」

「分かりました。大丈夫ですか?カイドさん」

「お前のせいだよ!」


 はて?なんのことですかね?




 カイドさんに着いていき、少し大きめの部屋へ通される。中には長机と、その左右に相対するようにソファーのようなものが置かれている。人が5人は並べそうだ。


「座ってくれ」

「分かりました。ジャンヌとレティアがいても?」

「構わない。というかレティア?こっちの見たことないお嬢ちゃんか?」

「あぁ、そう──」

「私はお嬢ちゃんじゃない!もう立派なレディーだ!あとお前ちょっと臭いぞ!ここまで臭ってる!」

「oh…」


 言葉を妨げられ、挙げ句に、何の罪もないカイドさんを射殺さんとばかりの突然の暴言。

 流石の俺もびっくりし過ぎて、洋風に声を出してしまった。ていうか臭いってかなり心を抉るぞ?


「ゆ、ユウタ……」

「すいません。これ、本音なんです」

「そんなに臭いかっ!?」


 はっ!?間違えた!これはフォローにはならない!?


「ま、間違えました。レティアは素直なんです」

「私は思ったことしか言わないぞ」

「だから俺は臭いんだろう!?くそう!水浴びしてくる!!」


 ドタバタと音をあげて出ていくカイドさん。

あれ?俺、選択間違えた?……えへへ。


「あ、あの、ユウタさん?いま、カイドさんが泣きながら走っていきましたけど……」

「あ、トーナ」


 開け放たれたドアから恐る恐るといった感じにトーナが茶菓子と紅茶を持って入ってきた。

 変なところを見られてしまったようだ。


「なんでもないんだ、気にしないでくれ」

「はい……て、あっ」

「どうした?」

「いえ、あの、ジャンヌさんとユウタさんだけかと思って、二人分、しか紅茶を持って来ず…」

「あぁ、レティアを知らないもんな」


 トーナが持っているトレイには俺とジャンヌ、そしてカイドさんの分と思われる紅茶がおかれている。

 まあ、それは仕方ないだろ?知らなかったんだし。


「レティアさん、ですね。よろしくお願いします」

「ん?あぁ、レティアだ。お前の名前は?」

「トーナです。ここの受付とカイドさんの臨時秘書をやってます」

「秘書?なぁトーナ、もしかしてカイドさんって何かの重役なのか?」

「え?はい。カイドさんはここのギルドマスターですよ?」

「えええぇぇぇぇえっっ!?」


 知らなかったんですかといった表情をするトーナ。

え?マジで?あんな馬鹿そうなのに?あ、いけないいけない。つい本音が。


「でも邪教を解体するときに、戦闘をこなしてたぞ?普通に冒険者か、受付かと思っていたよ」

「まあ、あんまり壁を感じさせるような性格じゃないですからね、カイドさん」


 苦笑いを浮かべて紅茶に口をつけるトーナ。

ん?それカイドさん用じゃなくて自分用だったの?あ、そう……


 もうすこしカイドさんに優しくしない?俺も意識するからさ。



 数十分後、またドタバタという音と共にドアがうるさく開けられる。


「ただいま!!」

「おかえり、カイドさん」

「カイドさん、本当に水浴びしてきたんですね」

「む、帰ってきたのか、重役」


 レティア?その呼び方はやめよ?確かにさっきそんな下りあったけどね?名前、カイドさんね、覚えてあげて?


「ふ、ふふ、ふふふ!これで俺はもう臭くないだろ!?」

「お、おぉ……なんか石鹸の匂い……」


 カイドさんから柑橘系の爽やかな匂いがする。本当に良い匂いだ。これなら流石のレティアも文句はないだろう……


「んー、なんかもう生理的に嫌だ」

「理不尽っ!?」

「あ、おいレティア!カイドさん泣いちまっただろ!?みんな思ってるのに言わなかったことだぞ!」

「おい!?みんな思ってたのか!?あ!ジャンヌちゃん、そんなことないよな!?」

「すいません、少し離れてもらってもいいですか?」

「そんなに嫌か!?」

「ま、まあまあ皆さん、落ち着いてください。カイドさんを虐めるのは後にしましょう」


 俺たちから散々言われて涙目になっているカイドさんを宥めて、トーナがまとめる。


「結局後で虐められるのか!?」

「それで、俺はなんで呼ばれたんです?報酬ですか?」

「無視かよっ!?……はぁ、ああそうだよ。これから報酬を渡す。トーナ。」

「はい」


 まだ若干涙目なカイドさんがトーナに合図をすると、トーナがどこからかケースのようなものを出す。


「これが今回の報酬です、確認してください」


 慣れた手つきでケースを開け、中身が見せる。

 中には虹色のコインが数枚、濃い赤と薄い赤のコインがかなりの数入っている。


「全部で365万だ。かなりの報酬だぞ?」

「凄いな…これだけもらっていいですか?」

「当たり前だ、あの邪教はかなり成長していたしな、緊急度は高かった」

「そうですか、じゃあ遠慮なく貰いますね」


 ケースを受け取り、重みを確かめる。コインだが、特殊な材質なのかこれだけ枚数があってもあまり重くは感じない。

 もともとあったのが約800万ぐらいだから、これで1100万以上は確実にあるわけだ。


「これだけありゃあ、ユウタも奴隷が買えるな?」

「奴隷?そんなのがあるんですか?」


 すこしニヤニヤしたカイドさんの発言に首をかしげる。

 あれ?G2Wにそんな要素あったか?いや、ない。スマホなんていう、子どもが使うような機械のアプリで『奴隷』なんて単語、苦情が来るレベルだ。全く知らないぞ?


「お?知らなかったのか?まあ、もし村の出身とかなら知らないかもな。奴隷ってのは要はあれだ。なんでも言うことが聞かせられるって言う……な?」

「マスター、これ以上の話は必要ありません」

「悪いジャンヌ、これは大切なことだ。俺たちの将来に関わる」

「ユウタ!?これそんな大事じゃないよな!?」


 何を言う。別に、G2Wにあるとかないとか、そんなことは関係ないんだよ、微塵もね。

 それよりも…奴隷だと?奴隷とはつまり……奴隷と言うことかっ!!(謎)


「どこにいけば良いんです?」

「へっへっへ……ユウタ、話が分かるじゃねえか。まずはここをこう行ってだな」


 カイドさんがノリノリに町の地図を出して説明を始める。ふへ、俺も変な笑いが出そうだ。まるで初めてエロ本を買ったときと同じ感覚だぜ。


「おいジャンヌ!ユウタの顔!なんだか危なくないか!?」

「これは……レティアさん、諦めましょう。今のマスターは私たちには止められません」

「なんかうへへとか言ってるぞ!」

「マスター……」


 ごめん!けどこれは男のさがなんだよ!夢なの!男が思春期には必ず想像してしまうことなの!だから今だけは俺は……修羅になるっ!!





「私はどうすればいいんですか……?」


 一人、トーナが呟くのだった。








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